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・腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する
51)皇子の異変 sideセイヤ
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浄化のたびに意識を失っていく。身体中からチカラが抜けていく感じだ。初回の討伐時のような爽快感はなく、ただただ、重苦しい気分だけが残る。それは手足の末端に溜まってい行く感じがする。
「セイヤ!大丈夫ですか?」
今日もハロルドが俺を支えてくれる。俺の名前を呼んでくれるのはハロルドだけだ。
「……ハロルド。また治癒をかけてくれる?」
「もちろんです。どこかいたいところはありませんか?」
「うん。体中全部。怠いんだ。とても……」
「目をつぶってください。息を吸って吐いて。さあゆっくりと横になって」
「うん。ありがとう」
何度か神官長に訴えて側近をハロルドに変えてもらった。だって他の奴らからは嫌な匂いがするんだ。なんていったらいいのかよくわからないけれど。見た目は普通の神官だけど何かに侵されているような気味悪さが漂う。たぶん本人達も気づいてないのだと思う。
「セイヤ。もう一度浄化の仕方を聞いても良いでしょうか?」
「うん。いいよ」
討伐には騎士団長が同行してくれるがハロルドの同行は許してもらえなかった。なんでもハロルドがいなくなると神殿の業務が出来なくなるらしい。こんなにも神官はたくさんいるのに聖魔法が使える者が少なすぎる。それに俺と同じ歳くらいの子が多いのも不思議だ。
「今日行ったことろは洞窟の中だったんだ。黒い靄みたいなのが渦を巻いていたんだ。それに向かって魔道具を向けると瘴気が吸い込まれていくみたいに消えるんだ」
「吸い込まれるのですか?浄化されるのではなくて」
「うん。違う。俺は一番最初にアイツと一緒に浄化をしたからな。そのときは嫌なものが綺麗になっていくような感覚だったんだ。浄化した後も気持ちがすっきりするというか。チカラを使いすぎて気を失っちゃったけどね」
「すっきりするのですか。興味深いですね。悪いものが洗い流されるような感じなのでしょうか?」
「そうそうそんな感じ。綺麗になって体が軽くなるみたいな感じだよ」
「では魔道具を使うとどのような感じになるのでしょうか?」
「ん~。あのね、掃除機で吸い取っちゃう感じなんだ!」
「ソウジキですか?それは……悪いものを吸い取ると言った魔道具?のようなものですか?」
「うん。なんか悪いものが溜まっていくような?なんていうのかな?あっちの瘴気をこっちに移動させるみたいな感じ?」
「その魔道具は今はどこにあるのですか?」
「わかんない。いつも浄化をする直前にわたされるんだ。浄化後はもう記憶がないから回収されているんだと思う」
「私はセイヤが毎回倒れるのが心配です。きっとセイヤの身体に負担が大きくのしかかってるんではないかと」
「うん。最近は身体が重いんだ。やけに眠たくなるし。ハロルドの治癒がないと起きれなくなりそうなんだ」
「セイヤ。申し訳ありませんが一度、服を全部脱いでもらえませんか?」
「え?真っ裸になるの?」
「瘴気に侵されてないか確認したいのです」
「俺が……?わ、わかった」
裸になるのは恥ずかしいけど魔物や魔獣みたいになっちゃうのはいやだ。
服を脱いでいる途中にハロルドに止められた。
「セイヤ。足をどうしたのです?」
「え?足?どこもケガしてないけど?」
「爪が真っ黒に染まっています」
瘴気に侵されたみたいな色だ。怖い。このまま魔獣になったらどうしよう。
「ええ!……ほんとだ……ど、どうしよう。俺、化け物になっちゃうの?」
「大丈夫です。この程度ならまだ」
ハロルドが俺の足先を両手で包みながら呪文を唱えてくれる。ほわっと光ると爪の色が元に戻る。
「よ、よかったぁ」
ほっとすると涙がでてくる。これは自然現象だ。決して怖かったからじゃない。
「手のひらも少し黒ずんでいますね。こちらも治癒しておきましょう」
ハロルドに触れられると心が落ち着く。
「セイヤの使っている魔道具はもう一杯になってしまっているのかもしれませんね。吸いきれなかった瘴気がセイヤの身体に悪影響を起こしたのかもしれません」
「うそ!俺もう浄化に行くの嫌だよ。どうしよう」
「そうですね。もうほとんどの場所の浄化は済んでいると思います」
「ほんとう?」
「ええ。セイヤが頑張ったおかげですよ。ありがとうございます」
「あ、でもまたあさって、浄化に行けって神官長が言っていたよ」
「あさってですか?残っている大きな場所はないかと思いますが。騎士団長はなにか言ってましたか?」
「ううん。団長さんは魔獣と戦うのが忙しくてあんまり話せないんだ」
「そうですか。今日同行した神官たちに聞いてみましょうか」
「いや、やめた方がいい。神官長につつ向けになると思うよ」
「ふふ。筒抜けになってはいけないですか?」
「うん。神官たちは神官長の人形みたいだもの。なんだか変なんだ」
「おや?私も神官のひとりですが?」
「ハロルドは違うよ。俺の側近なんでしょ?」
「ええ。側近という立場におりますが、神官であることもかわりありません」
「ん~。そういうんじゃなくて。ハロルドには強いオーラがあるから跳ね返しているようなイメージなんだ」
「跳ね返している?何をですか?」
「瘴気をだよ」
「それはどういう意味ですか?」
「だって他の神官たちは瘴気に侵されているから」
「セイヤ!大丈夫ですか?」
今日もハロルドが俺を支えてくれる。俺の名前を呼んでくれるのはハロルドだけだ。
「……ハロルド。また治癒をかけてくれる?」
「もちろんです。どこかいたいところはありませんか?」
「うん。体中全部。怠いんだ。とても……」
「目をつぶってください。息を吸って吐いて。さあゆっくりと横になって」
「うん。ありがとう」
何度か神官長に訴えて側近をハロルドに変えてもらった。だって他の奴らからは嫌な匂いがするんだ。なんていったらいいのかよくわからないけれど。見た目は普通の神官だけど何かに侵されているような気味悪さが漂う。たぶん本人達も気づいてないのだと思う。
「セイヤ。もう一度浄化の仕方を聞いても良いでしょうか?」
「うん。いいよ」
討伐には騎士団長が同行してくれるがハロルドの同行は許してもらえなかった。なんでもハロルドがいなくなると神殿の業務が出来なくなるらしい。こんなにも神官はたくさんいるのに聖魔法が使える者が少なすぎる。それに俺と同じ歳くらいの子が多いのも不思議だ。
「今日行ったことろは洞窟の中だったんだ。黒い靄みたいなのが渦を巻いていたんだ。それに向かって魔道具を向けると瘴気が吸い込まれていくみたいに消えるんだ」
「吸い込まれるのですか?浄化されるのではなくて」
「うん。違う。俺は一番最初にアイツと一緒に浄化をしたからな。そのときは嫌なものが綺麗になっていくような感覚だったんだ。浄化した後も気持ちがすっきりするというか。チカラを使いすぎて気を失っちゃったけどね」
「すっきりするのですか。興味深いですね。悪いものが洗い流されるような感じなのでしょうか?」
「そうそうそんな感じ。綺麗になって体が軽くなるみたいな感じだよ」
「では魔道具を使うとどのような感じになるのでしょうか?」
「ん~。あのね、掃除機で吸い取っちゃう感じなんだ!」
「ソウジキですか?それは……悪いものを吸い取ると言った魔道具?のようなものですか?」
「うん。なんか悪いものが溜まっていくような?なんていうのかな?あっちの瘴気をこっちに移動させるみたいな感じ?」
「その魔道具は今はどこにあるのですか?」
「わかんない。いつも浄化をする直前にわたされるんだ。浄化後はもう記憶がないから回収されているんだと思う」
「私はセイヤが毎回倒れるのが心配です。きっとセイヤの身体に負担が大きくのしかかってるんではないかと」
「うん。最近は身体が重いんだ。やけに眠たくなるし。ハロルドの治癒がないと起きれなくなりそうなんだ」
「セイヤ。申し訳ありませんが一度、服を全部脱いでもらえませんか?」
「え?真っ裸になるの?」
「瘴気に侵されてないか確認したいのです」
「俺が……?わ、わかった」
裸になるのは恥ずかしいけど魔物や魔獣みたいになっちゃうのはいやだ。
服を脱いでいる途中にハロルドに止められた。
「セイヤ。足をどうしたのです?」
「え?足?どこもケガしてないけど?」
「爪が真っ黒に染まっています」
瘴気に侵されたみたいな色だ。怖い。このまま魔獣になったらどうしよう。
「ええ!……ほんとだ……ど、どうしよう。俺、化け物になっちゃうの?」
「大丈夫です。この程度ならまだ」
ハロルドが俺の足先を両手で包みながら呪文を唱えてくれる。ほわっと光ると爪の色が元に戻る。
「よ、よかったぁ」
ほっとすると涙がでてくる。これは自然現象だ。決して怖かったからじゃない。
「手のひらも少し黒ずんでいますね。こちらも治癒しておきましょう」
ハロルドに触れられると心が落ち着く。
「セイヤの使っている魔道具はもう一杯になってしまっているのかもしれませんね。吸いきれなかった瘴気がセイヤの身体に悪影響を起こしたのかもしれません」
「うそ!俺もう浄化に行くの嫌だよ。どうしよう」
「そうですね。もうほとんどの場所の浄化は済んでいると思います」
「ほんとう?」
「ええ。セイヤが頑張ったおかげですよ。ありがとうございます」
「あ、でもまたあさって、浄化に行けって神官長が言っていたよ」
「あさってですか?残っている大きな場所はないかと思いますが。騎士団長はなにか言ってましたか?」
「ううん。団長さんは魔獣と戦うのが忙しくてあんまり話せないんだ」
「そうですか。今日同行した神官たちに聞いてみましょうか」
「いや、やめた方がいい。神官長につつ向けになると思うよ」
「ふふ。筒抜けになってはいけないですか?」
「うん。神官たちは神官長の人形みたいだもの。なんだか変なんだ」
「おや?私も神官のひとりですが?」
「ハロルドは違うよ。俺の側近なんでしょ?」
「ええ。側近という立場におりますが、神官であることもかわりありません」
「ん~。そういうんじゃなくて。ハロルドには強いオーラがあるから跳ね返しているようなイメージなんだ」
「跳ね返している?何をですか?」
「瘴気をだよ」
「それはどういう意味ですか?」
「だって他の神官たちは瘴気に侵されているから」
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