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・腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する
12)専属契約 sideイブキ
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「そうだ。この間の薬草の話しはとても興味深かった。イブは浄化も出来るだろうし、魔獣は瘴気から生まれる魔物と違いもとは普通の動物なのだ。動物の生態がわかるイブが役に立つかもしれない。俺と契約を結んでおけば神殿に捕らわれることはない」
「この世界の動物はあまり知らないけど、浄化のチカラで動物を元の姿に戻せるなら助けてやりたいです」
「よし。契約成立だな?腕をだしてごらん」
「腕を?こうですか?」
僕が腕をエルシドの前に出すとカチリと銀のバングルがはめられた。
「腕輪には俺との契約魔法が施されている。つまりこの腕輪を外さない限りイブは宰相である俺の管轄下になる」
「エルシド様。神官長からお手紙が参りました」
執事のクラークさんがエルシドに手紙を渡す。
「……来たか。思ったよりも早かったな」
「どうしたんですか?」
「神殿から招集がかかった。『魔法測定の儀を行うので立ち合いに来られたし。森で拾われた珍しいモノをかならず連れてこられるように』とさ。神官長め、やはりイブがここに居ることがわかっていたな」
拾われた珍しいモノが僕なのか?招集がかかるって事は僕にも関係がある事なのか?
「さて、こちらも動くとするかな」
「はい。すべてはご主人様のお気に召すままに」
オウルの紋章が刻まれているエルシド家の馬車に乗る。乗る前に散々馬たちとじゃれあった。とてもよく人に慣れていて賢い馬たちだ。
「我が家の馬たちはあまり人には懐かないのだが、イブには動物に好かれる天性があるのかもしれないな」
「シドあれは何ですか?」
「ん?あれは道具屋だな」
「じゃあ、あれは?」
「あれは武器屋」
「良い匂いがするよ?」
「くくく。食べ物屋だな。露店もあるぞ」
「ご、ごめんなさい。シドの屋敷から出るのが初めてで。つい窓からキョロキョロしてしまって」
屋敷の遠くに見えていたヨーロッパ調の街並みが目前に広がってくる。初めて見るこの世界の街並み。人々。どれもこれも興味深くて。エルシドの前なのにはしゃいでしまっていた。
「そうだったな。窮屈な思いをさせて悪かった。今後は少しずつ俺が外に連れ出してやろう」
「シドが一緒に行ってくれるの?ありがとうございます!」
「どこか行きたいところはあるか?」
「それがどこに何があるのかがわからなくて」
「ははは。それもそうだな。では俺が考えておくよ」
「本当に?ありがとうございます!」
顔がニヤついてしまうのがわかる。エルシドと外出だなんて。楽しみだなあ。
◇◆◇
連れて来られた場所は大きな神殿だった。どこかの美術館みたいだ。
綺麗だけどここには光属性の子らが集められているという。馬車の中でひと通りの説明は受けた。
この世界には医者という職業がないらしい。怪我などは治癒師が治す。その治癒を扱えるのが光属性らしい。決まった場所に神殿から派遣された治癒師が駐在している。
今日は僕と一緒に召喚された少年の属性確認をするらしい。僕も呼ばれたと言うことは僕も検査するのだろう。
「緊張しなくてもいいぞ。俺が側にいるからな」
「はい。大丈夫です」
嘘だ。めちゃくちゃ緊張しているし、周りの声が耳に全然入ってこない。何をされるか怖くて仕方ない。無意識に胸元を掴んでいた。コツと何かに指が当たる。あ、中庭で拾った石だ。持ってきてしまったんだ。
やけに太ったおじさんが長い話をするなと思っていたらこの人が神官長さんなのか。僕達を召喚した人。そんな凄いことが出来るならこの人が浄化すればいいんじゃないのか?どうして異世界人しかできないのだろう?
瘴気のせいで動物が魔獣化するなんて許されない。出来ることなら僕の力で治してあげたい。助けられる命は助けてあげたいんだ。
ふいに何かを吸い取られる感覚に襲われた。自分の中から体温が抜けていくみたいだ。
「え?なに?」
めまいと寒気がしてくる。エルシドの支えがないと倒れそうだ。
「この世界の動物はあまり知らないけど、浄化のチカラで動物を元の姿に戻せるなら助けてやりたいです」
「よし。契約成立だな?腕をだしてごらん」
「腕を?こうですか?」
僕が腕をエルシドの前に出すとカチリと銀のバングルがはめられた。
「腕輪には俺との契約魔法が施されている。つまりこの腕輪を外さない限りイブは宰相である俺の管轄下になる」
「エルシド様。神官長からお手紙が参りました」
執事のクラークさんがエルシドに手紙を渡す。
「……来たか。思ったよりも早かったな」
「どうしたんですか?」
「神殿から招集がかかった。『魔法測定の儀を行うので立ち合いに来られたし。森で拾われた珍しいモノをかならず連れてこられるように』とさ。神官長め、やはりイブがここに居ることがわかっていたな」
拾われた珍しいモノが僕なのか?招集がかかるって事は僕にも関係がある事なのか?
「さて、こちらも動くとするかな」
「はい。すべてはご主人様のお気に召すままに」
オウルの紋章が刻まれているエルシド家の馬車に乗る。乗る前に散々馬たちとじゃれあった。とてもよく人に慣れていて賢い馬たちだ。
「我が家の馬たちはあまり人には懐かないのだが、イブには動物に好かれる天性があるのかもしれないな」
「シドあれは何ですか?」
「ん?あれは道具屋だな」
「じゃあ、あれは?」
「あれは武器屋」
「良い匂いがするよ?」
「くくく。食べ物屋だな。露店もあるぞ」
「ご、ごめんなさい。シドの屋敷から出るのが初めてで。つい窓からキョロキョロしてしまって」
屋敷の遠くに見えていたヨーロッパ調の街並みが目前に広がってくる。初めて見るこの世界の街並み。人々。どれもこれも興味深くて。エルシドの前なのにはしゃいでしまっていた。
「そうだったな。窮屈な思いをさせて悪かった。今後は少しずつ俺が外に連れ出してやろう」
「シドが一緒に行ってくれるの?ありがとうございます!」
「どこか行きたいところはあるか?」
「それがどこに何があるのかがわからなくて」
「ははは。それもそうだな。では俺が考えておくよ」
「本当に?ありがとうございます!」
顔がニヤついてしまうのがわかる。エルシドと外出だなんて。楽しみだなあ。
◇◆◇
連れて来られた場所は大きな神殿だった。どこかの美術館みたいだ。
綺麗だけどここには光属性の子らが集められているという。馬車の中でひと通りの説明は受けた。
この世界には医者という職業がないらしい。怪我などは治癒師が治す。その治癒を扱えるのが光属性らしい。決まった場所に神殿から派遣された治癒師が駐在している。
今日は僕と一緒に召喚された少年の属性確認をするらしい。僕も呼ばれたと言うことは僕も検査するのだろう。
「緊張しなくてもいいぞ。俺が側にいるからな」
「はい。大丈夫です」
嘘だ。めちゃくちゃ緊張しているし、周りの声が耳に全然入ってこない。何をされるか怖くて仕方ない。無意識に胸元を掴んでいた。コツと何かに指が当たる。あ、中庭で拾った石だ。持ってきてしまったんだ。
やけに太ったおじさんが長い話をするなと思っていたらこの人が神官長さんなのか。僕達を召喚した人。そんな凄いことが出来るならこの人が浄化すればいいんじゃないのか?どうして異世界人しかできないのだろう?
瘴気のせいで動物が魔獣化するなんて許されない。出来ることなら僕の力で治してあげたい。助けられる命は助けてあげたいんだ。
ふいに何かを吸い取られる感覚に襲われた。自分の中から体温が抜けていくみたいだ。
「え?なに?」
めまいと寒気がしてくる。エルシドの支えがないと倒れそうだ。
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