ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~

ゆうきぼし/優輝星

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・腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する

5)ここはどこ その2 sideイブキ

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「イブはコレを履いていたが?」
「あ!僕のスニーカー」

 エルシドは僕のスニーカーを手にしていろんな角度から眺めていた。

「底の部分の素材が不思議だな。弾力がある」
「その部分はゴムなんです。耐久性があり水が浸み込みにくいんです。弾力性もあるので足の負担を和らげてくれるんですよ」

「ふむ。興味深いな。この世界にはないものだ」
「……あ。その……。僕は……信じてもらえないかもしれないけど」

「異世界から来たのだろう?」
「……どうして?……それを」

「神殿で特別な儀式が行われたんだ。俺もその場にいた。見届け役というやつさ。だが、魔法陣から光が放たれるとそれは二つに分かれたらしい」
「魔法陣から……?」
「ああ。ひとつは神殿の入り口の前に、もうひとつは森の中に。俺は森に落ちた光がイブだったと思っている」
「確かに……そうかも……?」


 本当に僕は召喚されてこの世界にきたというのだろうか。受験の息抜きにライトノベルはいくつか読んでいた。
 今目の前にいるエルシドやデニスは僕が着ていた服装とは全然違う。アニメで見るお城に住んでる人の衣装みたいだ。それにどう見ても外国人らしいこの二人と言葉が通じている事も不思議だ。
 儀式というのは召喚儀式の事なのだろう。では何のためにそんなことをしたのだ?なにかの討伐のために僕は呼び出されたりしたのか?

「あの、僕は何かと戦ったりするんでしょうか?」
「いや。戦う事があれば、デニスや騎士団の隊員たちが対処しよう。イブが戦う事はない」
「そ、そうですか」
 良かった。僕は格闘技が苦手だ。話を聞くかぎりでは怖い事はしなくてもいいみたい?

「瘴気が濃い場所を浄化してまわってくれるだけでいいのだ」
「浄化ですか?」
「ああ、そうだ」
「それが終われば帰ってもいいんですよね?」
「いや、すまないが元の世界に戻る事はできないのだ」

「え?……戻れないのですか?」
 うそ。どうしよう。いきなり僕が居なくなったら寮のおじさんとおばさん心配しないかな。荷物だって置いたままだし。

「そのかわり浄化が終われば褒美が出る。何が欲しい?領地か?しかるべき地位でも資金でも宝石……」
「そ、そんなものいりません!」
「そうなのか?」

 いや、帰れないなら住むところとかは必要なのかな?でもどうやって暮らしていけばいいんだろう。
「す……すみません。僕ちょっと混乱してるみたいです」


「当然だ。こちらの都合で連れてきてしまった。すまない。出来ればもう少しイブの事を教えてくれないか?」

「……はい。僕の両親は事故でなくなり祖母の元で育ちました。今は大学の寮に入っています」

「大学?というと君は何歳なのだ」
「19歳です。もうじき20歳になります」
「20……?てっきり14~15歳くらいかと」
「私もそう思っておりました」
 いやいや。それはないでしょ!そりゃ僕は童顔だけど。そんな子供に見られていたなんて。

「デニスと同じくらいか?」
「いえ。私の方が2つ下です」
 デニスさんって僕より年下だったの?筋肉質な身体が服の上からでもわかる。毎日鍛えているのだろうか?自分の貧弱な身体と比べてしまう。 

「そうか。それで落ち着いているのだな」
 いやいや落ち着いてるのはデニスさんでしょ?とても17~18歳には見えないよ!

「そうですね。おっとりしてるようでいて、受け答えはしっかりされてますし。ただ、見た目が……その。失礼ですが幼く見えますので……」

「はあ。よく言われます」


「ところでこちらに召喚される前に何か変わったことはなかったか?」
「変わった事ですか?」

「例えば誰かが居たとか?」

「そういえば。僕、バイトに……あっと。働いているお店に行く途中だったんです。後ろから走って来た誰かとぶつかってそのまま地面に叩きつけられるはずが、光の中に吸い込まれていったんです」

 あの子が暴れて僕のシャツを引っ張って破いたんだな。あれは夢じゃなかったのか。

「なるほど。もう一人とは時間差があったのか」

「もう一人いるんですか?」
「ああ。召喚されたのは二人だ」


 じゃああの子もこの世界に来ているんだ。
 

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