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20)騎士団長

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「そうだイブ。教えて欲しいのだが、モブとはなんだ?」

「え?……それは……」
「お前が気にしているのは皇子がお前をモブと呼んだことではないのか?」

「…………モブとは脇役とかそのほか大勢の中のひとりとか主人公じゃないという意味です。この世界は皇子と呼ばれるあの子を召喚したかったんだ。僕はただの巻き込まれなんです。だから僕がここにいるのは間違ってるんじゃないかって」

「イブ……?」

「だから早く何か僕に出来る事を見つけないと。このままじゃシドの役に立ちそうもない。もっと勉強しなくちゃ。もっと頑張らないと……僕、僕は……」

「イブキ!俺を見ろ。落ち着け」

「シド……僕……」
 イブキの泣きそうな顔を見たら身体が自然と動いた。抱きしめると声をたてずに泣きだしてしまう。そんなに悩んでるとは思ってなかった。悪いのは俺だな。

「イブ。聞いてくれ。確かに最初は浄化を念頭において考えてはいた。だが今は違うんだ。神殿での俺の発言は覚えてないようだから言うが、俺はあいつらとは対抗するつもりだ。もともと浄化は神殿が担当。討伐は騎士団が。そこに俺が横やりを入れるというわけだ。名目はなんでもいいのだよ」

「横やりですか?」

「ああ。そうだ。宰相なんていうのは財務・内政・政策・その他もろもろの何でも屋なのさ。俺はこの国の均衡を保つためにいるんだ。その中でも至福を肥やして秩序を壊しかかっている部分をこれ以上広げないために動き出したって事さ」

「難しくってよくわからないです」

「くく。いいさ。イブの役目は俺が作る。だからお前は俺の傍にいてくれるだけでいいんだ」
「僕はシドの傍にいるだけでいいのですか?」
「もちろん働いてもらうさ」

「ピィ!」
「ははは。ユキもそうしろって言ってるみたいだな」
「……はい」


「じゃあ、この後の時間は俺がもらってもいいかな?」
「は、はい。……あの」
「もうじき騎士団長が来るのだ。イブにも紹介しておきたい」
「え?……なんだ。そういう……僕はてっきり……」
「ん?どうしたんだ?頬が赤いぞ。熱があるなら後日にしてもいいぞ」
「いえ!会います!大丈夫です」



「エルシド……お前見損なったぞ。そんな幼子に手を出すとは」

 戸口に鬼の形相をしている騎士団長がいた。ノックくらいしろ。まったく。どうやら俺がイブキを抱きしめてるのを見てなにやら勘違いをしているようだな。こいつは真面目すぎるからな。

「イブ。この真面目堅物の勘違い野郎が騎士団長だ」
「へ?……あの、はじめましてイブキと言います。イブと呼んでください」

「早くこちらに来なさい。おかしなことはされていないか?」

 団長がイブキを自分の元に連れて行こうと手を伸ばす。なんだコイツどさくさに紛れてイブキに触るんじゃねえ。パシンとその手を払い飛ばすと。腰の剣に手をかけやがった。威圧感が半端ない。

「待って!まってください。誤解です。僕はもう20歳です!」

「……なに?……20歳?……嘘をついてはいけない」

「嘘じゃないです!貴方のほうが失礼じゃないですか!僕童顔なんです!」
「嘘ではないぞ。ユリシーズ団長。イブは我が家の客人でもあるのだ」

「本当なのか?本当に20歳?」
「はい。成人してます」
 この世界の成人は18歳だ。団長はイブを何歳だと思ったんだ?まあ俺も最初はそうだったが。

「そうなのか?……これは失礼した。俺はユリシーズ・ウオルフ・エドモンドだ」
「ふう、まったく。イブ。団長ユリシーズにも茶を淹れてやってくれ」
「はい。どうぞこちらにお座りください」
 
 
 団長ユリシーズがソファーに座るとイブがカップを置く。

「良い香りだな」
「そうだろ?イブが淹れた茶は美味いぞ」
「お前は客人に茶を淹れさすのか?」

「まあな、これにはいろいろ訳があってな……」

 ざっとかいつまんでイブの話を聞かせてやる。団長ユリシーズはただの筋肉バカではないはず。

「あの、僕のことすぐに信じてもらえないかもしれませんが……」
「いや。信じる。なるほど異世界からこられたからオウルが懐いているのだな」

「やはりそうだったか」
「へ?」

「その肩に乗っているのはオウルの雛だ」


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