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18)僕が産んだの?その2
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「ふむ。チカラを吸う鳥類など聞いたことはないぞ」
「でも僕にはチカラがないのですよね?」
「いや、あのときは無属性と判断されただけだ。チカラはあると俺は思っている」
「そうなのですか?」
チカラというものがあったとしても僕はモブのはず。あの少年が僕のことをモブって言ったことだけは覚えている。つまりは僕は正規の商品ではない、オマケの景品みたいなものだ。
「見たところまだ雛のようだし、危害をくわえるようにも見えぬな。しばらくは様子見をしよう」
「そうですね」
「ピィ?」
「……なんだかイブに似ているな」
「そうですか?」
この毛玉が僕に似ている?僕はこんなにコロコロしているのか?
「可愛いですね。しかし不思議な事もあるものですね。我が屋敷の木々から見つかるとは。あとで鳥小屋をお持ちいたしましょう。スープをお持ちしましたよ。少しでも何か食べてくださいませ」
クラークさんが美味しそうなスープを運んでくれた。デジャブだ。ここに来た最初の日もこうしてスープを頂いたのだった。まったくもって感謝しかない。
「いつもありがとうございます」
「いえいえ。エルシド様はイブ様が目覚めるまで傍に居るとおっしゃってここで仕事をされていたのですよ」
「え?本当ですか?」
「しかし書類の束が増えすぎてやはり一旦、ご自身の部屋に戻られるようにと運んだところだったのです」
「そうだったんですね」
「はい。嫌がるエルシド様をイブ様から離すのに一苦労しました」
「クラーク、余計な事は言わなくても良いぞ」
「これは失礼いたしました」
エルシドの目の下には隈が出来ていた。眠っているときに聞こえた声はやはりエルシドだったのだ。胸の奥がきゅっとなる。僕が今こうしているのはエルシドのおかげかもしれない。あの声がなかったら僕はもうここに戻ってこれなかった気がする。
「シド。ありがとう」
「いや、いいんだ。早く元気になってくれ」
エルシドの大きな手が僕の頬を撫でる。この暖かさが心地よい。
「撫でられると安心します」
「そうか。いくらでも撫でてやるぞ」
「ピ!」
「なんだこいつ。自分も撫でろと言っているのか?」
「ふふ。君は僕が撫でてやるよ」
ふわふわの綿毛が目を細める。この子も撫でられると気持ちが良いのかもしれないな。
「クラーク何を笑っている?」
「いいえ何も。さあ、クルト。夕飯の支度に行きますよ」
「はい。イブ、また後でね」
「クルトもありがとう。心配かけてごめんね」
「うん!へへへ」
「イブは3日間、目が覚めなかったのだ」
「え?そんなに寝てたんですか?」
「ああ。その間は何も口にしていない。まずはスープを飲んでくれ」
「はい……」
「ピ!ピピ!」
スープを飲もうと手を離すともっと撫でろと毛玉が鳴いてくる。気に入ったのかな。僕と一緒だ。僕もシドに撫でられるのが好きだ。取ってもリラックスするのだ。
「くく。俺が飲ませてやろう。そのまま撫でておけ」
「ひぇ?あ、あの……はい。すみません」
「ほら。口をあけろ」
恥ずかしい。でもエルシドに飲ませてもらったスープはじんわりと体が温まるような味だった。
「美味しい」
「そうか、ほら、もっと飲め」
美味しいけどこんなの恥ずかしい。二人きりでよかった。クルトにでも見られたら何か言われそうだもの。
きっとこの人はこんな風に介護とかしたことがないんだろうな。ぎこちなさがわかる。真剣にこぼさない様に飲まそうとしてくれる。貴族だもの。されることはあってもすることはなかったに違いない。
それなのに。僕にはと手も優しいなんて。例え理由があったとしても。それでも。
ああ。どうしよう。もっと好きになってしまうじゃないか。
~~~~~~~~~
この後は20時です。
「でも僕にはチカラがないのですよね?」
「いや、あのときは無属性と判断されただけだ。チカラはあると俺は思っている」
「そうなのですか?」
チカラというものがあったとしても僕はモブのはず。あの少年が僕のことをモブって言ったことだけは覚えている。つまりは僕は正規の商品ではない、オマケの景品みたいなものだ。
「見たところまだ雛のようだし、危害をくわえるようにも見えぬな。しばらくは様子見をしよう」
「そうですね」
「ピィ?」
「……なんだかイブに似ているな」
「そうですか?」
この毛玉が僕に似ている?僕はこんなにコロコロしているのか?
「可愛いですね。しかし不思議な事もあるものですね。我が屋敷の木々から見つかるとは。あとで鳥小屋をお持ちいたしましょう。スープをお持ちしましたよ。少しでも何か食べてくださいませ」
クラークさんが美味しそうなスープを運んでくれた。デジャブだ。ここに来た最初の日もこうしてスープを頂いたのだった。まったくもって感謝しかない。
「いつもありがとうございます」
「いえいえ。エルシド様はイブ様が目覚めるまで傍に居るとおっしゃってここで仕事をされていたのですよ」
「え?本当ですか?」
「しかし書類の束が増えすぎてやはり一旦、ご自身の部屋に戻られるようにと運んだところだったのです」
「そうだったんですね」
「はい。嫌がるエルシド様をイブ様から離すのに一苦労しました」
「クラーク、余計な事は言わなくても良いぞ」
「これは失礼いたしました」
エルシドの目の下には隈が出来ていた。眠っているときに聞こえた声はやはりエルシドだったのだ。胸の奥がきゅっとなる。僕が今こうしているのはエルシドのおかげかもしれない。あの声がなかったら僕はもうここに戻ってこれなかった気がする。
「シド。ありがとう」
「いや、いいんだ。早く元気になってくれ」
エルシドの大きな手が僕の頬を撫でる。この暖かさが心地よい。
「撫でられると安心します」
「そうか。いくらでも撫でてやるぞ」
「ピ!」
「なんだこいつ。自分も撫でろと言っているのか?」
「ふふ。君は僕が撫でてやるよ」
ふわふわの綿毛が目を細める。この子も撫でられると気持ちが良いのかもしれないな。
「クラーク何を笑っている?」
「いいえ何も。さあ、クルト。夕飯の支度に行きますよ」
「はい。イブ、また後でね」
「クルトもありがとう。心配かけてごめんね」
「うん!へへへ」
「イブは3日間、目が覚めなかったのだ」
「え?そんなに寝てたんですか?」
「ああ。その間は何も口にしていない。まずはスープを飲んでくれ」
「はい……」
「ピ!ピピ!」
スープを飲もうと手を離すともっと撫でろと毛玉が鳴いてくる。気に入ったのかな。僕と一緒だ。僕もシドに撫でられるのが好きだ。取ってもリラックスするのだ。
「くく。俺が飲ませてやろう。そのまま撫でておけ」
「ひぇ?あ、あの……はい。すみません」
「ほら。口をあけろ」
恥ずかしい。でもエルシドに飲ませてもらったスープはじんわりと体が温まるような味だった。
「美味しい」
「そうか、ほら、もっと飲め」
美味しいけどこんなの恥ずかしい。二人きりでよかった。クルトにでも見られたら何か言われそうだもの。
きっとこの人はこんな風に介護とかしたことがないんだろうな。ぎこちなさがわかる。真剣にこぼさない様に飲まそうとしてくれる。貴族だもの。されることはあってもすることはなかったに違いない。
それなのに。僕にはと手も優しいなんて。例え理由があったとしても。それでも。
ああ。どうしよう。もっと好きになってしまうじゃないか。
~~~~~~~~~
この後は20時です。
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