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・腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する
7) クルト sideイブキ
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「ぼくはクルト。ここで働いてるんです」
クルトは小学生くらいのようだ。下働きとして働いてるらしい。
「僕はイブキ。イブでいいよ」
「イブ。あのね。イブって貴族ってわけじゃないよね?」
「うん、違うよ」
「あーよかった。ぼくさ、貴族相手の言葉遣いが苦手だったんだ」
「そうだったんだ。僕には普通に話してくれていいよ」
そっか。さっきはシド達がいたから緊張してたんだな。
「イブはさ、エルシド様とどういう関係なの?」
うわ。どうしよう。クルトってぐいぐい来るな。そりゃ面倒みないといけない相手だもの、気になるだろうなぁ。でもなんて言ったらいいんだろう。
「えっと森で倒れていたところを助けてくれたみたいなんだ?」
「倒れてたって?どうして?」
「えっと。よ、よく覚えてなくて」
「えー?大変じゃん。あれ?でも名前は覚えてるんだよね?」
「そ、そうなんだ。名前だけは覚えているんだけどさ。は、はは」
「ふうーん。まぁ、しばらくはここに居たらいいんじゃない?エルシド様自身が連れてきたのなら誰も文句は言わないよ」
「ありがとう」
あんまり追及されなくてよかった。
「ところでここはなんていう国なんだい?」
「ここ?アルミュール国だよ」
「アルミュール国か。シドは?エルシド様は偉い人なの?」
「うん。この国の宰相だって。すごく頭が良いんだよ。周りからは腹黒宰相って呼ばれてる」
「腹黒?」
「うん、それってすごい事なんでしょ?」
「えっと、そ、そうかなぁ?」
「でもそれを皆に言うと叱られるんだ。特に執事のクラークさんがうるさくってさぁ」
「誰がうるさいですと?なかなか戻らないのでお持ちしましたよ」
タキシードを着た紳士がワゴンを押して登場した。美味しそうないい匂いがする。
「しまった。軽食をお持ちするようにって言われてたんだっけ?」
「言われてたんだっけ?じゃありませんよ。そこのテーブルに食事をセッティングしなさい」
「はい!すみません!」
クルトが慌ててワゴンから食事をテーブルに移動させる。慎重にお皿を持ってテーブルの上に並べているのを横目で見ながら紳士が僕に軽くお辞儀をした。
「失礼いたしました。私はクラークと申します。このお屋敷で執事をさせていただいております。お食事をまだされてないのではないかとエルシド様がご心配されておりました。よろしければ軽食などいかがでしょう?」
「ありがとうございます。僕はイブキと言います。イブと呼んでください」
「かしこまりました。イブ様ですね」
「いえ、様はいりません。イブでいいです」
「そういうわけにはいきません。エルシド様からは客人としておもてなしするようにと言われております。イブ様と呼ばせてくださいませ」
「……あ、ありがとうございます」
どうしよう。様づけなんて慣れないな。でもお腹もすいてるしとりあえず何か食べさせてもらおう。
「クルト。私がうるさく言うのには理由があります。文句を言う暇があるならまずは言われたことをやれるようになりましょうね?」
「はい。ごめんなさい。何かに夢中になると忘れっぽくなるのがぼくの悪いところです」
「ふふ。そうやってすぐに自分の悪いところを謝れるのがクルトのイイところでもあるのですよ」
クラークさんって厳しいだけでなくちゃんと褒めてくれるんだ。なんだ良い人じゃないか。クルトもそれがわかっているからすぐに謝れるんだろう。いい関係だな。
クルトは小学生くらいのようだ。下働きとして働いてるらしい。
「僕はイブキ。イブでいいよ」
「イブ。あのね。イブって貴族ってわけじゃないよね?」
「うん、違うよ」
「あーよかった。ぼくさ、貴族相手の言葉遣いが苦手だったんだ」
「そうだったんだ。僕には普通に話してくれていいよ」
そっか。さっきはシド達がいたから緊張してたんだな。
「イブはさ、エルシド様とどういう関係なの?」
うわ。どうしよう。クルトってぐいぐい来るな。そりゃ面倒みないといけない相手だもの、気になるだろうなぁ。でもなんて言ったらいいんだろう。
「えっと森で倒れていたところを助けてくれたみたいなんだ?」
「倒れてたって?どうして?」
「えっと。よ、よく覚えてなくて」
「えー?大変じゃん。あれ?でも名前は覚えてるんだよね?」
「そ、そうなんだ。名前だけは覚えているんだけどさ。は、はは」
「ふうーん。まぁ、しばらくはここに居たらいいんじゃない?エルシド様自身が連れてきたのなら誰も文句は言わないよ」
「ありがとう」
あんまり追及されなくてよかった。
「ところでここはなんていう国なんだい?」
「ここ?アルミュール国だよ」
「アルミュール国か。シドは?エルシド様は偉い人なの?」
「うん。この国の宰相だって。すごく頭が良いんだよ。周りからは腹黒宰相って呼ばれてる」
「腹黒?」
「うん、それってすごい事なんでしょ?」
「えっと、そ、そうかなぁ?」
「でもそれを皆に言うと叱られるんだ。特に執事のクラークさんがうるさくってさぁ」
「誰がうるさいですと?なかなか戻らないのでお持ちしましたよ」
タキシードを着た紳士がワゴンを押して登場した。美味しそうないい匂いがする。
「しまった。軽食をお持ちするようにって言われてたんだっけ?」
「言われてたんだっけ?じゃありませんよ。そこのテーブルに食事をセッティングしなさい」
「はい!すみません!」
クルトが慌ててワゴンから食事をテーブルに移動させる。慎重にお皿を持ってテーブルの上に並べているのを横目で見ながら紳士が僕に軽くお辞儀をした。
「失礼いたしました。私はクラークと申します。このお屋敷で執事をさせていただいております。お食事をまだされてないのではないかとエルシド様がご心配されておりました。よろしければ軽食などいかがでしょう?」
「ありがとうございます。僕はイブキと言います。イブと呼んでください」
「かしこまりました。イブ様ですね」
「いえ、様はいりません。イブでいいです」
「そういうわけにはいきません。エルシド様からは客人としておもてなしするようにと言われております。イブ様と呼ばせてくださいませ」
「……あ、ありがとうございます」
どうしよう。様づけなんて慣れないな。でもお腹もすいてるしとりあえず何か食べさせてもらおう。
「クルト。私がうるさく言うのには理由があります。文句を言う暇があるならまずは言われたことをやれるようになりましょうね?」
「はい。ごめんなさい。何かに夢中になると忘れっぽくなるのがぼくの悪いところです」
「ふふ。そうやってすぐに自分の悪いところを謝れるのがクルトのイイところでもあるのですよ」
クラークさんって厳しいだけでなくちゃんと褒めてくれるんだ。なんだ良い人じゃないか。クルトもそれがわかっているからすぐに謝れるんだろう。いい関係だな。
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