石女を理由に離縁されましたが、実家に出戻って幸せになりました

お好み焼き

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4 離縁取消の報せが届きました

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父の葬儀から数週間が経ちました。
私はクルーヤとお祖父様と穏やかに暮らしていました。

お祖父様の秘密の告白には驚いたものの、毎日のように三人でお茶をして、家族の時間を取り戻すように過ごしていました。すぐ近くの壁には母の肖像画もあります。血縁上は、私達四人は本当の親子なのです。


「……どうしよう姉さん」
「クルーヤ?」

ある日のこと。
既にアース・ゼネラル様から離縁され、私はカトレン家の娘に戻ったと思っていたのですが、ゼネラル家から離縁取消の報せが届きました。

驚いた私は慌ててお祖父様を頼りました。
しかしお祖父様はなんの問題もないと仰って下さいました。

「アイリスには異能がある。それは既に王家に報告している。よってゼネラル家との離縁は、時間が解決する」

お祖父様によると、王家はカトレン家の血、その異能を他家に渡すことはよしとしないそうです。カトレン家は王家の懐刀であり、暗部でもあります。
私は母の不貞の子であるという前提でゼネラル家に嫁がされていたのでした。カトレン家の血を引いていると解った今は、王家も私をゼネラル家に戻すようなことは決して認めないからと、お祖父様は頭を撫でて下さいました。

「そうなのですね……」

しかし疑問があります。
届いた書類を読んでみたところ、離縁取消のその理由が、アース様が種無しだったこと。これは再婚に備えて検査したところ解ったそうです。そして石女を理由に私に叩き付けた離縁状は無効であること、よって子作りは不可なのだから、カトレン家の正当な血筋でもゼネラル家の嫁としてアースとの夫婦生活は続行可能という、その荒唐無稽な報せよりも疑問に感じたところがありました。

「……お祖父様。実は私……離縁前にアース様やそのご両親を、恨んでしまいました。アース様が種無しだなんて、まさか私が呪ったせいでは?」
「お前は優しい子だね。確かにお家断絶を企てるそのような異能もある。腹に宿ったと気付く前に次々と子を呪い殺す異能だ。しかしアイリス、お前は晩成型の異能者だ。その異能が効果を発揮するにも、あと数年はかかる」

では……アース様のことは、たまたまなのでしょうか……?

「……ゼネラル家にはミリーという女がいただろう?」
「はい」
「あれは大公王弟の暗部だ。そしてカトレン家の血筋、その末端でしかないが異能者でもある」
「……ミリー、が?」

ではミリーは、私の親戚だったのですか?

「……だいぶ前にね、王族の愛人をしていたカトレン家の者から生まれた、ミリーはその子孫だ。カトレン家は当時生まれた子を引き取らず王家に献上したのだ。呪い殺すまでの力は無くとも、腹の子が育つ前に命を断つ程度の力はあったから、王家もいらぬ婚外子を早々に始末できると献上を喜んでいたそうだ。しかし大切に育てられたわけじゃない。その扱いは酷いものだったと、聞いている」
「……だからミリーは私に優しかったのですね」

アース様に殴られた時も、いつもミリーが庇ってくれました。夜毎の暴力を伴う苦痛な行為も、ミリーがアース様を誘惑してくれたお陰で、私はつかの間体を休めることができました。嫁いでからの私は毎日のように出血していて、何針も縫いました。椅子に座るのですら苦痛だったのです。

「ミリーを……当家に引き取ることはできませんか?」
「おや?  それは大公に頼めば可能だが……いいのかい?  あの小僧が種無しだったからミリーは異能を使う機会がなかっただけで、いつでもアイリスの子を断つ準備はしていたと思うよ?」
「それは私が……確実に不貞の子という証拠が無かったから、もしもの時に備えて王家が保険としてミリーに命じていたからでしょう?   ミリー本人は……優しい女性です」

それにミリーがいなければ、私はとっくの昔に命を落としていたと思います。


お祖父様とミリーを引き取る話をした数日後、アース様がカトレン家に押し入ってきました。
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