婚約破棄は踊り続ける

お好み焼き

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3大公夫妻と踊り続ける①

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あれから約一年の月日が経った。

「……あの時は本当に危なかったな。しかし今思えば不本意だった婚約の白紙も、サリーの狂行も、全てルベデルカと結ばれる為の試練だったと納得すればよい思い出だ」

ルーベルバッハはルベデルカと白湯を飲みながら幸せを噛みしめていた。

「そうですね。それより殿下、腹がでかくなってきて……散歩にいきたいのに侍女が許してくれません」

ルベデルカはルーベルバッハの子を孕んでいた。正当な方法で本番に及んだのだがルーベルバッハが勃たなかったのでいつものように手を使ったら勃った。勃つということは挿入まで出来るということ。しかしルーベルバッハが達しなかったのでいつものように手を使ったら登り詰める事が出来た。なので登り詰める直前に事に及んだ結果、ルベデルカは難なく妊娠した。

「しかしその腹ではそろそろ歩行もきつくないか?」
「でも腹の子がよく蹴ってくるんですよ。外に出て花を見たり風にあたると蹴るのをやめるので、恐らく散歩したいって言ってるような気がするんです。ほら、触ってみて下さい」
「……うむ。今日も元気な蹴りだな。日に日に私達の子が生まれてくるのが楽しみで仕方ない。散歩中は私が歩行の助けになろう。なんならルベデルカが好きなラベンダー畑がある別荘地に行こうか?」
「しかし殿下、私達はまだ婚約中です。この腹を城の外にいる連中に見られたら流石に外聞が悪いのでは?」
「それは仕方ない。聖女が私達の結婚式に参列してルベデルカに不妊の呪いをかけることを条件に神殿に引っ込んでくれたのだ。ならばその前にルベデルカを孕ませるべきだと思った。なので結婚式は出産を終えたあとにゆっくり準備しよう」
「そうですね。あ、そういえば大公閣下がこの子を養子にする前に一度挨拶にいくからねと先触れを寄越してきたので、それが済んだら別荘に養生しに行きたいです」
「うむ。そうしよう」

そこで部屋の外がざわついた。
二人は過去の経験から一瞬警戒するも、侍女が入室してきて大公夫妻の訪問を報せてきただけだった。

「お通ししてくれ」
「……はい」

侍女がドアをあけると、青ざめた大公夫妻が入室してきた。そしてその背後には大公妃に聖剣を突き付けて般若のごとき形相で「フゥフゥ」と荒く息を漏らすサリーがいた。悪夢再び。そこで顔色が白くなった大公妃が気を失って床に倒れた。咄嗟に大公が妻に手を伸ばすも「動くんじゃないよ!」とサリーが大公妃の首に聖剣を突き付け静止させた。

「……サリー。またなんて事を」
「フゥ……フゥ」

会話が成立しないどころかサリーは目の焦点も合っていないようだった。そこでルーベルバッハがちらっと大公を見ると、目でじっとしていろと制された。

「……ちなみに妻は聖剣で斬られたら確実に血が流れるということは先に伝えておこう」
「大公妃は軍師の娘でしたからね。しかし罪人というわけでは」
「フゥ……あフゥ……殺してやる……殺して、やるぅ」
「……」
「……」

ルーベルバッハと大公はサリーがルベデルカを見ていることに気付いた。ほぼ腹ボテのルベデルカを、その腹を忌々しげに凝視していた。

「……嘘つき……嘘つきぃ……なんで孕んでるのよ……どうやってルーベルとの子をっ……なんでよおオオオオオオ!!!」

どうやって事に及んだか、それは絶対に悟られてはならない。
それよりも問題は聖女であるサリーだけが使える聖剣だ。
聖剣で斬られると無実でも物凄く痛いのだ。ここでルベデルカが斬られでもしたら血は流れなくともその衝撃で腹の子に取り返しのつかない事態が起こるかもしれない。

ルーベルバッハと大公の頭に警鐘が鳴る。

「聖女殿……いや殿下、このような経緯に至ったのはここに来る前、我々がルベデルカ嬢の子を一旦引き取り養子にもらう、そして大神官様に手続きと証人になってもらうため神殿に立ち寄ったのが発端だった」
「…………そうか。ならもしかしてサリーは、ルベデルカの子と聞いて私との子だと勘違いしてしまったのかもしれませんね」
「全くだ。ルベデルカ嬢の子は儂との間に授かった国の後継者だというのに。聖女殿は盗み聞きで何を勘違いしたのかいきなり聖剣を持って我々の前に現れた。妻を脅せば儂が言う事を聞くと悟り、……いやはやどうしたものか」

嘘である。
確実にルーベルバッハとの子である。いったん大公夫妻の籍に入れてからルーベルバッハの勃起不全を理由に取り戻すつもりだった。大公夫妻とはその算段を既に話終えていた。

ルーベルバッハは監禁に近い形で監視されている筈のサリーがこうも早く神殿を抜け出すとは、と焦りを感じていた。

大公は妻さえ人質に取られていなければこんな小娘すぐに捩じ伏せられるのに、と憤りを感じていた。

一方ルベデルカは必死に空気に徹していた。この腹では走って逃げることもできない。いつもは腹を蹴って散歩をせがんでくる子も場を察してか今は微動だにしていない。まるでルベデルカと同じく空気に徹していた。恐らく腹の子はルベデルカ似なのだろう。

「え……大公との、子なの?」

しかしこの会話でサリーは僅かに落ち着きを取り戻していた。そして空気に徹していたルベデルカを見た。
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