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2兄が妹狂い、だと?

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それから5年。
私は14歳になりました。
殿下と婚約を解消したといっても、公爵家の後継ぎとして登城し、家督を継ぐ者同士で交流することがあります。その際に殿下と話す機会は度々ありました。

「あれからもう5年か……」
「殿下?  どうされたのですか?」
「いや……セドリックはこの5年間の婚約期間を経て今年正式に婿入りしたが、向こうでは大切にされているのか……やはり気になってな」

多忙で隣国の式に出席出来なかった殿下が肩をおとしました。

「大切にされている筈ですわ。わたくしとお兄様の立場が入れ替わったことで、お兄様はわたくしに割り振られる筈だった持参金を持って婿入り致しました。隣国の王家も公爵家の持参金の額にびっくりして、息子さんを一生大切にしますと御丁寧に感謝状まで送ってきた程ですもの」
「……そうか。隣国は財政難が続いていた弱小国だからセドリックは利用されているのではと内心心配はしていたのだが。その必要はなかったようで安心したよ」

今もお兄様から手紙は届きます。
公爵家で学んだ知識で商売が軌道にのったこと、そのせいで更に隣国の王家に重宝されていること、よって自分は二度とアリシアの手の届かない存在になったこと。

手紙が届く度に私はお兄様大好き!と綴った手紙を返信しています。お兄様は性格は破綻してますが仕事となると途端に優秀になるキャラでもありますからね。もしお兄様が公爵家に戻りたいと言えばお父様は喜んでそれを了承するでしょう。それほど優秀な人ですから。家督を継ぐまでは保険としてお兄様大好きと言っておけば自ら遠い存在になってくれるので助かってます。

「あ、そうそうアリシア嬢。来月にはカサンドラ侯爵令嬢と婚約することになったんだ。婚約式にはぜひ出席して欲しい」
「はい。公爵家一同、王家の臣下として式の証人となります。しかし殿下の元婚約者であるわたくしにカサンドラ様が気落ちしないよう、形式は婚儀の位にして大々的に宴も開催しましょう。準備はお任せ下さい。当日は当家が支援者スポンサーとしてカサンドラ様を後押ししていると口添えもして頂けましたら幸いです」

学園に入学したらヒロインがやってきます。
悪役令嬢のお役目をカサンドラ侯爵令嬢がやるとして……もしゲーム通りの展開になればその時は全力で断罪を阻止します。カサンドラ侯爵令嬢の弟は今のところ女公爵となる予定の私の婚約者、その最有力候補でもありますから。

「頼もしいよ。セドリックもかなり優秀だったが、アリシア嬢も……セドリックが何度も自慢気に話すだけある」
「え?」
「はは、今だから言うが、あいつは妹狂いだと、この王宮では有名だったぞっ」
「……妹狂い?」

それはおかしいです。
お兄様が妹狂いだなんて、そんな設定はなかった筈です。

「ああ。とにかく妹が可愛い、可愛すぎて辛いと褒めちぎった後は何故か自己嫌悪していつも頭を掻きむしっていたからな」
「…………そうですか」

……やだ。なにそれ。
なんだか胸が擽ったい。


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