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2 セカンド

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不貞腐れてセカンド国の王都に転移しました。
広場にはセカンド国の建国者、セカンド様の像があります。

実は私、像マニアなのです。
とくに首から下が筋肉ダルマなセカンド像とサード像が大好きでして。あ、サード像はしばらく見ていませんね。サード国はいまフォース国と戦争中ですから。像はどちらも破壊されてバラバラの瓦礫と化しています。残念で仕方ありません。

ポケットを探り、サード様の像、その瓦礫の欠片を布から取り出しました。サード様の乳首の一部分です。拾いました。これは宝物です。だから決して舐めたり吸ったりは致しません。眺めるだけです。真のマニアはサード様を汚すようなことは致しません。眺め、崇め、視姦するだけです。

「リースベルちゃん、また石を眺めているの?」

掛けられた声に振り向くとドーナッツ店の店主がいました。セカンド国のドーナッツ店の店主です。先程のファウスト国のドーナッツ店の店主とは違います。

「……ねぇ、リースベルちゃんの持ってるその紙袋から、確かにドーナッツの香りがするんだけど、また浮気したの?」
「……言い掛かりですわ」
「欲深い子だね。僕のドーナッツだけじゃ満足できなくて、その可愛い唇で余所の男のドーナッツを咥えたの?」
「表現がいつになく破廉恥ですわ!」

ドーナッツ店の店主がすたすたと歩いて近付き、私に茶色い浮き輪のようなものを被せました。香りからしてドーナッツです。大きなドーナッツです。

「いつか僕のドーナッツで、リースベルちゃんのお腹をふくらませてみせるからね。覚悟しといて」

そう言ってドーナッツ店の店主は私からドーナッツの紙袋を奪うと立ち去っていきました。巨大なドーナッツを私に被せて。

なんだか居たたまれなくなってきました。

純粋な好意を向けられるのは苦手なのです。

婚約破棄され、親からも見捨てられ、国外追放された私なんて家畜扱いで充分ですもの。
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