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52 ポテト芋
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馬車の行列は、無事に王都、第2学園まで到着した。
ルリとラミアは、屋敷へ向かう為に王都を歩いている。
学園から屋敷までは1時間ほど。
夜の遅いではあるが、貴族街の周辺で襲われるという事はまず無い。
屋敷に着くと、慌ててメイド三姉妹が走ってきた。
「リフィーナ様、お帰りなさいませ。
突然、何かございましたか?
それで、そちらのお方はお客様でしょうか……?」
隣の女性に気付くと、長女アルナが質問してくる。
「こちらは、ラミア様。この屋敷に住む事になるわ」
「住む……? かしこまりました。
では、客間をすぐに準備いたしましね」
「それで、アルナ、イルナ、ウルナ。
落ち着いて聞いてね。
ラミア様は、500年の眠りから覚めたばかりなの」
「「「500年!?」」」
「うん……。
その、いろいろと……そう、常識がずれているから……。しっかりとお世話してね!」
「「「は、はい、ええと……」」」
「私が行ってた、湖の伝説は知ってるでしょ。
そこで一緒になった『蛇女』さんだから……」
「「「はぁぁぁぁ???」」」
敬語も忘れて驚く3人。
しばらく時間がかかったが、ようやく再起動した。
アルナがメイドらしく指示を出す。
「イルナは客間の準備を。ウルナは食事の準備をお願い。
リフィーナ様とラミア様は食堂でお待ちください」
「「はい」」
客間に通そうとする所、ルリは言い忘れをひとつ伝えた。
「あ、待ってイルナ。
私、明日お休みだから、買い物に付き合ってもらえる?
ラミア様、500年ぶりの地上で、服持っていないのよ……」
「あぁそれで……!
お胸がパツンパツンですものね!」
「うるさいわよ!」
「あはは。承知いたしました!」
翌朝。
メルヴィン商会へ向かう。
ラミアはモデルのようにスタイルがいい。
店は大いに盛り上がり、ファッションショーの様相だった。
その場で数着買い、着せてもらう。
他にも、サイズを測ってオーダーメイドで作ってもらう。
「うむ、服なぞ着たことが無いからのう。
人と言うのは面白いのう」
「絶対に、裸で外は歩かないでくださいね!!」
ラミアの耳元で必死に告げるルリであった。
その足で、ルリ達は商業ギルドへ来ていた。
ラミアの身分証を手に入れるためだ。
商業ギルドであれば、子爵家が保証人となれば、出自など聞かれずに登録できる。
「こんにちは。使用人の身分証の発行をお願いします。
私はアメイズ子爵家のリフィーナです」
ルリが受付嬢に話しかけると、快く対応してくれた。
「はい。アメイズ子爵家の使用人ですね。
まずはお名前をお願いします」
「ラミア」
「次に年齢を教えていただけますか?」
受付嬢がラミアを見て聞いてきた。
「うむ、1000を超えた所までは数えておったが……。その後500年は眠っておるし……」
「いえ、あの、24歳です!!」
ルリは慌ててラミアの声を遮り、答えた。
「は? はい……。24歳ですね……」
受付嬢は不思議そうな顔をしているが、すぐに仕事に戻ると、身分証を発行してくれた。
「貴方はラミア。アメイズ子爵家の使用人で24歳。
これが身分証よ。忘れないようにね!」
ルリは出来上がった身分証をラミアに渡す。
ラミアは、あまり理解できていなそうだった。
午後は王都を散歩した。
ラミアとイルナ、ルリの3人で、食事をしたり、買い物をしたり。
「ラミア様は、武器とか防具とかは使うのですか?」
「特に要らぬぞ。戦うとしたら蛇たちが戦うからのう。
それに、我は争いを好まぬでな」
そんな会話をしながら歩いていると、遠くからルリを見ている視線に気付いた。
「誰かこっちを見てるわね? あの露天商かしら……」
「リフィーナ様、視線は浴びるように注がれてますよ。
目立つ容姿だってわかってます?」
今更かよ、とでも言いたげなイルナである。
もちろん、ルリもラミアも気付いてはいない。
「あの露店、たぶんアメイズ領から来ていると思われますね。
近くに寄ってみましょうか?」
イルナに言われ、近くに寄ると、露天商が目を丸くしていた。
「リフィーナ様、王都にいらっしゃるとは聞いておりましたが、お会いできるとは何たる光栄でしょうか……」
アメイズ領から行商に来ているらしく、ちょうど露店に商品を並べ始めた所で、リフィーナを見かけて感動しているのであった。
「王都までご苦労様。良かったら私にも品物を見せてくれる?」
「はい、もちろんでございます」
露天商は木箱を開けて商品を見せてくれた。
「あれ? お芋じゃない?
アメイズ領ではお芋がとれるの?」
「リフィーナ様、領主家として知っておいてくださいね!
ポテト芋はアメイズ領の特産品ですよ!」
イルナに怒られ、顔を赤くするルリ。
「仕方ないですよ。
パサパサして美味しくないので、貴族様の食卓に上がることはほとんどありません。
領内でも農民や一部の平民は主食としておりますが……」
アメイズ領ではポテト芋をほとんどの農民が栽培しているらしい。
ただ、「煮る」くらいしか調理法の知られていないこの世界では、裕福な生活層では食べられることが無い食材となっていた。
(コロッケでしかお芋は使ってなかったものね。
メルヴィンも仕入が難しいとは言ってたけど、量が採れないのかしら……。
でも、アメイズ領の特産品となれば、一肌脱ぐしかないわね!!)
「商人さん、聞いてもいい?
このポテト芋、領にはいっぱいあるのかしら?
王都には出回ってないの?」
「ええ、領内には山ほどありますが……。
王都まで売りに来るのは私くらいです……。
安い上に重いですので……。
それも荷馬車が空いた時に持ってくるくらいでして……」
商人が申し訳なさそうに回答する。
(値段が安くて大量にある。しかもアメイズ領の特産品!
この勝負、貰ったわね!!)
誰と戦っているのかは不明だが、勝ち誇った顔で商人を見つめた。
「商人さん、この後、時間あるかしら?」
「はい。それは、もちろん……」
「イルナ、ちょっとメルヴィンさんを呼んでくださる?
う~ん、場所はお屋敷にしましょう!!」
ルリは、商人を引き連れて、スキップしながら屋敷に戻った。
「ウルナ、お手伝いお願い。
まずは、このポテト芋を細長く切って!」
屋敷のメイド三姉妹、調理担当のウルナにポテト芋を切ってもらう。
1センチほどの棒状。
他にも薄くスライスしたもの。
「うん、そうそう。
皮は剥いてね。あと、芽はしっかり取ってね」
切ったポテト芋は水にさらし、しばらく漬けておく。
その間で、ウルナには丸ごとのポテト芋を茹でておいてもらった。
「切ったポテト芋は、良く水気を切って乾燥させるの。
茹でた方は、潰してちょうだい。
半分はザクっと、もう半分はペーストになるまで細かくね!」
指示通りに下ごしらえを行うウルナに感心しつつ、調理の指示を出す。
そうして待っていると、商会長のメルヴィンが到着した。
応接に通すと、突然領主の屋敷に連行された商人が憔悴しきった様子で控えている。
しかし、同じ商人であるメルヴィンを見て安心したようだ。
「メルヴィンさん、ご紹介します。こちら、アメイズ領の商人の……」
「ヤトブと申します」
名前を聞いていないことに気付き言葉に詰まると、本人が名乗ってくれた。
「早速ですが、試食をお願いしますわ!
説明は食べた後という事で!!」
ウルナに指示を出し、料理を運んでもらう。
「これは、パンにハンバーグを挟んでいるのですね。
サンドイッチとは違う斬新さ、食べ応えもありますね!」
「この黄色い棒状の食べ物は何でしょうか?
カリッとして、ホクホクしていて、塩加減も素晴らしい!」
最初に出したのは、ハンバーガーとフライドポテト。
(バーガーとポテトって何でこんなに相性いいのかしらね?
これで美味しくない訳がないわね!)
目を輝かせる2人を見ながら、次の料理を運んでもらう。
次は、ポテトサラダだ。
「食感がいいですね。しっとりしていて、濃厚で……。
これは何の料理なのでしょうか……?」
「答えは、次を食べてから教えるわ!」
最後に運んだのは、ポテトチップスとスイートポテトだ。
「おぉ! パリパリサクサクです!」
「こっちは程よい甘さが! デザートですね!」
「「美味しい」」
スイートポテトはサツマイモほどの甘みが無いため、蜂蜜で仕上げている。
食事の余韻を楽しんだ後、待ちきれないように2人が声を揃えた。
「「それで、これは何でしょうか?」」
「種明かししましょう!
これは、アメイズ領のポテト芋を使った料理ですよ!」
「「えぇぇぇぇ!!」」
「ポテト芋は……その……パサパサして……」
ヤトブに気を使ったのかメルヴィンが言葉に詰まるが、言いたいことは分かる。
「そうですね、ただ火を通すだけではパサパサして美味しくないです。
でも、丸ごと水から茹でれば、甘みも出るのですよ。
それと、ポテト芋は揚げるとなお美味しいわ!」
「なるほど。それで、ヤトブさんと協力してポテト芋を王都に仕入れれば、メルン亭の新メニューとして売り出せるという事ですね。
さっそくレシピを商業ギルドに登録して、仕入れも話を付けましょう!」
「メルヴィンさん、甘いわよ!!
レシピの登録は不要よ。今回はそんなものじゃないわ!!
クローム王国、新しい風を起こすのよ!!」
儲けを嗅ぎ付け、早々に仕事モードに移るメルヴィンを制し、ルリはガッツポーズを決めていた。
「新しい風……ですか?」
「そうよ。
まず、ヤトブさんは、少しでも多くのポテト芋をアメイズ領から王都に運べるように、メルヴィンさんと協力してほしいの。いいかしら?
それで……」
ヤトブが頷くのを見ると、ルリは大きく叫んだ。
「新しいお店、いえ、新しい事業を始めるわ!
お店の名前は、『アメイズ・バーガー』よ!!」
ルリが始めようとしたのは、日本ではおなじみのフランチャイズによるハンバーガー店のチェーン展開だ。
実際の細かい仕組みや取り決めなど、高校生であるルリが知る訳もないのであるが、メルヴィンを加えたことで、それらしい形が出来上がっていく。
加盟店契約として金貨100枚、毎月の売上の一割を支払うことで、『アメイズ・バーガー』の看板を使用できる。
また、不足した開店資金を本部が肩代わりすると同時に、店舗物件の斡旋、従業員の手配、教育は本部が支援することにした。
開店後も、面倒な管理業務は本部で支援する。
食材となるパンやハンバーグ、ポテトなどは、セントラルキッチンで作ったものを店舗に届けるので、店舗では温めと盛り付けで済む。
「少ない資金でもお店が持てるようになるのですね。
それに、店舗の負担が驚く程少ない、便利な仕組みです!
お店を持ちたくて持てない人はたくさんいますので喜ばれるでしょう」
「少ない従業員で、調理時間も短いので客の回転が良いんですよ!
大量に売れれば、ポテト芋の消費も増えるので、アメイズ領もウハウハです!!」
1か月後、商業ギルドや王都のあちこちに、ある宣伝が張り出された。
新規オープン『アメイズ・バーガー』
アメイズ・バーガー 銅貨3枚
Aセット バーガー+ポテト+ドリンク 銅貨5枚
あなたもお店を持ちませんか?
加盟店募集中、詳しくは~~~
記念すべき1号店は、王都中央広場と王宮の中間あたりに物件を見つけた。
将来的に王都の門周辺に店舗を拡大させる点、王都のどこにでも行きやすい点を考慮し、セントラルキッチンを備えた本店の場所を決めたのだった。
今日はプレオープン。
関係者を顧客として招き、実際の接客に近い形で営業する。
ルリは普段は学園の生徒である。
店舗の内装や接客のルールを初期で伝えたが、その後の細部はメルヴィンやヤトブに任せていたため、実際に完成したお店に来るのは初めてだった。
(どんなお店になったかしらね。楽しみだわ……)
期待に胸を膨らませながら店舗に向かう。
面白そう、という事で、ミリアとセイラ、メアリーも一緒だ。
「お店に入ったら、カウンターに行って注文するのよ。
セルフサービスなの。
お店の中で食べても、外に持って行ってから食べでもいい仕組みよ」
簡単な説明を終えて、店舗のドアを開く。
正面にカウンター、上部にはメニューが張ってある。
テーブルは4人掛けのものを中心に20席ほど。
伝えた通りの内装に仕上がっていた。
(うん、いい感じね。まさに知ってるハンバーガーショップだわ!)
内装に満足し、4人そろって店内に足を踏み入れた。
「「「「「いらっしゃいませ、お嬢様!!」」」」」
「はぇ!?」
(どうしてこうなった……?
なんで、メイドが接客してるのぉぉぉぉ……?)
ルリとラミアは、屋敷へ向かう為に王都を歩いている。
学園から屋敷までは1時間ほど。
夜の遅いではあるが、貴族街の周辺で襲われるという事はまず無い。
屋敷に着くと、慌ててメイド三姉妹が走ってきた。
「リフィーナ様、お帰りなさいませ。
突然、何かございましたか?
それで、そちらのお方はお客様でしょうか……?」
隣の女性に気付くと、長女アルナが質問してくる。
「こちらは、ラミア様。この屋敷に住む事になるわ」
「住む……? かしこまりました。
では、客間をすぐに準備いたしましね」
「それで、アルナ、イルナ、ウルナ。
落ち着いて聞いてね。
ラミア様は、500年の眠りから覚めたばかりなの」
「「「500年!?」」」
「うん……。
その、いろいろと……そう、常識がずれているから……。しっかりとお世話してね!」
「「「は、はい、ええと……」」」
「私が行ってた、湖の伝説は知ってるでしょ。
そこで一緒になった『蛇女』さんだから……」
「「「はぁぁぁぁ???」」」
敬語も忘れて驚く3人。
しばらく時間がかかったが、ようやく再起動した。
アルナがメイドらしく指示を出す。
「イルナは客間の準備を。ウルナは食事の準備をお願い。
リフィーナ様とラミア様は食堂でお待ちください」
「「はい」」
客間に通そうとする所、ルリは言い忘れをひとつ伝えた。
「あ、待ってイルナ。
私、明日お休みだから、買い物に付き合ってもらえる?
ラミア様、500年ぶりの地上で、服持っていないのよ……」
「あぁそれで……!
お胸がパツンパツンですものね!」
「うるさいわよ!」
「あはは。承知いたしました!」
翌朝。
メルヴィン商会へ向かう。
ラミアはモデルのようにスタイルがいい。
店は大いに盛り上がり、ファッションショーの様相だった。
その場で数着買い、着せてもらう。
他にも、サイズを測ってオーダーメイドで作ってもらう。
「うむ、服なぞ着たことが無いからのう。
人と言うのは面白いのう」
「絶対に、裸で外は歩かないでくださいね!!」
ラミアの耳元で必死に告げるルリであった。
その足で、ルリ達は商業ギルドへ来ていた。
ラミアの身分証を手に入れるためだ。
商業ギルドであれば、子爵家が保証人となれば、出自など聞かれずに登録できる。
「こんにちは。使用人の身分証の発行をお願いします。
私はアメイズ子爵家のリフィーナです」
ルリが受付嬢に話しかけると、快く対応してくれた。
「はい。アメイズ子爵家の使用人ですね。
まずはお名前をお願いします」
「ラミア」
「次に年齢を教えていただけますか?」
受付嬢がラミアを見て聞いてきた。
「うむ、1000を超えた所までは数えておったが……。その後500年は眠っておるし……」
「いえ、あの、24歳です!!」
ルリは慌ててラミアの声を遮り、答えた。
「は? はい……。24歳ですね……」
受付嬢は不思議そうな顔をしているが、すぐに仕事に戻ると、身分証を発行してくれた。
「貴方はラミア。アメイズ子爵家の使用人で24歳。
これが身分証よ。忘れないようにね!」
ルリは出来上がった身分証をラミアに渡す。
ラミアは、あまり理解できていなそうだった。
午後は王都を散歩した。
ラミアとイルナ、ルリの3人で、食事をしたり、買い物をしたり。
「ラミア様は、武器とか防具とかは使うのですか?」
「特に要らぬぞ。戦うとしたら蛇たちが戦うからのう。
それに、我は争いを好まぬでな」
そんな会話をしながら歩いていると、遠くからルリを見ている視線に気付いた。
「誰かこっちを見てるわね? あの露天商かしら……」
「リフィーナ様、視線は浴びるように注がれてますよ。
目立つ容姿だってわかってます?」
今更かよ、とでも言いたげなイルナである。
もちろん、ルリもラミアも気付いてはいない。
「あの露店、たぶんアメイズ領から来ていると思われますね。
近くに寄ってみましょうか?」
イルナに言われ、近くに寄ると、露天商が目を丸くしていた。
「リフィーナ様、王都にいらっしゃるとは聞いておりましたが、お会いできるとは何たる光栄でしょうか……」
アメイズ領から行商に来ているらしく、ちょうど露店に商品を並べ始めた所で、リフィーナを見かけて感動しているのであった。
「王都までご苦労様。良かったら私にも品物を見せてくれる?」
「はい、もちろんでございます」
露天商は木箱を開けて商品を見せてくれた。
「あれ? お芋じゃない?
アメイズ領ではお芋がとれるの?」
「リフィーナ様、領主家として知っておいてくださいね!
ポテト芋はアメイズ領の特産品ですよ!」
イルナに怒られ、顔を赤くするルリ。
「仕方ないですよ。
パサパサして美味しくないので、貴族様の食卓に上がることはほとんどありません。
領内でも農民や一部の平民は主食としておりますが……」
アメイズ領ではポテト芋をほとんどの農民が栽培しているらしい。
ただ、「煮る」くらいしか調理法の知られていないこの世界では、裕福な生活層では食べられることが無い食材となっていた。
(コロッケでしかお芋は使ってなかったものね。
メルヴィンも仕入が難しいとは言ってたけど、量が採れないのかしら……。
でも、アメイズ領の特産品となれば、一肌脱ぐしかないわね!!)
「商人さん、聞いてもいい?
このポテト芋、領にはいっぱいあるのかしら?
王都には出回ってないの?」
「ええ、領内には山ほどありますが……。
王都まで売りに来るのは私くらいです……。
安い上に重いですので……。
それも荷馬車が空いた時に持ってくるくらいでして……」
商人が申し訳なさそうに回答する。
(値段が安くて大量にある。しかもアメイズ領の特産品!
この勝負、貰ったわね!!)
誰と戦っているのかは不明だが、勝ち誇った顔で商人を見つめた。
「商人さん、この後、時間あるかしら?」
「はい。それは、もちろん……」
「イルナ、ちょっとメルヴィンさんを呼んでくださる?
う~ん、場所はお屋敷にしましょう!!」
ルリは、商人を引き連れて、スキップしながら屋敷に戻った。
「ウルナ、お手伝いお願い。
まずは、このポテト芋を細長く切って!」
屋敷のメイド三姉妹、調理担当のウルナにポテト芋を切ってもらう。
1センチほどの棒状。
他にも薄くスライスしたもの。
「うん、そうそう。
皮は剥いてね。あと、芽はしっかり取ってね」
切ったポテト芋は水にさらし、しばらく漬けておく。
その間で、ウルナには丸ごとのポテト芋を茹でておいてもらった。
「切ったポテト芋は、良く水気を切って乾燥させるの。
茹でた方は、潰してちょうだい。
半分はザクっと、もう半分はペーストになるまで細かくね!」
指示通りに下ごしらえを行うウルナに感心しつつ、調理の指示を出す。
そうして待っていると、商会長のメルヴィンが到着した。
応接に通すと、突然領主の屋敷に連行された商人が憔悴しきった様子で控えている。
しかし、同じ商人であるメルヴィンを見て安心したようだ。
「メルヴィンさん、ご紹介します。こちら、アメイズ領の商人の……」
「ヤトブと申します」
名前を聞いていないことに気付き言葉に詰まると、本人が名乗ってくれた。
「早速ですが、試食をお願いしますわ!
説明は食べた後という事で!!」
ウルナに指示を出し、料理を運んでもらう。
「これは、パンにハンバーグを挟んでいるのですね。
サンドイッチとは違う斬新さ、食べ応えもありますね!」
「この黄色い棒状の食べ物は何でしょうか?
カリッとして、ホクホクしていて、塩加減も素晴らしい!」
最初に出したのは、ハンバーガーとフライドポテト。
(バーガーとポテトって何でこんなに相性いいのかしらね?
これで美味しくない訳がないわね!)
目を輝かせる2人を見ながら、次の料理を運んでもらう。
次は、ポテトサラダだ。
「食感がいいですね。しっとりしていて、濃厚で……。
これは何の料理なのでしょうか……?」
「答えは、次を食べてから教えるわ!」
最後に運んだのは、ポテトチップスとスイートポテトだ。
「おぉ! パリパリサクサクです!」
「こっちは程よい甘さが! デザートですね!」
「「美味しい」」
スイートポテトはサツマイモほどの甘みが無いため、蜂蜜で仕上げている。
食事の余韻を楽しんだ後、待ちきれないように2人が声を揃えた。
「「それで、これは何でしょうか?」」
「種明かししましょう!
これは、アメイズ領のポテト芋を使った料理ですよ!」
「「えぇぇぇぇ!!」」
「ポテト芋は……その……パサパサして……」
ヤトブに気を使ったのかメルヴィンが言葉に詰まるが、言いたいことは分かる。
「そうですね、ただ火を通すだけではパサパサして美味しくないです。
でも、丸ごと水から茹でれば、甘みも出るのですよ。
それと、ポテト芋は揚げるとなお美味しいわ!」
「なるほど。それで、ヤトブさんと協力してポテト芋を王都に仕入れれば、メルン亭の新メニューとして売り出せるという事ですね。
さっそくレシピを商業ギルドに登録して、仕入れも話を付けましょう!」
「メルヴィンさん、甘いわよ!!
レシピの登録は不要よ。今回はそんなものじゃないわ!!
クローム王国、新しい風を起こすのよ!!」
儲けを嗅ぎ付け、早々に仕事モードに移るメルヴィンを制し、ルリはガッツポーズを決めていた。
「新しい風……ですか?」
「そうよ。
まず、ヤトブさんは、少しでも多くのポテト芋をアメイズ領から王都に運べるように、メルヴィンさんと協力してほしいの。いいかしら?
それで……」
ヤトブが頷くのを見ると、ルリは大きく叫んだ。
「新しいお店、いえ、新しい事業を始めるわ!
お店の名前は、『アメイズ・バーガー』よ!!」
ルリが始めようとしたのは、日本ではおなじみのフランチャイズによるハンバーガー店のチェーン展開だ。
実際の細かい仕組みや取り決めなど、高校生であるルリが知る訳もないのであるが、メルヴィンを加えたことで、それらしい形が出来上がっていく。
加盟店契約として金貨100枚、毎月の売上の一割を支払うことで、『アメイズ・バーガー』の看板を使用できる。
また、不足した開店資金を本部が肩代わりすると同時に、店舗物件の斡旋、従業員の手配、教育は本部が支援することにした。
開店後も、面倒な管理業務は本部で支援する。
食材となるパンやハンバーグ、ポテトなどは、セントラルキッチンで作ったものを店舗に届けるので、店舗では温めと盛り付けで済む。
「少ない資金でもお店が持てるようになるのですね。
それに、店舗の負担が驚く程少ない、便利な仕組みです!
お店を持ちたくて持てない人はたくさんいますので喜ばれるでしょう」
「少ない従業員で、調理時間も短いので客の回転が良いんですよ!
大量に売れれば、ポテト芋の消費も増えるので、アメイズ領もウハウハです!!」
1か月後、商業ギルドや王都のあちこちに、ある宣伝が張り出された。
新規オープン『アメイズ・バーガー』
アメイズ・バーガー 銅貨3枚
Aセット バーガー+ポテト+ドリンク 銅貨5枚
あなたもお店を持ちませんか?
加盟店募集中、詳しくは~~~
記念すべき1号店は、王都中央広場と王宮の中間あたりに物件を見つけた。
将来的に王都の門周辺に店舗を拡大させる点、王都のどこにでも行きやすい点を考慮し、セントラルキッチンを備えた本店の場所を決めたのだった。
今日はプレオープン。
関係者を顧客として招き、実際の接客に近い形で営業する。
ルリは普段は学園の生徒である。
店舗の内装や接客のルールを初期で伝えたが、その後の細部はメルヴィンやヤトブに任せていたため、実際に完成したお店に来るのは初めてだった。
(どんなお店になったかしらね。楽しみだわ……)
期待に胸を膨らませながら店舗に向かう。
面白そう、という事で、ミリアとセイラ、メアリーも一緒だ。
「お店に入ったら、カウンターに行って注文するのよ。
セルフサービスなの。
お店の中で食べても、外に持って行ってから食べでもいい仕組みよ」
簡単な説明を終えて、店舗のドアを開く。
正面にカウンター、上部にはメニューが張ってある。
テーブルは4人掛けのものを中心に20席ほど。
伝えた通りの内装に仕上がっていた。
(うん、いい感じね。まさに知ってるハンバーガーショップだわ!)
内装に満足し、4人そろって店内に足を踏み入れた。
「「「「「いらっしゃいませ、お嬢様!!」」」」」
「はぇ!?」
(どうしてこうなった……?
なんで、メイドが接客してるのぉぉぉぉ……?)
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【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
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五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
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もはや文字ですら無かった
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