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7月
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雨が降っている。お腹が痛い。生理痛。わたしは自分を慰める為、歌を作る。
「わたし まるでお腹に
石を詰められた オオカミ
重くて 痛くって 苦しくって
もう歩けない
狩りをするのはオオカミの
歌を作のはわたしの
習性なのに
何でこんな血を見るの
わたし まるでお腹に
石を詰められた オオカミ
重くて 痛くって 苦しくって
もう歩けない
何にも悪いことなど
していないのにオオカミ
憐れ 井戸の底へと
沈みゆきました」
タイトルは「月のオオカミ」とした。俊ちゃんが帰って来るまで何度も歌う。
今日は俊ちゃんの誕生日だ。うちで容ちゃんと三人でパーティをする。
料理とDVDは一品持ち寄り。わたしが南瓜のミルク煮、容ちゃんがローストビーフ、俊ちゃんがおからのフライ。
南瓜のミルク煮は南瓜を切って牛乳で煮ただけ、おからのフライは一口サイズ。
DVDはわたしが「ベニスに死す」、俊ちゃんが「オーメン」、容ちゃんが「ハイ・アート」。「ハイ・アート」はDVDでは「プライベート・フォト」だけど、わたしと容ちゃんは映画館まで観に行った。レズビアンものの美しい映画だ。容ちゃんはポスターも買っていた。
「それで実際の所、結婚ってどうなのよ。」
食事が一段落した所で容ちゃんはいきなり云い出した。
「わたしは良かったって思ってるよ。」
「俺も。」
わたし達は即答した。
「何よ、二人して気持ち悪いなあ。順子なんか去勢された犬みたい。」
容ちゃんは口が悪い。わたしは声を荒げる。
「酷い。」
「だって。ぢゃあ、一日のうちで幸せな時間はいつ?」
容ちゃんもムキになる。
「それは夜、俊ちゃんが居る時だけど。」
「ほらね。一日の大半が不幸な時間なんぢゃない。」
「そんなことないよ。」
「まあまあ、二人とも。」
俊ちゃんが間に割って入る。
「俊一。そういう俊一はどうなのよ、一日のうちで幸せな時間はいつ?」
容ちゃんは噛みつく。俊ちゃんはちょっと困った顔になる。
「そりゃあ、家に居る間だけど。」
「ほら、俊一も一日の大半が不幸なんぢゃない。」
容ちゃんは勢いづく。
「でも、結婚してなかったら、その幸せな時間もなかったわけだから。」
俊ちゃんの言葉にわたしは感動した。
「ほんとね、俊ちゃん。そうよね。」
声を震わせて云うと、容ちゃんは呆れた顔になった。
「何よ、二人して気持ち悪いなあ。」
容ちゃんはおからのフライを口に放り込んだ。
わたし達の集まりはいつもハードだ。
ドレスコードにしても、例えば、宝塚の娘役ですみたいなことを云うと、おおーっと云うことになったりする。宝塚の娘役は女社会の中でより女を強調しなければいけない、しかもその地位は低い。少なくとも二重に抑圧された存在だからだ。
「わたし まるでお腹に
石を詰められた オオカミ
重くて 痛くって 苦しくって
もう歩けない
狩りをするのはオオカミの
歌を作のはわたしの
習性なのに
何でこんな血を見るの
わたし まるでお腹に
石を詰められた オオカミ
重くて 痛くって 苦しくって
もう歩けない
何にも悪いことなど
していないのにオオカミ
憐れ 井戸の底へと
沈みゆきました」
タイトルは「月のオオカミ」とした。俊ちゃんが帰って来るまで何度も歌う。
今日は俊ちゃんの誕生日だ。うちで容ちゃんと三人でパーティをする。
料理とDVDは一品持ち寄り。わたしが南瓜のミルク煮、容ちゃんがローストビーフ、俊ちゃんがおからのフライ。
南瓜のミルク煮は南瓜を切って牛乳で煮ただけ、おからのフライは一口サイズ。
DVDはわたしが「ベニスに死す」、俊ちゃんが「オーメン」、容ちゃんが「ハイ・アート」。「ハイ・アート」はDVDでは「プライベート・フォト」だけど、わたしと容ちゃんは映画館まで観に行った。レズビアンものの美しい映画だ。容ちゃんはポスターも買っていた。
「それで実際の所、結婚ってどうなのよ。」
食事が一段落した所で容ちゃんはいきなり云い出した。
「わたしは良かったって思ってるよ。」
「俺も。」
わたし達は即答した。
「何よ、二人して気持ち悪いなあ。順子なんか去勢された犬みたい。」
容ちゃんは口が悪い。わたしは声を荒げる。
「酷い。」
「だって。ぢゃあ、一日のうちで幸せな時間はいつ?」
容ちゃんもムキになる。
「それは夜、俊ちゃんが居る時だけど。」
「ほらね。一日の大半が不幸な時間なんぢゃない。」
「そんなことないよ。」
「まあまあ、二人とも。」
俊ちゃんが間に割って入る。
「俊一。そういう俊一はどうなのよ、一日のうちで幸せな時間はいつ?」
容ちゃんは噛みつく。俊ちゃんはちょっと困った顔になる。
「そりゃあ、家に居る間だけど。」
「ほら、俊一も一日の大半が不幸なんぢゃない。」
容ちゃんは勢いづく。
「でも、結婚してなかったら、その幸せな時間もなかったわけだから。」
俊ちゃんの言葉にわたしは感動した。
「ほんとね、俊ちゃん。そうよね。」
声を震わせて云うと、容ちゃんは呆れた顔になった。
「何よ、二人して気持ち悪いなあ。」
容ちゃんはおからのフライを口に放り込んだ。
わたし達の集まりはいつもハードだ。
ドレスコードにしても、例えば、宝塚の娘役ですみたいなことを云うと、おおーっと云うことになったりする。宝塚の娘役は女社会の中でより女を強調しなければいけない、しかもその地位は低い。少なくとも二重に抑圧された存在だからだ。
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