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4月
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独り芝居。独り芝居。やっぱり芝居だから動きがあった方がいいかなあ。髪に鋏を入れられながら、わたしは考える。
「姫カットにして下さい。」
「何と云うか、独創的ですね。」
美容師さんはわたしの横髪を持ち上げたり、顔に添わせたりしながら云う。独創的。そう云われるのには慣れている。独創的、不思議ちゃん、サイコさん。最近多いのは、アーティスティックな人という云い方だ。
「俊ちゃん、わたし。うん、今終わった。うん、一万二千円。えっ、高くないよ。ストレートパーマもかけたんだよ。」
俊ちゃんに電話しながら、ピーコックの本屋に入る。容ちゃんの独り芝居は、料理する女にすることにした。
結局、俊ちゃんとは三十分も話し込んでしまった。家に帰ると、夫は靴を磨いていた。わたしは思わず絶句した。靴を磨いているなんて想像もしていなかったのだ。
「ねえ、靴磨きはどっち?」
「なにが?」
「結婚する時決めたぢゃない。料理はわたし、洗濯は俊ちゃん。靴を磨くのはどっちの仕事? 妻がやるべきこと?」
声がおっきくなってしまった。俊ちゃんは吃驚している。
「えー、いいよ。これはほら、身だしなみだから。」
「身だしなみ?」
「そ。身だしなみ。それより、」
ふわり、抱きしめられた。
「髪、可愛くなったね。」
「ありがと。」
ザワついていた気持ちがすっと引いていく。俊ちゃんはわたしのおくすりだ。
「姫カットにして下さい。」
「何と云うか、独創的ですね。」
美容師さんはわたしの横髪を持ち上げたり、顔に添わせたりしながら云う。独創的。そう云われるのには慣れている。独創的、不思議ちゃん、サイコさん。最近多いのは、アーティスティックな人という云い方だ。
「俊ちゃん、わたし。うん、今終わった。うん、一万二千円。えっ、高くないよ。ストレートパーマもかけたんだよ。」
俊ちゃんに電話しながら、ピーコックの本屋に入る。容ちゃんの独り芝居は、料理する女にすることにした。
結局、俊ちゃんとは三十分も話し込んでしまった。家に帰ると、夫は靴を磨いていた。わたしは思わず絶句した。靴を磨いているなんて想像もしていなかったのだ。
「ねえ、靴磨きはどっち?」
「なにが?」
「結婚する時決めたぢゃない。料理はわたし、洗濯は俊ちゃん。靴を磨くのはどっちの仕事? 妻がやるべきこと?」
声がおっきくなってしまった。俊ちゃんは吃驚している。
「えー、いいよ。これはほら、身だしなみだから。」
「身だしなみ?」
「そ。身だしなみ。それより、」
ふわり、抱きしめられた。
「髪、可愛くなったね。」
「ありがと。」
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