リヒャルドの白い襯衣(シャツ)

カゲリ

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 結局僕は一限はサボタージュすることにした。遅刻が確定的になってしまった時点で、ラインハルトと別れ、保健室に向かったのだ。ラインハルトの僕への熱はまさに公然の秘密だけれど、それはそのままにしておいたほうがいい、と僕は判断したのだ。かわいいラインハルトのためにも。そしてもちろん<リヒャルト>のためにも。
 僕は初中終、保健室に行く。
 「ちょっと眩暈がするんです。」
 少し顔を伏せながら僕は何の抵抗もなく嘘を口にする。僕のこの嘘はたいてい通用する。僕の血の気のない顔色は少しの脚色を加えればいかにも脆弱な印象を与えるし、実際に僕の躰はたいして強くはないからだ。大抵の教師は僕を微塵も疑わない。
 でも、この男は少し違う。保健室にいる、この男。
 保健室には保健医・ハインリヒが居る。金髮は肩下まで柔らかに伸び、幾分女性的な顔立ち、長い肢体を白衣で包む。白衣の袖を肘下まで捲り上げている。そうして、顕わになった骨張った手首に茨を編んだようなブレスが幾重にも巻いている。
 「おはよう、リヒャルト。またサボりかい?」
 ハインリヒは美しく響く低音で微笑んだ。
 「おはよう、ハインリヒ。ちょっと休ませて呉れないか?」
 この教師は、僕を見ると決まって、薬品棚から綺麗な薬品壜を取り出す。
 「苦しそうだね、いい薬をあげようか、リヒャルト」
 この男のくれる薬は実際はあまりいい薬とは云えない。実際に眩暈があるときにもどちらかというと、浮遊感を増すだけの効果しかもらさない。
 僕はこうやって保健室に来るたびに、この男に少しずつ毒を盛られているのだろう、と思う。そしてそれはとても甘美な想像だ(でもあながち妄想でもないと思う。本当に医学的な薬品というのはもっと無骨な不透明の壜に入っているものだから)。だから何時も僕はこの男の呉れる<オクスリ>とやらを従順に飲み干してしまうのだ。
 男の手が僕の首筋に伸びる。タイを慣れた手つきで緩めながら男の唇が僕のはだけた首筋を吸う。
 「こうしたほうが楽だろう」
 僕にベッドに入るように指示する口調は教師の仮面をかぶったままだ。
 ハインリヒは仕切りを越えて、ベッドの脇にやってきた。僕の唇に唇を合わせてくる。
 「んっ、」
 ハインリヒの唇が僕の上を滑る。首筋を強く吸われた。
 「何するのさ。」
 「おやすみのキス。」
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