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第Ⅱ章
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「でも気付いたんだ。僕はアイツから生きることに必死で、何か大切なものを犠牲にしないと生きていけなかった。僕にとってそれは愛とか幸せであっただけなんだ」
僕は真っ直ぐ女の子を見る。彼女は相変わらず俯いているけど、それで構わない。
僕は君が憎い。憎いけど。でも。
「全部許すなんて綺麗事は言えない。君が僕の人生を滅茶苦茶にしたとこは確かだから。でも、僕は—————」
次に続く言葉が見つからなかった。何を言っても不正解な気がした。この世の全ての言葉を当てはめても、この小さな女の子は救えないのだと思った。
目の前の女の子はパッと顔を上げて僕を見る。
「うん。それでも私は。貴方に殺されるのが嫌じゃないよ」
女の子は眩しそうに目を細めながら、あの空の小さな傷を見つめる。それは時間の経過とともに、端の部分が掠れかかっていた。この空の傷はそのうち消えるだろう。でも僕らの傷はどうだろう。どうすれば僕のこの傷は跡形も無く消えて無くなるのだろう。どうすれば女の子は前のように明るく笑ってくれるのだろう。
分からない。だからもう会いたくなかったんだ。
「僕は君を殺さない」
女の子の心臓にナイフを突き刺すつもりで僕は言う。
僕は真っ直ぐ女の子を見る。彼女は相変わらず俯いているけど、それで構わない。
僕は君が憎い。憎いけど。でも。
「全部許すなんて綺麗事は言えない。君が僕の人生を滅茶苦茶にしたとこは確かだから。でも、僕は—————」
次に続く言葉が見つからなかった。何を言っても不正解な気がした。この世の全ての言葉を当てはめても、この小さな女の子は救えないのだと思った。
目の前の女の子はパッと顔を上げて僕を見る。
「うん。それでも私は。貴方に殺されるのが嫌じゃないよ」
女の子は眩しそうに目を細めながら、あの空の小さな傷を見つめる。それは時間の経過とともに、端の部分が掠れかかっていた。この空の傷はそのうち消えるだろう。でも僕らの傷はどうだろう。どうすれば僕のこの傷は跡形も無く消えて無くなるのだろう。どうすれば女の子は前のように明るく笑ってくれるのだろう。
分からない。だからもう会いたくなかったんだ。
「僕は君を殺さない」
女の子の心臓にナイフを突き刺すつもりで僕は言う。
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