沈黙の人形師

阿弖流為

文字の大きさ
上 下
3 / 5

めげない

しおりを挟む
それからの日々、エドワールは魂を削るように人形制作に没頭した。

イザベルの金色の髪、青い瞳、白い肌——すべてを再現するために、最高の木材と絹を取り寄せた。
すでに資金はほとんど尽きていたが、彼は迷わなかった。

これは、ただの人形ではない。
彼女の魂を映した、世界に一つの芸術だ。

手はひび割れ、夜ごと血が滲んだ。
しかし、痛みなど感じなかった。

ようやく形が出来上がる頃、イザベルが工房を訪れた。

「……まあ、すごい……」

彼女は人形を見つめ、そっと手を伸ばした。

「まだ完成じゃない。瞳がないんだ」

エドワールは慎重に細工したガラスの瞳を取り出した。
それはイザベルの瞳とまったく同じ、深い青を湛えていた。

「この瞳を入れたら……人形は、お前になる」

静かに、人形の顔に瞳をはめ込んだ瞬間——

イザベルは息を飲んだ。

「……生きているみたい……」

人形は、ただ静かに微笑んでいた。

エドワールは確信した。
これは、間違いなく自分の最高傑作だ。

彼の心は、久しく忘れていた喜びで満たされていた。

——だが、その幸福は長くは続かなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

水面

阿弖流為
現代文学
水面

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

退廃成人

阿弖流為
現代文学
結婚三年目。穏やかで平凡な夫婦生活。しかし、それは静かに崩れ始めていた——。無関心、嘘、逃避、そして破滅。夫はどこで道を踏み外したのか。愛と欺瞞の果てに待つ結末とは。これは、ある「夫」の破滅の物語。

ゴーストライター

月桂樹
現代文学
メディアに顔を出し、締め切り前は編集者の前まで作品を仕上げてみせる。小説家大野良和は間違えなく彼であった。 しかし突然の記者会見で彼は大野のゴーストライターであることを告白する。 当然だがその場にいる誰一人として理解できない。 関係者の集まる記者会見で彼は大野良和という小説家について語る。

処理中です...