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番外編 ジュリアス編9
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「はぁ……はぁ……、これで外の奴らは全部か……?」
視界が赤い。
動いている者がいないか確認しつつ、髪から返り血が滴るのを袖で拭い、勢いよく剣を振るって刃についた肉片や血を飛び散らせた。
左手には虫の息なのか既にこときれているのかわからない男を掴んで引きずりながら小屋の扉まで行き、勢いよくドアを蹴破る。
「マリーリ!! マリーリ、いるのか!??」
視界にすぐ飛び込んで来たのは隣国の騎士達。
そして彼らによって捕らえられているマリーリだった。
「……っ! うぅ……あ……ぅっ!!」
「おい、喋るな!!」
「マリーリ!?」
縛られ、その縄を引かれて苦悶の表情を浮かべるマリーリ。
その頬や身体は見るからに痛めつけられており、マリーリにそんな仕打ちをした奴らに対する怒りと、不本意ながらも彼女を巻き込み傷を負わせてしまった己の不甲斐なさで、俺の怒りが沸点に達するのはあっという間だった。
(よくも俺のマリーリを……!!! 許さん!)
だがマリーリを人質に取られ、どうやって彼女を救おうかと攻めあぐねる。
下手に前に出てこれ以上マリーリを傷つけるわけにはいかないが、このまま何もしないわけにもいかない。
俺はどうすればいいんだ、と脳内で葛藤していたときだった。
不意にマリーリと視線が合うと、先程まで絶望していたはずの彼女の瞳に闘志が灯っているののに気づく。
(あれはかつて俺を守るために悪ガキ達を蹴散らしたときと同じ瞳……!)
マリーリはこの状況でも諦めていない、俺を信じてくれている。
(そうだ、ここでマリーリを守れなくて何が騎士だ! マリーリの夫だ! 俺はマリーリを守るために、強くなるために、騎士になったのだ!)
マリーリの心意気に自分も答えようと奮起する。
俺を信じてくれたように俺もマリーリを信じようと、左手で持っていた男を勢いよく奴らに投げつけた。
そして、マリーリが機転を利かしたことで大きな隙が生まれ、マリーリを無事に確保し、マリーリに目を瞑るように指示したあと奴らを全て斬り伏せる。
絶命し、肉塊と化した奴らを隠すようにマリーリを抱きしめると、マリーリは返り血で真っ赤になった俺を嫌がることなく、強く抱きしめ返してきた。
「ジュリアス、ジュリアス、ジュリアス……っ」
「もう大丈夫だ。よく頑張ったな」
彼女が生きていた安堵で身体中が歓喜で震える。
そして俺はマリーリが生きているのを確かめるように、きつくきつく抱きしめた。
「ジュリアス、また助けてくれてありがとう」
涙を溢すマリーリの涙を拭う。
震えるマリーリの姿を見ながら、もうこれ以上彼女を傷つけさせるようなことはしないと、危ない目には合わせないと、俺は心の中で固く誓った。
「家に帰ろう。俺達の家に」
「えぇ、みんなが待ってる私達の家に」
再び抱きしめて口づける。
つい興奮して舌を差し込み、何度も角度を変えながら彼女の口腔内を蹂躙し、貪るように口づけを深くしていると背後から「あーあ、随分と派手にやらかしたなぁ」と呑気な声が聞こえた。
「……っ! 陛下!? ちょ、ジュリアス、離れて……っ!」
「おや、続けてていいぞ? 我は感動の再会を邪魔する気はないからな」
「だったらもう少し空気を読め。明らかに今は声をかけるタイミングではないだろう!」
俺が指摘すると、ギルベルトは悪びれる様子もなく笑ってみせたあと、「ふむふむ、隣国の生存者はいないようだな。お前達、すまないが後処理は任せた。我はこのアホを連れて帰らねばならないからな」と近衛騎士達に指示を出す。
(そういえば、肝心のグロウが見当たらなかったな)
すっかり忘れていたグロウの存在を思い出して部屋を見回すと、彼らしき物体が横たわっているのに気づく。
マリーリ以外全く眼中になかったのもあってギルベルトに言われてようやく今グロウの存在に気づいたのだが、相当手酷くやられたようで顔の原型を留めておらず、生きているのか死んでいるのか遠目で見て判断につかないほど酷いありさまだった。
「随分と酷くやられたな」
「どうせろくでもないことを考えて返り討ちにでもあったのだろう? はぁ、全く我が弟ながら呆れたもんだ。すまないな、マリーリ嬢」
「い、いえ! お気になさらないでください。この通り私は無事でしたので……っ」
緊張気味に答えながら、なぜかその場で飛んでみせるマリーリ。
どうやら元気であることをアピールしているようで、相変わらず可愛らしいな、と心の中で愛でる。
「はは、さすがジュリアスが骨抜きにされるだけはある。肝が据わっておるな。……さて、邪魔者はとっとと退散するとするか。詳細などは後日改めて。今日はこのまま家に帰っていいぞ。用があればまた連絡する」
近衛騎士達がグロウを馬車に乗せるとギルベルトはその馬車に乗り込み、王城へと引き返す。
俺達も家に帰ろう、とマリーリに遺体などを見せないように彼女の肩を抱いて目隠ししながらバルムンクの元まで戻り、一緒にバルムンクに乗った。
「ねぇ、ジュリアス」
「何だ?」
「もう、その、お仕事全部終わったの?」
帰路の道中、身体を預けて視線を揺らしながらおずおずと尋ねてくるマリーリ。
恐らくキューリスの件を指しているのだろう。
俺は不安にさせてしまったぶん安心させるように笑ってみせると、マリーリを背中から抱きしめ、頬を合わせた。
「あぁ、先程全て終わった。だからもう今日はずっとマリーリといられる。いや、今日だけでなく、これからずっと一緒だ。ギルベルトから許可も取っている」
「そうなの? よかった」
嬉しそうにはにかむマリーリが愛しくて、また口づけしようと顎に触れようとすると、なぜかグイッと押し返される。
まさか拒絶されるとは思わず、「……嫌なのか?」と放心するほどショックを受けると、マリーリは申し訳なさそうに縮こまりながら小さく口を開いた。
「えっと、その、さっきは興奮してて忘れてたけど、今お互いに血塗れだし、帰って綺麗になったら、その……したいかな……と思って」
最後は消え入りそうな声で話すマリーリ。
恥ずかしげに頬を染める彼女に、頭の端で彼女の言葉を整理しながら、欲が沸々と内側から沸き立つのが自分でもわかる。
「……なるほど、帰って綺麗になったらいいんだな?」
「え? うん、そう……っ、て、ちょ、ジュリアス!?」
俺が突然バルムンクの速度を上げると、マリーリはあまりに急なことでついていけずに目を白黒させていた。
その姿もまた可愛らしい。
イチャイチャしながらゆっくりと帰ろうと思ったが、予定変更だ。
マリーリがそう言うのなら、早く帰るにこしたことはない。
(帰ってすぐに一緒に風呂に入って身体を洗って清めてから、今までのぶんたっぷりと甘やかしてイチャイチャしてやるぞ……!!)
その後急いで家に帰るやいなや使用人達とマリーリとの感動の再会もそこそこに、すぐに風呂を沸かしてもらうと、早速一緒に入って中でマリーリを洗い清める。
そして浴槽では隙間なく抱きしめ、何度も息が上がるほど口づけ、身体中を愛撫し、たっぷりと愛したところでマリーリの意識が飛んでしまい、それを知ったミヤに俺は懇々と説教されるのだった。
視界が赤い。
動いている者がいないか確認しつつ、髪から返り血が滴るのを袖で拭い、勢いよく剣を振るって刃についた肉片や血を飛び散らせた。
左手には虫の息なのか既にこときれているのかわからない男を掴んで引きずりながら小屋の扉まで行き、勢いよくドアを蹴破る。
「マリーリ!! マリーリ、いるのか!??」
視界にすぐ飛び込んで来たのは隣国の騎士達。
そして彼らによって捕らえられているマリーリだった。
「……っ! うぅ……あ……ぅっ!!」
「おい、喋るな!!」
「マリーリ!?」
縛られ、その縄を引かれて苦悶の表情を浮かべるマリーリ。
その頬や身体は見るからに痛めつけられており、マリーリにそんな仕打ちをした奴らに対する怒りと、不本意ながらも彼女を巻き込み傷を負わせてしまった己の不甲斐なさで、俺の怒りが沸点に達するのはあっという間だった。
(よくも俺のマリーリを……!!! 許さん!)
だがマリーリを人質に取られ、どうやって彼女を救おうかと攻めあぐねる。
下手に前に出てこれ以上マリーリを傷つけるわけにはいかないが、このまま何もしないわけにもいかない。
俺はどうすればいいんだ、と脳内で葛藤していたときだった。
不意にマリーリと視線が合うと、先程まで絶望していたはずの彼女の瞳に闘志が灯っているののに気づく。
(あれはかつて俺を守るために悪ガキ達を蹴散らしたときと同じ瞳……!)
マリーリはこの状況でも諦めていない、俺を信じてくれている。
(そうだ、ここでマリーリを守れなくて何が騎士だ! マリーリの夫だ! 俺はマリーリを守るために、強くなるために、騎士になったのだ!)
マリーリの心意気に自分も答えようと奮起する。
俺を信じてくれたように俺もマリーリを信じようと、左手で持っていた男を勢いよく奴らに投げつけた。
そして、マリーリが機転を利かしたことで大きな隙が生まれ、マリーリを無事に確保し、マリーリに目を瞑るように指示したあと奴らを全て斬り伏せる。
絶命し、肉塊と化した奴らを隠すようにマリーリを抱きしめると、マリーリは返り血で真っ赤になった俺を嫌がることなく、強く抱きしめ返してきた。
「ジュリアス、ジュリアス、ジュリアス……っ」
「もう大丈夫だ。よく頑張ったな」
彼女が生きていた安堵で身体中が歓喜で震える。
そして俺はマリーリが生きているのを確かめるように、きつくきつく抱きしめた。
「ジュリアス、また助けてくれてありがとう」
涙を溢すマリーリの涙を拭う。
震えるマリーリの姿を見ながら、もうこれ以上彼女を傷つけさせるようなことはしないと、危ない目には合わせないと、俺は心の中で固く誓った。
「家に帰ろう。俺達の家に」
「えぇ、みんなが待ってる私達の家に」
再び抱きしめて口づける。
つい興奮して舌を差し込み、何度も角度を変えながら彼女の口腔内を蹂躙し、貪るように口づけを深くしていると背後から「あーあ、随分と派手にやらかしたなぁ」と呑気な声が聞こえた。
「……っ! 陛下!? ちょ、ジュリアス、離れて……っ!」
「おや、続けてていいぞ? 我は感動の再会を邪魔する気はないからな」
「だったらもう少し空気を読め。明らかに今は声をかけるタイミングではないだろう!」
俺が指摘すると、ギルベルトは悪びれる様子もなく笑ってみせたあと、「ふむふむ、隣国の生存者はいないようだな。お前達、すまないが後処理は任せた。我はこのアホを連れて帰らねばならないからな」と近衛騎士達に指示を出す。
(そういえば、肝心のグロウが見当たらなかったな)
すっかり忘れていたグロウの存在を思い出して部屋を見回すと、彼らしき物体が横たわっているのに気づく。
マリーリ以外全く眼中になかったのもあってギルベルトに言われてようやく今グロウの存在に気づいたのだが、相当手酷くやられたようで顔の原型を留めておらず、生きているのか死んでいるのか遠目で見て判断につかないほど酷いありさまだった。
「随分と酷くやられたな」
「どうせろくでもないことを考えて返り討ちにでもあったのだろう? はぁ、全く我が弟ながら呆れたもんだ。すまないな、マリーリ嬢」
「い、いえ! お気になさらないでください。この通り私は無事でしたので……っ」
緊張気味に答えながら、なぜかその場で飛んでみせるマリーリ。
どうやら元気であることをアピールしているようで、相変わらず可愛らしいな、と心の中で愛でる。
「はは、さすがジュリアスが骨抜きにされるだけはある。肝が据わっておるな。……さて、邪魔者はとっとと退散するとするか。詳細などは後日改めて。今日はこのまま家に帰っていいぞ。用があればまた連絡する」
近衛騎士達がグロウを馬車に乗せるとギルベルトはその馬車に乗り込み、王城へと引き返す。
俺達も家に帰ろう、とマリーリに遺体などを見せないように彼女の肩を抱いて目隠ししながらバルムンクの元まで戻り、一緒にバルムンクに乗った。
「ねぇ、ジュリアス」
「何だ?」
「もう、その、お仕事全部終わったの?」
帰路の道中、身体を預けて視線を揺らしながらおずおずと尋ねてくるマリーリ。
恐らくキューリスの件を指しているのだろう。
俺は不安にさせてしまったぶん安心させるように笑ってみせると、マリーリを背中から抱きしめ、頬を合わせた。
「あぁ、先程全て終わった。だからもう今日はずっとマリーリといられる。いや、今日だけでなく、これからずっと一緒だ。ギルベルトから許可も取っている」
「そうなの? よかった」
嬉しそうにはにかむマリーリが愛しくて、また口づけしようと顎に触れようとすると、なぜかグイッと押し返される。
まさか拒絶されるとは思わず、「……嫌なのか?」と放心するほどショックを受けると、マリーリは申し訳なさそうに縮こまりながら小さく口を開いた。
「えっと、その、さっきは興奮してて忘れてたけど、今お互いに血塗れだし、帰って綺麗になったら、その……したいかな……と思って」
最後は消え入りそうな声で話すマリーリ。
恥ずかしげに頬を染める彼女に、頭の端で彼女の言葉を整理しながら、欲が沸々と内側から沸き立つのが自分でもわかる。
「……なるほど、帰って綺麗になったらいいんだな?」
「え? うん、そう……っ、て、ちょ、ジュリアス!?」
俺が突然バルムンクの速度を上げると、マリーリはあまりに急なことでついていけずに目を白黒させていた。
その姿もまた可愛らしい。
イチャイチャしながらゆっくりと帰ろうと思ったが、予定変更だ。
マリーリがそう言うのなら、早く帰るにこしたことはない。
(帰ってすぐに一緒に風呂に入って身体を洗って清めてから、今までのぶんたっぷりと甘やかしてイチャイチャしてやるぞ……!!)
その後急いで家に帰るやいなや使用人達とマリーリとの感動の再会もそこそこに、すぐに風呂を沸かしてもらうと、早速一緒に入って中でマリーリを洗い清める。
そして浴槽では隙間なく抱きしめ、何度も息が上がるほど口づけ、身体中を愛撫し、たっぷりと愛したところでマリーリの意識が飛んでしまい、それを知ったミヤに俺は懇々と説教されるのだった。
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