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番外編 結婚式後
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「来るなとあれほど言ったのに」
「私もまさか陛下が来るとは思わなかったけど。というか、ミヤと陛下ってどういう関係なの? 接点あったかしら?」
「……それはミヤに直接聞いてくれ」
結婚式も無事に終わり、盛大に祝ってもらった二人。
マリーリは連日の祝いの宴に満身創痍で、湯浴みを済ませるやいなやベッドにぐだっと突っ伏し、マリーリのあとに湯浴みを済ませたジュリアスも、先程までの礼服からチュニックに着替えてラフな格好になり、マリーリのいるベッドへとやってくる。
そしてジュリアスはマリーリの髪を撫でつけると、そのまま彼女の隣に寝転がり、抱き込むように身体を包み込んだ。
「今日はお疲れさま、ジュリアス」
「あぁ、お疲れさま。俺の愛しい奥様」
頬に口付けられたあと耳元で囁かれて、思わず「う」と唸って耳を押さえるマリーリ。
ジュリアスの声はいつもより甘く色気があり、囁かれただけできゅんと胸が疼いてしまう。
「どうした?」
「いえ、別に、……何でもない」
「なんだ、ちゃんと言ってみろ。夫婦の間に隠し事はなしだぞ」
「それ、ジュリアスが言う?」
まさかジュリアスがそんなことを言うと思わず、マリーリが咎めるようにキッと眦を吊り上げるとジュリアスの視線が泳ぎ始める。
「……あの件のことならまだ結婚前だったし、な」
「何それ、ズルい。私、あのときは色々と不安だったのに……っ」
あのとき、またキューリスに奪われたらと思うと不安で仕方なかったことを思い出す。
薬を盛られて不安が増していたとはいえ、ジュリアスまでいなくなってしまったらと思うと、つらくて苦しく、今でもあれが本当で今は都合のいい夢を見ているのでは、と思うことさえあるほど当時のことは今でもマリーリにとってトラウマだった。
マリーリがあからさまに気落ちしているのに気づいて、ジュリアスは彼女の頬を両手で覆って額を合わせる。
不安そうに揺れるマリーリの瞳を見つめながら、ジュリアスは唇が触れそうなくらい近くで口を開いた。
「すまない、悪い冗談だった。あのときは隠さねばならなかったとはいえ、マリーリを傷つけてしまったのは悪かった。だから、そんな顔をしないでくれ」
「ジュリアスのせいでしょ」
「そうだな、俺のせいだ。悪い。もう言わない」
いつの間にか形勢逆転し、ジュリアスが申し訳なさそうに眉を下げる。
そしてマリーリを力強く抱きしめて髪に口づけると「お願いだから機嫌を直してくれ」と切実な声で訴えた。
「じゃあ、もう意地悪言わないで」
「わかった」
「夫婦の間で隠し事はなし」
「あぁ、約束する」
「それと……今まで不安にさせたぶん、いっぱい愛して……ほしいわ……」
最後は恥ずかしくなって消え入るように言えば、ジュリアスは一瞬面食らった表情をしたあとにふっと口元を緩める。
そして、「もちろんだ。愛してる、マリーリ」と囁くと、そのまま唇を重ねられた。
「もう誰にも渡さないし、俺だけのものだ。俺は一生マリーリを愛し、尽くすと誓おう」
「絶対だからね? 約束よ」
「あぁ、命にかけて」
見つめ合ったのち、お互い引き寄せられるように口づけし、チュッチュッと啄むように唇を重ねているとだんだんと上がる息。
ジュリアスが上手すぎるのかマリーリが下手すぎるのかはわからないが、未だに慣れない口づけにマリーリが四苦八苦していると、ジュリアスはクスクスと笑い出した。
「そんなに目を白黒させなくていい。ゆっくり慣れてくれればいい」
「むぅ。ジュリアスのその余裕、ムカつく」
自分はこんなにもいっぱいいっぱいだというのに、ジュリアスは上手だし余裕もあるし、とマリーリはなんだかだんだん腹が立ってくる。
それと同時に、マリーリはジュリアス以外キスの経験がないというのにジュリアスは手練れなのではないかと考えて途端にまたギュッと胸が締めつけられ、他の女性とキスしているジュリアスを妄想して勝手に苦しくなった。
「マリーリ?」
「ジュリアスは、他の人ともこう言った経験があるかもしれないけど、私は誰ともしたことないんだからしょうがないじゃない……っ」
「何を拗ねているんだ。別に咎めているわけじゃないし、俺としてはマリーリの初めての相手というのは嬉しい。それに誤解しているようだが、俺もこう言ったことに慣れているわけではないし、ただマリーリとしたいことをするのに夢中になってるだけだ」
「……本当に?」
「さっき誓っただろう? 本当さ。マリーリが好きだからこそ、こうして何度も口づけたくなるし、それ以上のこともしたくなるんだ」
「それ、以上……?」
そういえば、結婚式のあとに子作りの方法を教えてもらう約束をしていたことを思い出す。
結婚式のあとといえばタイミングとしては今だ。
「そういえば、約束」
「うん?」
「ほら、結婚式のあと子供の作り方教えてくれるって」
「あぁ、そうだったな。今から実践しようか」
ジュリアスが上機嫌でにっこりと微笑む。
そしてそのまま齧りつくように口づけられるとマリーリはわけもわからぬまま、あれよあれよと押し倒されて服を脱がされ、今までのぶんたっぷりと愛されたのち、翌日はぐったりと動けなくなったのだった。
「私もまさか陛下が来るとは思わなかったけど。というか、ミヤと陛下ってどういう関係なの? 接点あったかしら?」
「……それはミヤに直接聞いてくれ」
結婚式も無事に終わり、盛大に祝ってもらった二人。
マリーリは連日の祝いの宴に満身創痍で、湯浴みを済ませるやいなやベッドにぐだっと突っ伏し、マリーリのあとに湯浴みを済ませたジュリアスも、先程までの礼服からチュニックに着替えてラフな格好になり、マリーリのいるベッドへとやってくる。
そしてジュリアスはマリーリの髪を撫でつけると、そのまま彼女の隣に寝転がり、抱き込むように身体を包み込んだ。
「今日はお疲れさま、ジュリアス」
「あぁ、お疲れさま。俺の愛しい奥様」
頬に口付けられたあと耳元で囁かれて、思わず「う」と唸って耳を押さえるマリーリ。
ジュリアスの声はいつもより甘く色気があり、囁かれただけできゅんと胸が疼いてしまう。
「どうした?」
「いえ、別に、……何でもない」
「なんだ、ちゃんと言ってみろ。夫婦の間に隠し事はなしだぞ」
「それ、ジュリアスが言う?」
まさかジュリアスがそんなことを言うと思わず、マリーリが咎めるようにキッと眦を吊り上げるとジュリアスの視線が泳ぎ始める。
「……あの件のことならまだ結婚前だったし、な」
「何それ、ズルい。私、あのときは色々と不安だったのに……っ」
あのとき、またキューリスに奪われたらと思うと不安で仕方なかったことを思い出す。
薬を盛られて不安が増していたとはいえ、ジュリアスまでいなくなってしまったらと思うと、つらくて苦しく、今でもあれが本当で今は都合のいい夢を見ているのでは、と思うことさえあるほど当時のことは今でもマリーリにとってトラウマだった。
マリーリがあからさまに気落ちしているのに気づいて、ジュリアスは彼女の頬を両手で覆って額を合わせる。
不安そうに揺れるマリーリの瞳を見つめながら、ジュリアスは唇が触れそうなくらい近くで口を開いた。
「すまない、悪い冗談だった。あのときは隠さねばならなかったとはいえ、マリーリを傷つけてしまったのは悪かった。だから、そんな顔をしないでくれ」
「ジュリアスのせいでしょ」
「そうだな、俺のせいだ。悪い。もう言わない」
いつの間にか形勢逆転し、ジュリアスが申し訳なさそうに眉を下げる。
そしてマリーリを力強く抱きしめて髪に口づけると「お願いだから機嫌を直してくれ」と切実な声で訴えた。
「じゃあ、もう意地悪言わないで」
「わかった」
「夫婦の間で隠し事はなし」
「あぁ、約束する」
「それと……今まで不安にさせたぶん、いっぱい愛して……ほしいわ……」
最後は恥ずかしくなって消え入るように言えば、ジュリアスは一瞬面食らった表情をしたあとにふっと口元を緩める。
そして、「もちろんだ。愛してる、マリーリ」と囁くと、そのまま唇を重ねられた。
「もう誰にも渡さないし、俺だけのものだ。俺は一生マリーリを愛し、尽くすと誓おう」
「絶対だからね? 約束よ」
「あぁ、命にかけて」
見つめ合ったのち、お互い引き寄せられるように口づけし、チュッチュッと啄むように唇を重ねているとだんだんと上がる息。
ジュリアスが上手すぎるのかマリーリが下手すぎるのかはわからないが、未だに慣れない口づけにマリーリが四苦八苦していると、ジュリアスはクスクスと笑い出した。
「そんなに目を白黒させなくていい。ゆっくり慣れてくれればいい」
「むぅ。ジュリアスのその余裕、ムカつく」
自分はこんなにもいっぱいいっぱいだというのに、ジュリアスは上手だし余裕もあるし、とマリーリはなんだかだんだん腹が立ってくる。
それと同時に、マリーリはジュリアス以外キスの経験がないというのにジュリアスは手練れなのではないかと考えて途端にまたギュッと胸が締めつけられ、他の女性とキスしているジュリアスを妄想して勝手に苦しくなった。
「マリーリ?」
「ジュリアスは、他の人ともこう言った経験があるかもしれないけど、私は誰ともしたことないんだからしょうがないじゃない……っ」
「何を拗ねているんだ。別に咎めているわけじゃないし、俺としてはマリーリの初めての相手というのは嬉しい。それに誤解しているようだが、俺もこう言ったことに慣れているわけではないし、ただマリーリとしたいことをするのに夢中になってるだけだ」
「……本当に?」
「さっき誓っただろう? 本当さ。マリーリが好きだからこそ、こうして何度も口づけたくなるし、それ以上のこともしたくなるんだ」
「それ、以上……?」
そういえば、結婚式のあとに子作りの方法を教えてもらう約束をしていたことを思い出す。
結婚式のあとといえばタイミングとしては今だ。
「そういえば、約束」
「うん?」
「ほら、結婚式のあと子供の作り方教えてくれるって」
「あぁ、そうだったな。今から実践しようか」
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そしてそのまま齧りつくように口づけられるとマリーリはわけもわからぬまま、あれよあれよと押し倒されて服を脱がされ、今までのぶんたっぷりと愛されたのち、翌日はぐったりと動けなくなったのだった。
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