婚約者が親友と浮気したので婚約破棄したら、なぜか幼馴染の騎士からプロポーズされました

鳥柄ささみ

文字の大きさ
上 下
23 / 83

23 いいお湯だった

しおりを挟む
「はぁ、いいお湯だった」
「うふふ、マリーリさまとのお風呂楽しかったです~」
「私も。久々にミヤと入れて楽しかったわ」

 ドレッサーの前でミヤに髪を梳いてもらいながら、お互いにキャッキャと盛り上がる。
 ブレアの地の食材をふんだんに使った夕食を終え、先に風呂を譲ってもらってマリーリはジュリアスより先にこの家の風呂を体験したのだが、泳げるほど広い浴槽に思わず感嘆した。
 さらに浴室や浴槽は大理石でできていて、シンプルに美しく、ミヤも掃除がしやすい! 綺麗で素敵! と大喜びで、マリーリも嬉しくなるほどのはしゃぎようだった。
 それからお互いを洗いっこしたり、普段話さないようなことを話したり、実家だったら両親から咎められるようなことができ、マリーリも久々に童心に返ったようで楽しかった。
 ちなみにミヤの身体は以前よりもさらにパワーアップしたグラマラスさで、まさにボンキュッボンを体現していて、あまりの美しさにマリーリはまた見惚れてしまうほどだった。

「本当、ミヤみたいに出るとこ出て引っ込むとこ引っ込む身体になりたいわ」
「何をおっしゃいます~! マリーリさまはどこをとってもちょうどいい身体つきではないですか~! 美乳、美尻に薄い腹部。肌もなめし革のようにきめ細やかに引き締まってて、吸いつくほどにハリがあって、水も弾いて羨ましいです~」
「そんなに褒めても何も出ないわよ?」
「いいんですよぉ。あ、でもまたお風呂一緒に入りたいな?」
「ふふ、またそのうちね」
「はぁ~い!」

 ミヤは上機嫌で髪を梳きながら返事をする。
 いっそこのままミヤと寝てしまってもいいかな、と思うが、それはそれで他の使用人に示しがつかないかもと考え直した。
 ここではマリーリが主人であるため、自分で判断し、切り盛りしなければいけない。
 自由度が高いぶん、気ままに新生活を楽しみたいという気持ちはあれど、一応ここの主人として分別は持たねばならないと自戒した。

「そういえば、明日は早速親睦会をなさるんですよね?」
「えぇ、ついでに新しい子達を雇おうと思って」
「え、そうなんです?」
「えぇ、数人新たに雇用しようと思ってるから来たら仲良くしてあげてね」
「んー、それなりに善処はします~」
「もう、そういうとこは素直なんだから」

 ミヤは生い立ちが生い立ちだけに心を開いている人物が少ない。
 そのため、今回新居に連れてきたのも比較的ミヤと交流のあるメンバーだった。
 ミヤ優先で依怙贔屓だと言われてしまうだろうが、誰よりもよく自分を理解して何でも話し合えるミヤが一番なのはマリーリにとって仕方のないことである。

「お召し物どうしましょうかね」
「うーん、そもそも普段あまり社交界に出ないから持ってきたコルセット入るかしら」
「そこはもうギュウギュウに絞りますからご安心ください」
「うぅ、手加減してよ?」
「ふふふ」

 怪しい笑みを浮かべるミヤに、実際明日は何を着ようかと悩む。
 服は色々と持ってきたつもりだが、初めて挨拶するとなると明るい色味のほうがいいだろうか、と持っているドレスを思い出していく。

「ミヤは明るい色ならどれがいいと思う?」
「そうですねぇ。明るい色味ですと……オレンジや黄色辺りでしょうか~? マリーリさまの元気な部分が表現できるかと」
「元気は表現しなくていいのよ。こちらでは淑女として過ごすのだから」
「えー、マリーリさまがぁ? 淑女ぉ? それはさすがに無理がありますよ~」
「酷い言われようね。私に喧嘩を売ってるの?」
「とんでもないですー。うふふ」

 絶対からかってるな、と思いながらも本当にどうしようかと悩む。
 こんなことになるなら先にいくつかドレスを新調しておけばよかった、と今更ながら夜会に出なかったことによる弊害をひしひしと感じた。

 ーーコンコン……

 ちょっと控えめなノックが聞こえて、首を傾げる。
 そろそろ寝る時間だというのに、一体誰だろうかと思いながらマリーリは「はい」と返事をした。

「マリーリ、起きているか? 俺だが」
「ジュリアス?」
「あぁ、今いいだろうか?」

 まさかジュリアスの訪問とは思わず、ミヤと目を見合う。

「ジュリアスだって、どうしましょう」
「どうしましょう、って待たせていないで早く出てください」
「え、私が?」
「だってこの部屋マリーリさまのお部屋ですし」

 こういうときって使用人が開けるものではないもかしら、と思いながらも言われるがままにドアを開ける。
 するとそこには風呂上がりなのか、多少髪が湿り、火照って頬が紅潮したジュリアスがいた。

「どうしたの、こんな時間に。何かご用事?」
「あぁ、ちょっと。申し訳ないが、部屋に入ってもいいだろうか」
「え? えぇ、構わないけど」

 一体何の用事だろうか、とマリーリは首を傾げながらジュリアスを迎え入れる。
 すると、「では、私はこれで。おやすみなさいませ、マリーリさま~」と言うと、ミヤはウインクしたあとそそくさと出て行ってしまった。

「え、ちょ、ミヤ!?」

 相変わらずこういうときの空気を読むのに長けているが、マリーリからしたらまさか突然こんな夜更けにジュリアスと二人きりにされると思わず、動揺してあたふたしてしまう。
 でも、ミヤは帰ってくる気配もなく、ジュリアスも勝手にベッドの上に座って寛ぐ姿に、マリーリは諦めたように「はぁ」と小さく溜め息をつくのだった。
しおりを挟む
感想 55

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

処理中です...