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5章【外交編・モットー国】
23 サプライズプレゼント
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「ヒューベルトさん!お元気になって何よりです!!」
「お時間いただいてしまって申し訳ありませんでした。ですが、だいぶ調子もいいですので、明日からどうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ!ささ、今日は出立パーティーですから、楽しんで行ってくださいね」
久々に会ったヒューベルトは片腕さえなかったものの、以前会ったときとは比べものにならないほど元気になっていて、普段と同じような顔色に戻っていてホッとする。
「どうもありがとうございます。わざわざご用意いただいてすみません」
「いえいえ。今後の旅路はどうなるかわからないことが多いですから、今日はゆっくり英気を養うためにも楽しんでください」
「ありがとうございます。そうさせていただきます」
早朝から部屋の飾りつけやら料理やら、メリッサと手分けして用意したからか、テキパキと用意することができて、我ながら会心のできである。
メリッサも若いのに文句も言わずによく動いてくれたおかげで、とても準備が捗ったのも大きいだろう。
料理に飾りつけ、すべて思いのほか早くできて時間が余ったぶん、多めに料理を用意できたくらいだ。
ちなみに、料理はメリッサの希望に合わせて、各地の料理を用意してみた。
ペンテレア、コルジール、カジェ、モットー、と今まで食べたものの中で私が美味しいと思ったものを厳選して作ってみたのだが、つまみ食いをするメリッサも美味しい!と喜んでくれたくらいだからそれなりには仕上がったのだと自負している。
「随分とたくさんお料理があるんですね」
「パーティーですから。今日一日好きなときに好きなぶんだけ食べられるように用意してみました。あ、一応アレルギーになりそうなものは避けましたが、もし具合が悪いなどがあったらすぐに言ってくださいね」
「何から何までありがとうございます。……え、っと……メリッサちゃんだっけ?キミもどうもありがとう」
「〈メリッサ、ヒューベルトさんがありがとうだって〉」
「〈……ん。どういたしまして〉」
私が通訳をすると、顔を赤らめながらモゴモゴと話すメリッサ。ヒューベルトが顔を覗き込むと、サッと私の後ろに隠れてしまった。
「……嫌われてしまいましたかね?」
「そんなことはないと思いますよ。メリッサはちょっと人見知りがあるので。今後この3人で行動することになるから、できればお互い話せるようになればいいんですけど……」
「わかりました。なるべくモットー語を覚えるようにしますね」
「そうしていただけるとありがたいです」
振り返ってメリッサを見ると、私を見たあと俯く。もじもじと何か言いたそうにしているが、ここではどうにも言いにくそうだった。
「適当に寛いでいてください。師匠もあとで来るとは思いますけど、言葉が通じないとお話はなかなか難しいですよね。着替えたらすぐ戻ってきますから、ちょっと待っててください」
「はい、わかりました。お待ちしております」
きっとヒューベルトの性格上、寛げと言っても寛がないだろうな、と思いつつ、先程から何やらもじもじし続けるメリッサを引っ張って私の自室へと連れて行く。
「〈どうしたの?ヒューベルトさんと何かあった?……言いにくいなら言わなくてもいいけど〉」
「〈別に、そういうわけじゃないけど……。ちょっと緊張する〉」
「〈緊張?明日から一緒に行動しなきゃだけど、大丈夫そう?〉」
目線を合わせて話しかけると、やはりなんだかもぞもぞとしている。言いたいような、言いたくないような、そんな感じだった。
「〈ステラ、からかわない?〉」
「〈からかわないわよ。言いたいことあるなら教えてちょうだい?〉」
「〈……ヒューベルトさんって、ちょっと……カッコいいね〉」
顔を赤らめて話すメリッサ。
(なんなんだ、この可愛い生き物は)
なるほど、先程からもじもじとしていたのは照れて恥ずかしがっていたからかと合点がいって、思わずニヤけそうになる。だが、メリッサの前でニヤけ顔をするのもあまりよくないと口元を引き結んだ。
「〈カッコいいわよね、うんうん。わかる!なんかこうシュッとしてて清潔感があって顔も整ってるし、優しいし、素敵よね〉」
「〈ステラもそう思う?〉」
「〈えぇ、思うわ〉」
「〈そう。……よかった〉」
これが初恋なのかただの憧れなのかはわからないが、こういう甘酸っぱい気持ちを抱くことは悪いことではないのだと、彼女の気持ちを肯定すると、安堵した表情になる。
きっと、自分が初めて抱く感情に不安だったのだろう。
「〈そう!メリッサに1つプレゼントがあるの!〉」
「〈プレゼント?〉」
「〈えぇ、サプライズプレゼントってやつ。いつも色々とお世話になったから〉」
じゃじゃーん、と出したのはドレスだった。古着をリメイクしたものだが、せっかくパーティーをするならと、事前に師匠にお願いして市場で出回ったドレスを購入してもらい、夜中せっせと針仕事をしていたのだ。
「〈一応、多少サイズは合わせたつもりだけど、どうかな?〉」
飾り付けするものがなかったぶん、刺繍には力を入れたのだが、お気に召してもらえただろうか、とメリッサの顔を覗き込む。
すると、ぷいっと顔をそらされてしまった。
「〈メリッサ?〉」
「〈……ずるい〉」
「〈え?〉」
「〈……私は何も用意してないのに〉」
「〈メリッサ……〉」
よく見れば、彼女の目には大粒の涙が溜まっていた。その顔が見られたくなくて顔をそらしたのだろう。そして、自分は何も用意できなかったということを恥じたようだった。
「〈私を拾ってくれたことに対するお礼なのだから気にしないで。メリッサは私の命の恩人なのだから。……で、気にいってくれた?〉」
「〈……ん。ありがとう〉」
「〈どういたしまして。ささ、早速着替えちゃいましょう?ヒューベルトさんが待ってる〉」
「〈ん。わかった〉」
そして、おずおずと服を脱ぎ始めるメリッサ。私は彼女にドレスを着せ、髪を整えてあげるのだった。
「お時間いただいてしまって申し訳ありませんでした。ですが、だいぶ調子もいいですので、明日からどうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ!ささ、今日は出立パーティーですから、楽しんで行ってくださいね」
久々に会ったヒューベルトは片腕さえなかったものの、以前会ったときとは比べものにならないほど元気になっていて、普段と同じような顔色に戻っていてホッとする。
「どうもありがとうございます。わざわざご用意いただいてすみません」
「いえいえ。今後の旅路はどうなるかわからないことが多いですから、今日はゆっくり英気を養うためにも楽しんでください」
「ありがとうございます。そうさせていただきます」
早朝から部屋の飾りつけやら料理やら、メリッサと手分けして用意したからか、テキパキと用意することができて、我ながら会心のできである。
メリッサも若いのに文句も言わずによく動いてくれたおかげで、とても準備が捗ったのも大きいだろう。
料理に飾りつけ、すべて思いのほか早くできて時間が余ったぶん、多めに料理を用意できたくらいだ。
ちなみに、料理はメリッサの希望に合わせて、各地の料理を用意してみた。
ペンテレア、コルジール、カジェ、モットー、と今まで食べたものの中で私が美味しいと思ったものを厳選して作ってみたのだが、つまみ食いをするメリッサも美味しい!と喜んでくれたくらいだからそれなりには仕上がったのだと自負している。
「随分とたくさんお料理があるんですね」
「パーティーですから。今日一日好きなときに好きなぶんだけ食べられるように用意してみました。あ、一応アレルギーになりそうなものは避けましたが、もし具合が悪いなどがあったらすぐに言ってくださいね」
「何から何までありがとうございます。……え、っと……メリッサちゃんだっけ?キミもどうもありがとう」
「〈メリッサ、ヒューベルトさんがありがとうだって〉」
「〈……ん。どういたしまして〉」
私が通訳をすると、顔を赤らめながらモゴモゴと話すメリッサ。ヒューベルトが顔を覗き込むと、サッと私の後ろに隠れてしまった。
「……嫌われてしまいましたかね?」
「そんなことはないと思いますよ。メリッサはちょっと人見知りがあるので。今後この3人で行動することになるから、できればお互い話せるようになればいいんですけど……」
「わかりました。なるべくモットー語を覚えるようにしますね」
「そうしていただけるとありがたいです」
振り返ってメリッサを見ると、私を見たあと俯く。もじもじと何か言いたそうにしているが、ここではどうにも言いにくそうだった。
「適当に寛いでいてください。師匠もあとで来るとは思いますけど、言葉が通じないとお話はなかなか難しいですよね。着替えたらすぐ戻ってきますから、ちょっと待っててください」
「はい、わかりました。お待ちしております」
きっとヒューベルトの性格上、寛げと言っても寛がないだろうな、と思いつつ、先程から何やらもじもじし続けるメリッサを引っ張って私の自室へと連れて行く。
「〈どうしたの?ヒューベルトさんと何かあった?……言いにくいなら言わなくてもいいけど〉」
「〈別に、そういうわけじゃないけど……。ちょっと緊張する〉」
「〈緊張?明日から一緒に行動しなきゃだけど、大丈夫そう?〉」
目線を合わせて話しかけると、やはりなんだかもぞもぞとしている。言いたいような、言いたくないような、そんな感じだった。
「〈ステラ、からかわない?〉」
「〈からかわないわよ。言いたいことあるなら教えてちょうだい?〉」
「〈……ヒューベルトさんって、ちょっと……カッコいいね〉」
顔を赤らめて話すメリッサ。
(なんなんだ、この可愛い生き物は)
なるほど、先程からもじもじとしていたのは照れて恥ずかしがっていたからかと合点がいって、思わずニヤけそうになる。だが、メリッサの前でニヤけ顔をするのもあまりよくないと口元を引き結んだ。
「〈カッコいいわよね、うんうん。わかる!なんかこうシュッとしてて清潔感があって顔も整ってるし、優しいし、素敵よね〉」
「〈ステラもそう思う?〉」
「〈えぇ、思うわ〉」
「〈そう。……よかった〉」
これが初恋なのかただの憧れなのかはわからないが、こういう甘酸っぱい気持ちを抱くことは悪いことではないのだと、彼女の気持ちを肯定すると、安堵した表情になる。
きっと、自分が初めて抱く感情に不安だったのだろう。
「〈そう!メリッサに1つプレゼントがあるの!〉」
「〈プレゼント?〉」
「〈えぇ、サプライズプレゼントってやつ。いつも色々とお世話になったから〉」
じゃじゃーん、と出したのはドレスだった。古着をリメイクしたものだが、せっかくパーティーをするならと、事前に師匠にお願いして市場で出回ったドレスを購入してもらい、夜中せっせと針仕事をしていたのだ。
「〈一応、多少サイズは合わせたつもりだけど、どうかな?〉」
飾り付けするものがなかったぶん、刺繍には力を入れたのだが、お気に召してもらえただろうか、とメリッサの顔を覗き込む。
すると、ぷいっと顔をそらされてしまった。
「〈メリッサ?〉」
「〈……ずるい〉」
「〈え?〉」
「〈……私は何も用意してないのに〉」
「〈メリッサ……〉」
よく見れば、彼女の目には大粒の涙が溜まっていた。その顔が見られたくなくて顔をそらしたのだろう。そして、自分は何も用意できなかったということを恥じたようだった。
「〈私を拾ってくれたことに対するお礼なのだから気にしないで。メリッサは私の命の恩人なのだから。……で、気にいってくれた?〉」
「〈……ん。ありがとう〉」
「〈どういたしまして。ささ、早速着替えちゃいましょう?ヒューベルトさんが待ってる〉」
「〈ん。わかった〉」
そして、おずおずと服を脱ぎ始めるメリッサ。私は彼女にドレスを着せ、髪を整えてあげるのだった。
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