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5章【外交編・モットー国】
10 慰め
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「〈さて、ステラも起きたことだし昼食にしようか〉」
(昼食……)
先程はバタバタしていて気づかなかったが、小屋の外からは強い日差しが降り注いでいるせいかだいぶ室内は明るかった。
あの船から落ちたのが夜のことだったが、さすがにそこから流されて流れ着いたとなると、結構な日数が経過しているかもしれない。
「〈ところで、私はどれくらい寝ていたの?〉」
「〈ステラは3日くらいか?発見してからの計算じゃが。言うほどが外傷はなかったからもっと早く起きるかと思ったが、意外に時間がかかったな。まぁ、ここまで外傷がなかったのも一緒に打ち上げられていた男のおかげじゃろうが〉」
(一緒に打ち上げられていた?それって……)
「〈ヒューベ、……その男性はどこに!??〉」
「〈今は安静にさせておる。大手術じゃったからな。今は対面は控えるように医者からも言付かっておる〉」
「〈大手術……?それってどういう……!?〉」
師匠は途端に口籠もる。何か言えないような何かがあるのだろうか。
「〈とにかく、昼食にしよう。詳しい話は後じゃ。食欲はあるかの?〉」
「〈あ、うん。あると思う〉」
「〈さて、では久々の来客じゃからな、腕によりをかけようかのう〉」
そのまま師匠は部屋を出て行く。メリッサも後をついていくかと思いきや、このままこの部屋に留まっていた。
「〈あの、メリッサちゃん?〉」
「〈メリッサ、でいいよ〉」
「〈え、と……じゃあメリッサ。貴女はいつからここにいるの?〉」
「〈……けっこー前。いつかは覚えてないけど、あたしがもっと小さいとき〉」
「〈そう。それから師匠とずっと一緒にいるの?〉」
「〈……ん。じーちゃんは優しいから。あたしをいじめないし、殺そうとしないし〉」
(何やら訳あり、と言った感じか……)
自分も十分訳ありではあるが、彼女もきっと何か訳あってここにいるのだろう。いじめということもそうだが、殺すという物騒な単語が出ていることも気がかりだ。あとで師匠からこの辺の情勢のことを聞き出さなくては。
とはいえ、とりあえずホッとする。まさか生きてモットーに流れ着くとは思わなかった。しかも師匠に拾われたというのは運がいい。
万が一、モットーの帝国から命を受けた上層部の人々が私を見つけていたら、きっとそのまま帝国へと運ばれていたことだろう。
そうでなくとも、人買いなどが私を拾っていたらどっかに売買されていたかもしれない。
悪運が強過ぎて、もはや強運なのかもしれない。まぁ、そもそもモットーに流れ着いたこと自体は不運なのだが。
(ケリー様達は、無事にブライエに着けただろうか……)
あのまま船を乗っ取られていないか、難破していないか、様々な不安要素が頭の中をぐるぐると徘徊する。
(無事だといいけど……)
その辺りのことも師匠から聞けたら聞こう。ヒューベルトのことも聞き出さねばならないし。
はぁ、と大きく溜息をつく。覚悟していたとはいえ、苦難が多くて苦しくなる。自分で決めた道とはいえ、こうも様々な障壁があると挫けそうになってくる。
不意に、ポンポンと小さい手で頭を叩かれてそちらを見れば、メリッサが表情も変えずにただただ私の頭を軽く叩いていた。
「〈なるように、なる〉」
「〈……え?〉」
「〈よくじーちゃんが言ってる。自分が信じたミチを進めば、おのずとミチはひらけるんだって〉」
(慰めて、くれているのだろうか)
なんだか不思議な少女である。
こうして小さい子から慰められることなどなかったから、なんだか悩んでいるのがバカバカしくなって、口元がほんの少し緩んだ。
「〈ありがとう、メリッサ〉」
「〈どういたしまして〉」
表情は変わらない。だが、ちょっと得意げな声音を聞いて、気持ちが軽くなった。
(昼食……)
先程はバタバタしていて気づかなかったが、小屋の外からは強い日差しが降り注いでいるせいかだいぶ室内は明るかった。
あの船から落ちたのが夜のことだったが、さすがにそこから流されて流れ着いたとなると、結構な日数が経過しているかもしれない。
「〈ところで、私はどれくらい寝ていたの?〉」
「〈ステラは3日くらいか?発見してからの計算じゃが。言うほどが外傷はなかったからもっと早く起きるかと思ったが、意外に時間がかかったな。まぁ、ここまで外傷がなかったのも一緒に打ち上げられていた男のおかげじゃろうが〉」
(一緒に打ち上げられていた?それって……)
「〈ヒューベ、……その男性はどこに!??〉」
「〈今は安静にさせておる。大手術じゃったからな。今は対面は控えるように医者からも言付かっておる〉」
「〈大手術……?それってどういう……!?〉」
師匠は途端に口籠もる。何か言えないような何かがあるのだろうか。
「〈とにかく、昼食にしよう。詳しい話は後じゃ。食欲はあるかの?〉」
「〈あ、うん。あると思う〉」
「〈さて、では久々の来客じゃからな、腕によりをかけようかのう〉」
そのまま師匠は部屋を出て行く。メリッサも後をついていくかと思いきや、このままこの部屋に留まっていた。
「〈あの、メリッサちゃん?〉」
「〈メリッサ、でいいよ〉」
「〈え、と……じゃあメリッサ。貴女はいつからここにいるの?〉」
「〈……けっこー前。いつかは覚えてないけど、あたしがもっと小さいとき〉」
「〈そう。それから師匠とずっと一緒にいるの?〉」
「〈……ん。じーちゃんは優しいから。あたしをいじめないし、殺そうとしないし〉」
(何やら訳あり、と言った感じか……)
自分も十分訳ありではあるが、彼女もきっと何か訳あってここにいるのだろう。いじめということもそうだが、殺すという物騒な単語が出ていることも気がかりだ。あとで師匠からこの辺の情勢のことを聞き出さなくては。
とはいえ、とりあえずホッとする。まさか生きてモットーに流れ着くとは思わなかった。しかも師匠に拾われたというのは運がいい。
万が一、モットーの帝国から命を受けた上層部の人々が私を見つけていたら、きっとそのまま帝国へと運ばれていたことだろう。
そうでなくとも、人買いなどが私を拾っていたらどっかに売買されていたかもしれない。
悪運が強過ぎて、もはや強運なのかもしれない。まぁ、そもそもモットーに流れ着いたこと自体は不運なのだが。
(ケリー様達は、無事にブライエに着けただろうか……)
あのまま船を乗っ取られていないか、難破していないか、様々な不安要素が頭の中をぐるぐると徘徊する。
(無事だといいけど……)
その辺りのことも師匠から聞けたら聞こう。ヒューベルトのことも聞き出さねばならないし。
はぁ、と大きく溜息をつく。覚悟していたとはいえ、苦難が多くて苦しくなる。自分で決めた道とはいえ、こうも様々な障壁があると挫けそうになってくる。
不意に、ポンポンと小さい手で頭を叩かれてそちらを見れば、メリッサが表情も変えずにただただ私の頭を軽く叩いていた。
「〈なるように、なる〉」
「〈……え?〉」
「〈よくじーちゃんが言ってる。自分が信じたミチを進めば、おのずとミチはひらけるんだって〉」
(慰めて、くれているのだろうか)
なんだか不思議な少女である。
こうして小さい子から慰められることなどなかったから、なんだか悩んでいるのがバカバカしくなって、口元がほんの少し緩んだ。
「〈ありがとう、メリッサ〉」
「〈どういたしまして〉」
表情は変わらない。だが、ちょっと得意げな声音を聞いて、気持ちが軽くなった。
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