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2章【告白編】
27 ロゼットの作品
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「はぁぁぁぁぁ……」
読み終え、つい感嘆の声が漏れる。ゴネ倒して読ませてもらったため、物語は途中で終わってしまっているのだが、とても続きが気になる作品に仕上がっていた。というか……
(面白い、面白かった……!!)
そう全力で叫びたいほど面白かった。
だが、さすがに深夜である。この家は特に静かなので、私が大声を出したら、恐らくクエリーシェルが大慌てでやってくるだろう。下手すると、ノックもせずに突撃してくる可能性がある。
さすがに自室でもないし、ロゼットの部屋が私のせいで見られるのも嫌だし、そもそも私はここで何をしているのかと変な勘繰りされても困るので、それは避けたかった。
(それにしても、いい話だった)
話は貴族と従者の定番的なお話だったのだが、主人公の女の子の鈍感で素っ気ない態度に対し、相手役の従者がひたすら押して押して押しまくっているやりとりがとても面白くて、どんどん読み込んでしまった。
というか、この主人公鈍感過ぎでしょ!とツッコミを入れたくなるが、そこもまたミソであり、このヤキモキした関係が読者を引き込むのだと思う。
そもそも情景や心理描写がとても上手で、場面の状況がすぐに想像でき、少なくとも私は引き込まれてしまった。ロゼットには才能がある。売れっ子作家も間違いないと判子を押せるほどではないだろうか。
「ロゼットさん!」とこちらを見つめてたロゼットの手をしっかりと握る。ロゼットは「はい」と戸惑いながら返事をしつつも、私を見つめ返していた。
「とっても面白かったです!」
「それは、ありがとうございます。嬉しいです」
「これ、売れますよ!ぜひとも売りましょう!!」
「いえ、まだ完結していないので。というか売るとかそういうものでは……」
「えーーーー!絶対に売れますよ!というか、いっそ私資金繰りしますんで売りましょうよ!!」
我ながら珍しく興奮している気がする。ロゼットもそれがわかっているのか、ちょっと気圧されているせいか、苦笑気味だ。
「では、作品が仕上がってから考えます」
「えぇ、ぜひ!では、私がこの旅路から戻るまでに完成しているのを心待ちにしてます」
「はい、完結できるように頑張ります」
読ませてもらった紙を綺麗に束ねると、ロゼットに返す。あの紙の束にとても素敵な作品が書き連ねられているのだと思うと、火事だけには気をつけねばと思った。
(もし本にするなら工房に依頼しないと。いや、今、先走ったところで完成しなければダメだから……)
でも、できればバックアップは取っておきたい。あれがもし何かしらイレギュラーが起きて消失してしまうのはもったいない。いっそもう、先に写生しておくのも手かもしれない。
(あぁ、なら国王に助言するのはいいだろうか。読書で識字の普及率を上げられることを提案して……、確か他国で恋愛モノが流行って識字率が上がったって噂を聞いたことが)
脳内でポンポンと考えが出てきて、勝手にプランニングする。まさに捕らぬ狸の皮算用であるが、ついつい思考が傾いてしまう。
「リーシェさん?」
「は!すみません、考え事をしてました」
(いけないいけない、私の悪い癖だ)
つい自分の思考に没頭して、ロゼットをおいてけぼりにしてしまった。
「そういえば、この作品って誰かモデルとか参考にしてる作品とかあるんですか?」
「えぇ、まぁ、あります」
「気になります。私が知ってる作品ですか?それとも私が知ってる人ですか?」
「それは、黙秘させていただきます」
まさかの黙秘に、ぐぬぬとなるが、確かにネタバレはよくない。だから私はグッと我慢して、「続きを読んで考察します」と渋々追及するのを諦めた。
ロゼットは私の様子がおかしいのか、くすくすと笑い出す。それがなんだか面白くて、自然と私も笑みが溢れる。
「リーシェさんもまだ17歳なんですね」
「そうですよ。……え、疑われてました?」
「えぇ、ちょっと。あまりにもしっかりされているのと、頼もしくて」
「さすがにサバは読みません」
くすくすと笑い続けるロゼットに不貞腐れるように頬に空気を溜めて膨らませると、ぶふっと珍しくロゼットが噴き出し、大笑いする。
それにつられて私も笑い始めると、外からノックが聞こえ、「ロゼット、大丈夫か?」というクエリーシェルの心配げな声が聞こえて、さらに2人して笑い転げるのだった。
読み終え、つい感嘆の声が漏れる。ゴネ倒して読ませてもらったため、物語は途中で終わってしまっているのだが、とても続きが気になる作品に仕上がっていた。というか……
(面白い、面白かった……!!)
そう全力で叫びたいほど面白かった。
だが、さすがに深夜である。この家は特に静かなので、私が大声を出したら、恐らくクエリーシェルが大慌てでやってくるだろう。下手すると、ノックもせずに突撃してくる可能性がある。
さすがに自室でもないし、ロゼットの部屋が私のせいで見られるのも嫌だし、そもそも私はここで何をしているのかと変な勘繰りされても困るので、それは避けたかった。
(それにしても、いい話だった)
話は貴族と従者の定番的なお話だったのだが、主人公の女の子の鈍感で素っ気ない態度に対し、相手役の従者がひたすら押して押して押しまくっているやりとりがとても面白くて、どんどん読み込んでしまった。
というか、この主人公鈍感過ぎでしょ!とツッコミを入れたくなるが、そこもまたミソであり、このヤキモキした関係が読者を引き込むのだと思う。
そもそも情景や心理描写がとても上手で、場面の状況がすぐに想像でき、少なくとも私は引き込まれてしまった。ロゼットには才能がある。売れっ子作家も間違いないと判子を押せるほどではないだろうか。
「ロゼットさん!」とこちらを見つめてたロゼットの手をしっかりと握る。ロゼットは「はい」と戸惑いながら返事をしつつも、私を見つめ返していた。
「とっても面白かったです!」
「それは、ありがとうございます。嬉しいです」
「これ、売れますよ!ぜひとも売りましょう!!」
「いえ、まだ完結していないので。というか売るとかそういうものでは……」
「えーーーー!絶対に売れますよ!というか、いっそ私資金繰りしますんで売りましょうよ!!」
我ながら珍しく興奮している気がする。ロゼットもそれがわかっているのか、ちょっと気圧されているせいか、苦笑気味だ。
「では、作品が仕上がってから考えます」
「えぇ、ぜひ!では、私がこの旅路から戻るまでに完成しているのを心待ちにしてます」
「はい、完結できるように頑張ります」
読ませてもらった紙を綺麗に束ねると、ロゼットに返す。あの紙の束にとても素敵な作品が書き連ねられているのだと思うと、火事だけには気をつけねばと思った。
(もし本にするなら工房に依頼しないと。いや、今、先走ったところで完成しなければダメだから……)
でも、できればバックアップは取っておきたい。あれがもし何かしらイレギュラーが起きて消失してしまうのはもったいない。いっそもう、先に写生しておくのも手かもしれない。
(あぁ、なら国王に助言するのはいいだろうか。読書で識字の普及率を上げられることを提案して……、確か他国で恋愛モノが流行って識字率が上がったって噂を聞いたことが)
脳内でポンポンと考えが出てきて、勝手にプランニングする。まさに捕らぬ狸の皮算用であるが、ついつい思考が傾いてしまう。
「リーシェさん?」
「は!すみません、考え事をしてました」
(いけないいけない、私の悪い癖だ)
つい自分の思考に没頭して、ロゼットをおいてけぼりにしてしまった。
「そういえば、この作品って誰かモデルとか参考にしてる作品とかあるんですか?」
「えぇ、まぁ、あります」
「気になります。私が知ってる作品ですか?それとも私が知ってる人ですか?」
「それは、黙秘させていただきます」
まさかの黙秘に、ぐぬぬとなるが、確かにネタバレはよくない。だから私はグッと我慢して、「続きを読んで考察します」と渋々追及するのを諦めた。
ロゼットは私の様子がおかしいのか、くすくすと笑い出す。それがなんだか面白くて、自然と私も笑みが溢れる。
「リーシェさんもまだ17歳なんですね」
「そうですよ。……え、疑われてました?」
「えぇ、ちょっと。あまりにもしっかりされているのと、頼もしくて」
「さすがにサバは読みません」
くすくすと笑い続けるロゼットに不貞腐れるように頬に空気を溜めて膨らませると、ぶふっと珍しくロゼットが噴き出し、大笑いする。
それにつられて私も笑い始めると、外からノックが聞こえ、「ロゼット、大丈夫か?」というクエリーシェルの心配げな声が聞こえて、さらに2人して笑い転げるのだった。
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