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1章【出会い編】
4 領主の帰宅
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ゴトゴトゴトゴト……
馬車に揺られながら、うつらうつらと舟を漕ぐ。
(ここのところ、いつにも増して出突っ張りだった)
各地の賊やらクーデターやらの制圧に、国境近くの警備の派遣部隊の教育、さらには自領の見回りと、国王から「独り身の領主とは都合がいいなぁ」とこき使われているせいで、直近で家に帰ったのはいつだったかすら、最早覚えていない。
日数を数えることすらままならないほど、毎日ドタバタしていたせいか、長期に渡って家を空けていた気がする。
基本、貴重品は姉が持っているから家に賊が入って来ても心配はないが、そろそろ家の大掃除もせねばならなかったし、想定外とはいえ使用人を見つけられたのはある意味良かったのかもしれない。
(まぁ、長く続くかはわからないが)
ニールには散々言われたが、国王にも寂しい独り身にはいいじゃないか、と喜ばれた。あいつの場合はただ面白がっているだけだろうが。
久々に休みももらえたことだし、久々に家の片付けと庭の手入れでもするか、と夢うつつも思考を巡らす。
「ヴァンデッダ様、到着致しました」
「あぁ、ご苦労だった。これは手間賃だ」
「え、ですが国王からも……」
「何、臨時収入だと思って懐に入れておけ。誰にも言わねば咎められることもなかろう」
「あ、ありがとうございます」
若い御者は深々と頭を下げると、そのまま王都へと戻っていった。
(朝日が眩しい)
さて、使用人は寝ているだろうか。寝ていたら起こすのも悪いなぁ、と思いながら、家の門を開ける。
「お帰りなさいませ」
思わず、面食らう。まさか起きていて出迎えられるとは思っていなかったクエリーシェルは、反応するのに多少時間を要した。
「あ、あぁ、ただいま。……起きていたのか」
「一応、使用人として遣える身ですので」
「思いのほか律儀なのだな」
「そうなんです、意外と律儀なんです」
若いのに殊勝なことだ、とつい年寄りくさいことを思ってしまう。そういえば、この小娘の年齢を聞いていなかったことを思い出す。
「えーっと名が……」
「リーシェです」
「リーシェは今いくつだ?」
「16です」
ちんまい小娘だとは思っていたが、16。私の年齢の半分か。せめて20は超えていると思っていたクエリーシェルはあまりの年の差に一気に老けた気分になる。
そりゃ疲れも出るはずだ。そうか、半分か……半分。16のときなど私は何をしていたか……。そう考えて、気が遠くなる。
「領主様はお食事になさいますか、それともお風呂になさいますか?」
「領主様はやめてくれ。ケリーでもリシェルでも呼びやすい名で構わない」
「ではケリー様。改めまして、どちらになさいますか?」
「では、先に食事にしてもらおうか。昼頃から飲まず食わずでな」
「承知致しました」
リーシェは私の外套を受け取ると、すぐさま埃取りのためブラシをかけ、そのまま外套掛けに掛けていく。大体のものの場所などを既に把握しているのか、彼女は迷う素振りも見せずにスタスタとダイニングへと行ってしまった。
(明け方だというのにテキパキと動く娘だ)
思わず感心してしまう。食事か風呂か聞かれたということは、既にある程度支度していたということだろう。
(彼女は休息を取れたのだろうか)
まだ若いというのに無理をさせるというのもあまりよくはないな、と思いつつも出てくる食事などが気になるのも事実だ。
(そういえば、食事を我が家でしたのはいつぶりだっただろうか)
基本家にいないから家にいても乾物など非常食や保存食ばかり食べていた気がする。
そもそもここには食材などほぼないし、給金等も渡すのを忘れていたから一体どうやって拵えたのか。疑問に思いつつも少々期待しながら、とりあえずリーシェのあとに続いてダイニングルームへと足を進めた。
馬車に揺られながら、うつらうつらと舟を漕ぐ。
(ここのところ、いつにも増して出突っ張りだった)
各地の賊やらクーデターやらの制圧に、国境近くの警備の派遣部隊の教育、さらには自領の見回りと、国王から「独り身の領主とは都合がいいなぁ」とこき使われているせいで、直近で家に帰ったのはいつだったかすら、最早覚えていない。
日数を数えることすらままならないほど、毎日ドタバタしていたせいか、長期に渡って家を空けていた気がする。
基本、貴重品は姉が持っているから家に賊が入って来ても心配はないが、そろそろ家の大掃除もせねばならなかったし、想定外とはいえ使用人を見つけられたのはある意味良かったのかもしれない。
(まぁ、長く続くかはわからないが)
ニールには散々言われたが、国王にも寂しい独り身にはいいじゃないか、と喜ばれた。あいつの場合はただ面白がっているだけだろうが。
久々に休みももらえたことだし、久々に家の片付けと庭の手入れでもするか、と夢うつつも思考を巡らす。
「ヴァンデッダ様、到着致しました」
「あぁ、ご苦労だった。これは手間賃だ」
「え、ですが国王からも……」
「何、臨時収入だと思って懐に入れておけ。誰にも言わねば咎められることもなかろう」
「あ、ありがとうございます」
若い御者は深々と頭を下げると、そのまま王都へと戻っていった。
(朝日が眩しい)
さて、使用人は寝ているだろうか。寝ていたら起こすのも悪いなぁ、と思いながら、家の門を開ける。
「お帰りなさいませ」
思わず、面食らう。まさか起きていて出迎えられるとは思っていなかったクエリーシェルは、反応するのに多少時間を要した。
「あ、あぁ、ただいま。……起きていたのか」
「一応、使用人として遣える身ですので」
「思いのほか律儀なのだな」
「そうなんです、意外と律儀なんです」
若いのに殊勝なことだ、とつい年寄りくさいことを思ってしまう。そういえば、この小娘の年齢を聞いていなかったことを思い出す。
「えーっと名が……」
「リーシェです」
「リーシェは今いくつだ?」
「16です」
ちんまい小娘だとは思っていたが、16。私の年齢の半分か。せめて20は超えていると思っていたクエリーシェルはあまりの年の差に一気に老けた気分になる。
そりゃ疲れも出るはずだ。そうか、半分か……半分。16のときなど私は何をしていたか……。そう考えて、気が遠くなる。
「領主様はお食事になさいますか、それともお風呂になさいますか?」
「領主様はやめてくれ。ケリーでもリシェルでも呼びやすい名で構わない」
「ではケリー様。改めまして、どちらになさいますか?」
「では、先に食事にしてもらおうか。昼頃から飲まず食わずでな」
「承知致しました」
リーシェは私の外套を受け取ると、すぐさま埃取りのためブラシをかけ、そのまま外套掛けに掛けていく。大体のものの場所などを既に把握しているのか、彼女は迷う素振りも見せずにスタスタとダイニングへと行ってしまった。
(明け方だというのにテキパキと動く娘だ)
思わず感心してしまう。食事か風呂か聞かれたということは、既にある程度支度していたということだろう。
(彼女は休息を取れたのだろうか)
まだ若いというのに無理をさせるというのもあまりよくはないな、と思いつつも出てくる食事などが気になるのも事実だ。
(そういえば、食事を我が家でしたのはいつぶりだっただろうか)
基本家にいないから家にいても乾物など非常食や保存食ばかり食べていた気がする。
そもそもここには食材などほぼないし、給金等も渡すのを忘れていたから一体どうやって拵えたのか。疑問に思いつつも少々期待しながら、とりあえずリーシェのあとに続いてダイニングルームへと足を進めた。
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