ダメンズメーカー聖女 〜結婚したくて尽くしまくってたら最強の聖女になっちゃいました〜

鳥柄ささみ

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第八十五話 諦めない

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 あぁ、私が負けるなんて。
 ごめん、ヴィル。せっかく私を守ってくれたのに。

 絶望的な状況に俯いて目を閉じようとした瞬間、温かい光に包まれた。

「何だ……?」

 魔王の訝しむ声が聞こえる。
 私も一体何が起きたのかと顔を上げると、そこには懐かしい顔があった。

(シオン。諦めるんじゃない。希望を託されたのだろう? 最期まで諦めるな)

(そうよ、シオン。貴女ならできる。だって、私達の娘だもの)

 二人の励ましに、ツンッと鼻の奥が痛くなる。
 それと同時に、身体の奥底から燃えるように熱い魔力が滾るのを感じた。

 あぁ、私ったら何やってるんだか。

 二人の言葉のおかげで、先程まで諦めかけていた私の瞳に強い意志が灯る。
 どんよりと私を覆っていたはずの弱気は吹き飛び、代わりに沸々と気力が湧いてきた。

 そうよ。父さんと母さんの言う通りだ。
 こんな簡単に諦めるなんて、私らしくない。
 最強の聖女なんでしょ?
 だからヴィルは私に命をかけてまで託してくれたんじゃない。
 だったら証明しなくちゃ! 私は最強の聖女だって!!

 まっすぐ前を見つめる。

(あぁ、その意気だ)

(えぇ、シオンなら絶対に大丈夫よ。自分を信じて)

 そうよね、父さん母さん。私は最強の聖女、シオンだもの。私は誰よりも諦めの悪い二人の娘。
 ……だったら、やってやろーじゃないの!

「うぅぅうううううああああああああ!!」
「おや、今更足掻いてももう手遅れだよ。それとも何? まだ何かできるとでも思ってるのかな? あはは、愚かな人間らしい無駄な足掻きだ」

 魔王は赤い光を膨張させ、こちらに向けながら嘲笑する。
 けれど、そんなものも気にせずに私は魔力を解放するかのように声を上げ続けた。

「あぁあああああああ!!!!」

 身体が重い。
 ……だから何?

 節々が痛くて呼吸が苦しい。
 ……それがどうしたっていうの!

 起き上がる気力がない。
 ……だったら、気力を振り絞ればいいでしょ!!

「私は、私は……っ、こんなとこで終わる女じゃない!」

 なけなしの力を振り絞って起き上がる。
 最後の最後まで例え不利な状況であっても絶対に諦めるなと言われたことを思い出して、私は歯を食いしばって立ち上がった。

 死ぬのはいつだってできる。
 だから諦めずに最期の最期まで抗う!
 ヴィルが私に希望を託してくれたのを無駄にはしない!!

 魔力がどんどん上昇していくのが自分でもわかる。
 身体中が燃えたぎるように熱く、満たされていった。

 それに、こんな薄気味悪い城で誰にも知られずに死ぬなんて無理!
 そもそも、私まだ一度も結婚できてないし!
 結婚しないまま、自分の家族を持たないまま死ぬなんて、絶対の絶対のぜぇぇぇぇっっっったいにごめんだから!!!!

「私は、絶対に諦めない! 優しくてイケメンで甲斐性があるステキな旦那様と結婚するまで絶対に誰にも負けない!!」
「へぇ。まだそんなに吠える元気があったとはね」

 魔王が余裕ぶってニヤリと笑う。
 そのまま私に向かって魔力の溜まりきった指先を向けてきた。
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