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第七十二話 魅了
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「そ、それはちょっと性急すぎるというか、まだ心の準備が……」
「オレは待てない」
積極的にぐいぐいくるヴィルに抵抗しつつも自分も好意を持っている手前、あまり強く出られない。
とはいえ、ここにはグルーがいるし、さすがにここでコトに及ぼうというのはよくないのではないかと必死にどうしようかと考えていると、不意にヴィルの瞳が濁っているのが見えた。
あれ、これってもしかして……
「ちょっと、ヴィルこっち向いて!」
「ん? シオンからキスしてくれるのか?」
「違う違う違う違う。そうじゃない! あ、やっぱり!!」
顔を近づけてくるヴィルの顔を押し返しながらよく瞳を見てみると、瞳の奥に淫紋らしきものが描かれていた。
これはサキュバスやインキュバス特有の魅了魔法の一種であり、ついさっきのことを思い出す。
「やだ、魅了にかかってるじゃない! どこが大丈夫なの!? 全然大丈夫じゃないじゃない!! さっさと正気に戻りなさい! リカバリー!!」
手に魔力を含めてヴィルの身体を押し返す。
すると、意識を失ったのか私に向かって一気にヴィルが倒れ込んできた。
さすがにその動きは予想外で、ヴィルにのし掛かられた状態になってしまって慌てふためく。というか、案外重い。
「ヴィル、ヴィル、起きて! 重い! どいて!」
「ん? オレは何を……っ、シオン!?」
ガバッと勢いよく離れるヴィル。
瞬時に状況を理解したのか、その顔は真っ赤に染まっていた。
「な、な、何がどうなって……」
「もう、バカ。信じられない」
どうやら丸々記憶がないらしい。
私がサキュバスに魅了されていたことを告げると「面目ない」とぺこぺこと頭を下げられた。
「全く、催眠かかったり魅了かかったり。ヴィルは状態異常にかかりやすいようだから、これあげるから身につけておいて」
私が首からネックレスを外して手渡す。
「これは?」
「状態異常耐性のアクセサリ。私は元々耐性あるし、オシャレで付けてただけだからヴィルにあげる」
「すまない。ありがとう」
「はいはい。ほら、つけてあげるから」
ヴィルに頭を下げてもらって首からかけてあげる。デザインはシンプルなのでヴィルが身につけても問題なさそうだ。
一応このアクセサリは滅多に出回らない秘石で作られているので、その辺の安物アクセサリよりかは効力もあるはず。
「シオンにはいつもしてもらってばかりだな」
「今更でしょう? って言っても、この前モルドーの村まで運んでもらったり世話してもらったりもしてるからお互いさまでしょ。ほら、さっさとお風呂入ってきて。私も疲れてるから支度終えたらすぐに寝ちゃうわよ」
「あ、あぁ、そうだな! じゃあ、入ってくる」
ヴィルはそう言って足早に部屋を出て行く。
残された私はと言えば、顔を押さえながらソファにずるずるとへたり込んでいたのだった。
「オレは待てない」
積極的にぐいぐいくるヴィルに抵抗しつつも自分も好意を持っている手前、あまり強く出られない。
とはいえ、ここにはグルーがいるし、さすがにここでコトに及ぼうというのはよくないのではないかと必死にどうしようかと考えていると、不意にヴィルの瞳が濁っているのが見えた。
あれ、これってもしかして……
「ちょっと、ヴィルこっち向いて!」
「ん? シオンからキスしてくれるのか?」
「違う違う違う違う。そうじゃない! あ、やっぱり!!」
顔を近づけてくるヴィルの顔を押し返しながらよく瞳を見てみると、瞳の奥に淫紋らしきものが描かれていた。
これはサキュバスやインキュバス特有の魅了魔法の一種であり、ついさっきのことを思い出す。
「やだ、魅了にかかってるじゃない! どこが大丈夫なの!? 全然大丈夫じゃないじゃない!! さっさと正気に戻りなさい! リカバリー!!」
手に魔力を含めてヴィルの身体を押し返す。
すると、意識を失ったのか私に向かって一気にヴィルが倒れ込んできた。
さすがにその動きは予想外で、ヴィルにのし掛かられた状態になってしまって慌てふためく。というか、案外重い。
「ヴィル、ヴィル、起きて! 重い! どいて!」
「ん? オレは何を……っ、シオン!?」
ガバッと勢いよく離れるヴィル。
瞬時に状況を理解したのか、その顔は真っ赤に染まっていた。
「な、な、何がどうなって……」
「もう、バカ。信じられない」
どうやら丸々記憶がないらしい。
私がサキュバスに魅了されていたことを告げると「面目ない」とぺこぺこと頭を下げられた。
「全く、催眠かかったり魅了かかったり。ヴィルは状態異常にかかりやすいようだから、これあげるから身につけておいて」
私が首からネックレスを外して手渡す。
「これは?」
「状態異常耐性のアクセサリ。私は元々耐性あるし、オシャレで付けてただけだからヴィルにあげる」
「すまない。ありがとう」
「はいはい。ほら、つけてあげるから」
ヴィルに頭を下げてもらって首からかけてあげる。デザインはシンプルなのでヴィルが身につけても問題なさそうだ。
一応このアクセサリは滅多に出回らない秘石で作られているので、その辺の安物アクセサリよりかは効力もあるはず。
「シオンにはいつもしてもらってばかりだな」
「今更でしょう? って言っても、この前モルドーの村まで運んでもらったり世話してもらったりもしてるからお互いさまでしょ。ほら、さっさとお風呂入ってきて。私も疲れてるから支度終えたらすぐに寝ちゃうわよ」
「あ、あぁ、そうだな! じゃあ、入ってくる」
ヴィルはそう言って足早に部屋を出て行く。
残された私はと言えば、顔を押さえながらソファにずるずるとへたり込んでいたのだった。
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