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第六十九話 過去
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過去のことを思い出す。
物心ついたときから私の魔力はたんまりとあった。
実際、五歳くらいで十レベルくらいの敵なら瞬殺できていたし、両親がそれぞれ亡くなり孤独になってしまった十歳の頃には五十レベルくらいならギリギリ倒せるくらいには強かった。
とはいえ、両親が亡くなったあとは教えを乞う相手がいなかったから、誰に何を教わるでもなく魔法も戦闘も全て独学。
とにかく一人が寂しくて、結婚したくて、そのためには自立して強くなってお金を稼いで結婚相手を見つけようとがむしゃらに生きてきた人生だった。
「生まれたときから魔力に困ったことないし、ヴィルとはそういうとこちょっと違うかも? でも、私も最初は高レベルの魔物にボコボコにされたし、魔力あるからって最強ってわけでもなかったよ」
「そういうもんなのか」
「そうそう。言ったでしょ? 高レベルの魔物になると頭使わなきゃいけないって。だから小さいときは死なない程度に何度もやられて何度も挑んで勝つことが多かったかな」
「そうなのか。案外、シオンも苦労してるんだな」
「やめてよ、しみじみそういう風に言うの。まぁ、程々よ。程々」
我ながら波瀾万丈な人生ではあると思うが、後悔はしていない。
というか、振り返ってしまうと前に進めない。
だから私は振り返らずに前に進むのみで、常に前しか見ていなかった。
「ずっと気になっていたんが、シオンって……」
ヴィルが何かを言いかけた瞬間、ドゴォォォォンと遠くから何か大きな音が聞こえる。
「何事!?」
「あそこにグルーが!」
ヴィルが指差す先にグルーがいるが、様子がおかしい。空を蛇行しながら急降下したり急上昇したりと不規則な動きをしている。
「グルー!? どうし……って、ちょっと!!」
突然こちらに向かって急降下したかと思えば、視界に飛び込んでくる何か。どうやらよく見るとグルーは誰かを背に乗せている状態だった。
「おやおや、可愛い子達だねぇ」
「サキュバス!? グルー、どっから連れて来たの!」
「すまん、シオン。憑かれた!」
「はぁ!? 何やってんの!」
「おやおや、美味しそうな男がいるじゃないか」
「ヴィル、避けて!」
サキュバスが魅了魔法の投げキッスを飛ばしてくる。想像以上の速さで、まるで弾丸のようにヴィルに向かって飛んでいった。
「うわぁっ!」
「ヴィル、大丈夫!?」
「あ、あぁ、どうにか」
どうやらスレスレで避けれたらしい。
良かったとホッとしつつ上空を見れば、いつの間にか魅了を受けていたグルーが何やら近くの岩に向かって一直線に飛んでいった。
そして、グルグル言いながら岩にいやらしい動きをして抱き着いている。
「グルー! 何やってんの! それ岩だから!! そういうのやめなさい!」
「グルグル。ふふふ、愛しいハニーじゃのう。食べてしまいたいくらい可愛いのう」
「だから、それ岩だってば! 舐めないの!! ペッしなさいペッ!」
「うふふ。可愛い仔猫ちゃんだこと。さて次は貴女を魅了して、あ・げ・る」
「させるか!」
投げキッスが飛んで来る前に、グルグルと鳴きながら求愛しているグルーを岩から引き剥がしてすかさず魅了を解除する。そのまま素早く雷の魔法をサキュバスに撃つと、彼女は雷に打たれて影になって消えていった。
「はぁ、全く。ろくでもないことしてくれるんだから」
「すまん。困ってる人間だと思ったらまさかサキュバスでな」
「まぁ、人助けしようと思ったのはいいことだけど。ヴィルは大丈夫?」
「あ? あぁ、問題ない」
随分と口数が少ないヴィルを不思議に思いながら、休憩は終わりと次の村に向かって歩き始める。道中でもやっぱりヴィルは物静かで、なんだかちょっとおかしかった。
物心ついたときから私の魔力はたんまりとあった。
実際、五歳くらいで十レベルくらいの敵なら瞬殺できていたし、両親がそれぞれ亡くなり孤独になってしまった十歳の頃には五十レベルくらいならギリギリ倒せるくらいには強かった。
とはいえ、両親が亡くなったあとは教えを乞う相手がいなかったから、誰に何を教わるでもなく魔法も戦闘も全て独学。
とにかく一人が寂しくて、結婚したくて、そのためには自立して強くなってお金を稼いで結婚相手を見つけようとがむしゃらに生きてきた人生だった。
「生まれたときから魔力に困ったことないし、ヴィルとはそういうとこちょっと違うかも? でも、私も最初は高レベルの魔物にボコボコにされたし、魔力あるからって最強ってわけでもなかったよ」
「そういうもんなのか」
「そうそう。言ったでしょ? 高レベルの魔物になると頭使わなきゃいけないって。だから小さいときは死なない程度に何度もやられて何度も挑んで勝つことが多かったかな」
「そうなのか。案外、シオンも苦労してるんだな」
「やめてよ、しみじみそういう風に言うの。まぁ、程々よ。程々」
我ながら波瀾万丈な人生ではあると思うが、後悔はしていない。
というか、振り返ってしまうと前に進めない。
だから私は振り返らずに前に進むのみで、常に前しか見ていなかった。
「ずっと気になっていたんが、シオンって……」
ヴィルが何かを言いかけた瞬間、ドゴォォォォンと遠くから何か大きな音が聞こえる。
「何事!?」
「あそこにグルーが!」
ヴィルが指差す先にグルーがいるが、様子がおかしい。空を蛇行しながら急降下したり急上昇したりと不規則な動きをしている。
「グルー!? どうし……って、ちょっと!!」
突然こちらに向かって急降下したかと思えば、視界に飛び込んでくる何か。どうやらよく見るとグルーは誰かを背に乗せている状態だった。
「おやおや、可愛い子達だねぇ」
「サキュバス!? グルー、どっから連れて来たの!」
「すまん、シオン。憑かれた!」
「はぁ!? 何やってんの!」
「おやおや、美味しそうな男がいるじゃないか」
「ヴィル、避けて!」
サキュバスが魅了魔法の投げキッスを飛ばしてくる。想像以上の速さで、まるで弾丸のようにヴィルに向かって飛んでいった。
「うわぁっ!」
「ヴィル、大丈夫!?」
「あ、あぁ、どうにか」
どうやらスレスレで避けれたらしい。
良かったとホッとしつつ上空を見れば、いつの間にか魅了を受けていたグルーが何やら近くの岩に向かって一直線に飛んでいった。
そして、グルグル言いながら岩にいやらしい動きをして抱き着いている。
「グルー! 何やってんの! それ岩だから!! そういうのやめなさい!」
「グルグル。ふふふ、愛しいハニーじゃのう。食べてしまいたいくらい可愛いのう」
「だから、それ岩だってば! 舐めないの!! ペッしなさいペッ!」
「うふふ。可愛い仔猫ちゃんだこと。さて次は貴女を魅了して、あ・げ・る」
「させるか!」
投げキッスが飛んで来る前に、グルグルと鳴きながら求愛しているグルーを岩から引き剥がしてすかさず魅了を解除する。そのまま素早く雷の魔法をサキュバスに撃つと、彼女は雷に打たれて影になって消えていった。
「はぁ、全く。ろくでもないことしてくれるんだから」
「すまん。困ってる人間だと思ったらまさかサキュバスでな」
「まぁ、人助けしようと思ったのはいいことだけど。ヴィルは大丈夫?」
「あ? あぁ、問題ない」
随分と口数が少ないヴィルを不思議に思いながら、休憩は終わりと次の村に向かって歩き始める。道中でもやっぱりヴィルは物静かで、なんだかちょっとおかしかった。
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