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第六十八話 似たもの同士

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「うぉおおおおお!!!」
「ヴィル! 魔法が強い! そのままだったら自分が焼けちゃうわよ!」
「え? うわぁ!?」
「はっはっは、ヴィルはダメじゃのう」
「グルー! 余裕ぶっこいてるけど、攻撃来てる!!」
「うぉっ!? 思いのほか早く動くのう、こやつ」

 モルドーの村を出て、早速レベル上げのために徒歩で移動する。道中の魔物は推奨レベル五十くらいなので、レベル三十五のヴィルにはバフをかけ、ヴィルとグルーには共闘してもらって経験値を稼いでもらった。
 ちなみに、私が参戦すると速攻で倒してしまうので、手出ししない約束で戦闘を見守っている。
 現在はサイクロプスとの戦闘中で、巨体に四苦八苦しながらも連携をとりつつヴィル達は戦っていた。

「はぁはぁはぁ。……疲れた」
「ヴィルがもうちょっとマシな動きをしておれば」
「はぁ!? グルーが出遅れてたせいだろ!」
「はいはーい。言い合いしないの~」

 どうにかサイクロプスを討伐したが、なかなか二人の息が合わない。
 似たもの同士だからか思考は似ているのだが、それぞれフォローするという考えがないせいで動きがちぐはぐになっている。というわけで、現状は共闘など夢のまた夢といった感じだ。

「最初なんだし、しょうがない。まずはやってみることが大事なんだし」
「そうは言うがのう」
「全然できる気がしないんだが」
「そうやってネガティブにならないの。やれるって信じて続けてたらきっとできるようになるから、ね?」

 励ますと恥ずかしいのか、ヴィルとグルーはお互い顔を見やったあとにそらす。

 こういうとことかそっくりなんだけどなぁ~。それを活かせないかなぁ~。

 相性は悪くないからあとはタイミングだとか協調性とかの問題だろう。特に協調性は壊滅的だから、そこを上手く伸ばしていくしかない。

 一応元ギルマスとして、メンバーの補佐はしっかりとしていきたいと色々アドバイスする。

 ヴィルは加減を覚えること。
 グルーは周りをよく見ること。

 この二つさえまずどうにかできれば、自然とタイミングなども合ってくるはずだ。

 色々とレクチャーすると、納得した様子で頷きつつも、グルーは魔物の気質もあってか「疲れた。ちと休憩じゃ」とどこかへ飛んで行ってしまった。
 相変わらず気まぐれなやつである。

「難しいな、戦闘って。ただ攻撃すればいいってもんじゃないんだな」
「んまぁ、雑魚敵なら何も考えずに攻撃すればいいんだけどね。レベルが上がってくると魔法攻撃が効かないとか物理攻撃が効かないとか、状態異常魔法かけてくるとか多種多様になってくるのよ。そういうのにも対応するとなると相手を見ながら攻撃しなきゃいけないし、頭を使わないと勝てなくなってくるかな」
「なるほど」
「ま、でも場数踏めばそういうのも自然と覚えていくから大丈夫。攻撃のタイミングだとか、魔法発動のタイミングだとかのクセってそれぞれ魔物によって違うけど、何度も経験することで自然と身体が覚えていくから、今からそんな身構えなくていいよ」
「そういうもんか……」

 ヴィルが何やら考え込む。
 特に何か変なことを言った覚えはないんだが、何か気に障るようなことでも言っただろうか。

「シオンもそうやって強くなったのか?」
「え、私?」
「あぁ、最初からそんなに強かったわけじゃないんだろ?」
「んー、まぁそう言われてみればそうだけど。とはいえ、昔から魔力はたくさんあったからなぁ……」
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