65 / 95
第六十五話 衝撃
しおりを挟む
魔力が戻り、それに比例して体力も戻ったのですぐにこのモルドーの村を出ることにした。
とはいえ、すぐにと言っても私の魔力が戻らなかったせいで一カ月以上は滞在していたのだが。
「長らく大変お世話になりました。長期間、家をお借りしてしまって申し訳ありません」
「いえいえ、困ったときはお互いさまですから。それに、ヴィルさんとペットの方には村民達もお世話になりましたし」
たまにいないときがあるとは思ってたけど、私が寝ている間にそれぞれ村人達に何か奉仕をしていたらしい。本人達は全然そんなことを言っていなかったが。
彼らの顔を見ると素知らぬフリしてそっぽを向いている。相変わらず恥ずかしがり屋だ。
「そうだったんですね。お役に立てたのであれば光栄です。では、私からも感謝の証としてこの村の繁栄と平穏のために加護を授けましょう。それから滞在のお礼として、魔物避けの魔法壁と村人達が多少幸福になる贈り物を」
パンッ!
手を叩くと、まるで花火のように魔法が打ち上がり、弾ける。大衆向けの派手な魔法なのだが、これがわかりやすくて評判がいいのだ。
現に村人達の歓声が聞こえ、はしゃぐ子供達の声が聞こえる。ちなみに中身は回復力と幸福度アップの魔法だ。
「あれ、そういえばダグは?」
「おや、聖女様。ダグラスをご存知で?」
「えぇ、まぁ……昔の知り合いでして」
あれだけしょっちゅう私の周りに出没していたのに、どういう風の吹き回しだろうか。一応村を出るのに挨拶だけはしておこうかと思ったけど、朝から一切姿を見ていなかった。
まぁ、いいか。いても面倒だし、いないに越したことはないもんね。
「そうでしたか。ダグラスなら多分、里帰り中の嫁を迎えに村の入り口辺りにいるかと」
「さ、里帰り中の嫁?」
理解できない単語があって思わず聞き返す。
え? は? 今、嫁って言った? 私の聞き間違いではないよね。え? え?
隣にいるヴィルを見れば、私と同じように絶句していた。
「そうなんです。今ダグラスの嫁は隣村に出産のために里帰りしておりまして、ちょうど今日帰ってくる予定なんです」
「そ、そうなんですね」
あまりの衝撃に言葉を失う。
浮気性だとは思っていたが、まさか結婚し親になってもこのありさまとは。
とはいえ、すぐにと言っても私の魔力が戻らなかったせいで一カ月以上は滞在していたのだが。
「長らく大変お世話になりました。長期間、家をお借りしてしまって申し訳ありません」
「いえいえ、困ったときはお互いさまですから。それに、ヴィルさんとペットの方には村民達もお世話になりましたし」
たまにいないときがあるとは思ってたけど、私が寝ている間にそれぞれ村人達に何か奉仕をしていたらしい。本人達は全然そんなことを言っていなかったが。
彼らの顔を見ると素知らぬフリしてそっぽを向いている。相変わらず恥ずかしがり屋だ。
「そうだったんですね。お役に立てたのであれば光栄です。では、私からも感謝の証としてこの村の繁栄と平穏のために加護を授けましょう。それから滞在のお礼として、魔物避けの魔法壁と村人達が多少幸福になる贈り物を」
パンッ!
手を叩くと、まるで花火のように魔法が打ち上がり、弾ける。大衆向けの派手な魔法なのだが、これがわかりやすくて評判がいいのだ。
現に村人達の歓声が聞こえ、はしゃぐ子供達の声が聞こえる。ちなみに中身は回復力と幸福度アップの魔法だ。
「あれ、そういえばダグは?」
「おや、聖女様。ダグラスをご存知で?」
「えぇ、まぁ……昔の知り合いでして」
あれだけしょっちゅう私の周りに出没していたのに、どういう風の吹き回しだろうか。一応村を出るのに挨拶だけはしておこうかと思ったけど、朝から一切姿を見ていなかった。
まぁ、いいか。いても面倒だし、いないに越したことはないもんね。
「そうでしたか。ダグラスなら多分、里帰り中の嫁を迎えに村の入り口辺りにいるかと」
「さ、里帰り中の嫁?」
理解できない単語があって思わず聞き返す。
え? は? 今、嫁って言った? 私の聞き間違いではないよね。え? え?
隣にいるヴィルを見れば、私と同じように絶句していた。
「そうなんです。今ダグラスの嫁は隣村に出産のために里帰りしておりまして、ちょうど今日帰ってくる予定なんです」
「そ、そうなんですね」
あまりの衝撃に言葉を失う。
浮気性だとは思っていたが、まさか結婚し親になってもこのありさまとは。
0
お気に入りに追加
90
あなたにおすすめの小説

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~
夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。
「聖女なんてやってられないわよ!」
勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。
そのまま意識を失う。
意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。
そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。
そしてさらには、チート級の力を手に入れる。
目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。
その言葉に、マリアは大歓喜。
(国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!)
そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。
外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。
一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる