ダメンズメーカー聖女 〜結婚したくて尽くしまくってたら最強の聖女になっちゃいました〜

鳥柄ささみ

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第六十三話 証拠

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「俺ならシオンを満足させられるし、適任じゃないか? 困ってるんだろ? 知らないヤツとそういうことするより、俺とヤったほうが具合がいいだろうし」

 そう言って手を握ってくるダグラス。まさかいきなり手を握られるとは思わず、引っ込め損ねてしまった。
 それをどう解釈したのか、さわさわといやらしい手つきで撫でられて、ぞわぞわぞわっと悪寒が走る。

「やだっ! やめてよっ! 離してっ!!」
「いいだろ? なっ?」
「シオンが嫌がっているだろ! やめろよ!」
「ヴィル……っ」

 ヴィルがダグラスの腕を掴んで睨んでいる。ヴィルがこんな風に声を荒げて怒っているところなんて見たことがなかったから、びっくりした。

「だから、お前はシオンのなんなわけ? 別に彼氏でも何でもないんだろ? だったら俺達の邪魔しないでくれる?」
「か、彼氏ではないかもしれないが……婚約者だ!」
「は?」

 えぇぇぇぇぇ!!!!?

 内心で叫ぶも、きっと嘘も方便ということで私のことを庇うために言ってくれているのだろう。だったら私も話を合わせないと、とヴィルの腕にしがみついた。

「そ、そうなの。ヴィルと私、婚約してるの。ちゃんとヴィルのお父様にもご挨拶は済ませているわ!」

 聖女になる際に「ヴィルと結婚してもいい」と許可したくらいだし、これは嘘ではない。実際ちゃんと婚約してるわけではないけど、ダグラスを騙すくらいはできるだろう。

「証拠は? じゃあ、証拠を見せろよ」
「証拠!? い、いきなり証拠と言われても……」

 ヴィルと視線を合わせる。証拠と言われても提示するものなど何もない。

「婚約してるっつーなら、今ここでキスの一つや二つできるだろ? ほら、やってみろよ。ん?」

 ダグラスが私とヴィルを挑発してくる。

「いいわよ。ねぇ? ヴィル」
「は? え? あ、あぁ、そうだな……!」

 そこまで言われたらここは覚悟を決めてするっきゃないとヴィルに向き直る。
 ヴィルの視線は泳ぎまくってて動揺しているのがわかる。
 確かに挑発されてする行為ではないとは思うが、もう既にマダシで正気に戻すために一方的ではあるものの一度はキスを済ませているわけだし、一度も二度も変わらないだろう。

「ヴィル。屈んで」
「え? あ、あぁ、そうだな!」

 さっきから同じことしか言ってないけど大丈夫か?

 緊張のせいか、顔を真っ赤にしながら屈んでゆっくりと近づいてくるヴィル。なんかそこまで緊張されると私も伝染してなんだか緊張してくる。

 前も思ったけど、ヴィルは顔がいいし、優しいし、王子だし、そんな人にキスしてもいいのだろうか?

 緊張し過ぎて余計なことをぐるぐると考えてしまう。
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