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第五十四話 昏睡
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「ん……あれ、私……?」
目が覚めると見知らぬ天井だった。見回すと、どうやらどこかの家らしい。
身体を動かそうにも今まで感じたことがないほど重く感じて、節々も痛い。
ついでに頭も痛いし、身体も燃えるように熱くて、なぜか胸も圧迫されているように苦しくて、息も絶え絶えだ。
正直、死にそうなくらいつらい。こんなことは初めてだった。
あー、私シュド=メルを倒して、それからどうしたんだっけ?
最後の記憶は私を見てクシャっと泣きそうな表情をしていたヴィルの顔。そこから全く記憶はない。
あー、私ぶっ倒れたのか。それで誰かがここまで運んでくれたのか。
回らない頭で現状を推測する。
てか、私が使い物にならない状態でヴィルとグルーのみのパーティーはきっと大変だっただろうな。なんだかんだでこの旅仕切ってたの私だし。
まぁ、でもヴィルだけじゃなくてグルーもいたからどうにかなったかな。
意識を失ったときのことをあれやこれやと考えていると、不意に「シオン!!」とヴィルの声が聞こえてそちらを向いた。
「おー、ヴィル~……ぐぇっ」
ヴィルが思いきり抱きつくようにのしかかってきて、カエルが潰れたような声が漏れる。するとすぐさまヴィルは離れてくれたが、その目には薄らと涙が滲んでいた。
「この……バカヤロウッ!!」
「起きて早々に罵倒って酷くない?」
起き抜けにバカヤロウはどうなのか。いくら王子と言えども失礼じゃなかろうか。
「シオンは無理しすぎなんだ! こっちは心配したんだぞ!! 三日も寝たきりで!!」
「え、三日も私寝てたの?」
体感的には半日くらいだったが、まさかの三日も寝込んでいたことに驚く。しかも三日寝てたはずなのに体力その他が戻ってないことにも驚いた。
まだ若いと思っていたつもりだが、思いのほか若くなかったのかとちょっとショックを受ける。
「本当に死んだかと思ったんだぞ……バカ」
「ごめん。そんなにしょんぼりしないでよ」
「しょんぼりしてないっ。ただ、シオンが生きててよかったと思っただけだ」
ベッドサイドの椅子に腰掛けて項垂れるヴィルの頭を撫でる。以前触ったときに比べて髪に艶がない気がする。疲労だろうか。それともストレスのせいだろうか。
「心配かけてごめんね」
「全くだ。こっちは生きた心地がしなかったんだぞ。シオンが倒れそうになったのを支えたら、体温はすごい下がってて氷みたいに冷えきっていたし、抱えたら異様な軽さだったし」
「え、私のこと持ち上げたの?」
「そりゃ、目の前で倒れられたらオレが抱きかかえて移動するしかないだろう。それに、思ったよりもシオンは軽かったしな」
「ちょっと、思ったよりってのは余計なんですけど」
とりあえず重いと思われなかったことにホッとする。乙女にとっては男性から重いと思われるのは致命的だ。
「でも、ありがとう」
「ん」
「……はぁ、なんじゃなんじゃ。そこでぶちゅっとチューの一つでもせんのか?」
目が覚めると見知らぬ天井だった。見回すと、どうやらどこかの家らしい。
身体を動かそうにも今まで感じたことがないほど重く感じて、節々も痛い。
ついでに頭も痛いし、身体も燃えるように熱くて、なぜか胸も圧迫されているように苦しくて、息も絶え絶えだ。
正直、死にそうなくらいつらい。こんなことは初めてだった。
あー、私シュド=メルを倒して、それからどうしたんだっけ?
最後の記憶は私を見てクシャっと泣きそうな表情をしていたヴィルの顔。そこから全く記憶はない。
あー、私ぶっ倒れたのか。それで誰かがここまで運んでくれたのか。
回らない頭で現状を推測する。
てか、私が使い物にならない状態でヴィルとグルーのみのパーティーはきっと大変だっただろうな。なんだかんだでこの旅仕切ってたの私だし。
まぁ、でもヴィルだけじゃなくてグルーもいたからどうにかなったかな。
意識を失ったときのことをあれやこれやと考えていると、不意に「シオン!!」とヴィルの声が聞こえてそちらを向いた。
「おー、ヴィル~……ぐぇっ」
ヴィルが思いきり抱きつくようにのしかかってきて、カエルが潰れたような声が漏れる。するとすぐさまヴィルは離れてくれたが、その目には薄らと涙が滲んでいた。
「この……バカヤロウッ!!」
「起きて早々に罵倒って酷くない?」
起き抜けにバカヤロウはどうなのか。いくら王子と言えども失礼じゃなかろうか。
「シオンは無理しすぎなんだ! こっちは心配したんだぞ!! 三日も寝たきりで!!」
「え、三日も私寝てたの?」
体感的には半日くらいだったが、まさかの三日も寝込んでいたことに驚く。しかも三日寝てたはずなのに体力その他が戻ってないことにも驚いた。
まだ若いと思っていたつもりだが、思いのほか若くなかったのかとちょっとショックを受ける。
「本当に死んだかと思ったんだぞ……バカ」
「ごめん。そんなにしょんぼりしないでよ」
「しょんぼりしてないっ。ただ、シオンが生きててよかったと思っただけだ」
ベッドサイドの椅子に腰掛けて項垂れるヴィルの頭を撫でる。以前触ったときに比べて髪に艶がない気がする。疲労だろうか。それともストレスのせいだろうか。
「心配かけてごめんね」
「全くだ。こっちは生きた心地がしなかったんだぞ。シオンが倒れそうになったのを支えたら、体温はすごい下がってて氷みたいに冷えきっていたし、抱えたら異様な軽さだったし」
「え、私のこと持ち上げたの?」
「そりゃ、目の前で倒れられたらオレが抱きかかえて移動するしかないだろう。それに、思ったよりもシオンは軽かったしな」
「ちょっと、思ったよりってのは余計なんですけど」
とりあえず重いと思われなかったことにホッとする。乙女にとっては男性から重いと思われるのは致命的だ。
「でも、ありがとう」
「ん」
「……はぁ、なんじゃなんじゃ。そこでぶちゅっとチューの一つでもせんのか?」
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