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第五十話 シュド=メル
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「……っ、シオン?」
唇を離した瞬間、名前を呼ばれて目を瞠る。どうやらヴィルは正気に戻ったらしい。
「ヴィル!? え、あれ? 正気に戻ったの?」
まさか自分の口づけで正気に戻るとは思わず焦る。
あれ、おかしいな。真実の愛の口づけという話では? 聞いてた話と違うぞ。
ヴィルが正気に戻ったことは喜ばしいが、思ってもみない状況に混乱する。とはいえ、今はそんなこと言っている余裕はあまりなかった。
「正気とはどういうことだ? というかシオン、オレに……」
「それについての詳しい説明はあと! とにかく、今は逃げることに専念して!」
「逃げる? それはどういう……って、なっ! うわぁああああ! 一体、何がどうなってるんだ!?」
大きな揺れと、周りの状況を見て慌て出すヴィル。
そりゃ目の前であらゆるものが崩壊していたら誰だって驚くだろう。
しかもさっきから地下から魔物が出ようとしているせいか、いくつも触手が地上に這い出てきていて、さらに状況が悪化していた。
「簡単に言うと、魔物のせいで都市が壊滅状態」
「な、何だって!? どうしてこんなことになっているんだ。というか、都市の人達は、みんなは無事なのか!?」
この場ですぐにちゃんと国民の心配をするヴィルはさすが王子の鑑と言えるだろう。洗脳されてなかったらもっとよかったが。
「大丈夫! 私を誰だと思っているの。最強の聖女よ? ちゃんとここの住人は全員外に逃してある。あとはグルーが戻ってきたらヴィルは乗って外に出て」
「オレは、って……シオンはどうするんだ」
「私? 私はもちろん、ここに残るわよ」
「はぁ!? 何でだよ!?」
「そりゃだって魔物討伐しなきゃだし」
「討伐!?」
このやりとりの既視感。
さっきグルーと同じやりとりをしたなぁと思いながら、驚きすぎて口が開きっぱなしのヴィルの肩をポンと叩いた。
「大丈夫大丈夫! 私、最強の聖女だから!」
「いや、シオンが強いのはわかっているが、さすがにこれはグルーの比じゃないだろう。というか、魔物討伐って魔物は何体いるんだ!?」
「あ、そっか。ヴィルはまだその辺もよく知らなかったんだっけ。この都市の下にいるわよ、大型なのが一体。都市のエネルギー全部吸い取ってすくすく育って、それが今から外に出ようとしてるとこ。ほら、あれ全部魔物の触手」
「はぁぁぁぁぁ!?? あれ複数魔物じゃないのか!? ちょっと待て、どう考えてもでかいなんてもんじゃないだろ!」
ゴゴゴゴゴゴ……
地面に大きな亀裂が稲妻状に入って地割れを起こす。そしてその隙間がだんだんと大きくなると、そこからにゅるっとヤツが姿を現した。
【アト少シ、アトモウ少シデ完璧ナ姿ニナレタハズガ……! 邪魔ヲシオッテ……!!】
「ぎゃああああああ!! なんじゃこりゃああああ!!」
「ヴィル、煩い! こいつはシュド=メルよ!」
「何だそれ!?」
「シュド=メルはクトーニアンの長。不死身で、地下に巣食っている近づくものを何でも取り込んでしまう魔物よ! 多分そうだとは思っていたけど、さすがにここまで大きいのは私も初めて見たわ」
「不死身!? 何でも取り込む!? こんなのが地上に出たらマダシどころの問題じゃないぞ! 国内全体が危ないじゃないか!」
「わかってるわよ! だから私が討伐するって言ってるでしょ! ヴィルは離れてて! また洗脳されたら厄介だから」
「シオン、戻ってきたぞ!」
「グルーおかえり~! じゃあ、ヴィルいってらっしゃーい!!」
「……は? おい、シオン!?」
私は大きく腕まくりをしてヴィルの首根っこを掴むと、こちらに向かって戻ってきていたグルーの背に向かって全力で放り投げる。
「うわああああああ!!」
絶叫しながら飛ばされるヴィルをグルーがしっかりと背で受け止める。ヴィルも落ちるまいと必死にしがみついていた。
唇を離した瞬間、名前を呼ばれて目を瞠る。どうやらヴィルは正気に戻ったらしい。
「ヴィル!? え、あれ? 正気に戻ったの?」
まさか自分の口づけで正気に戻るとは思わず焦る。
あれ、おかしいな。真実の愛の口づけという話では? 聞いてた話と違うぞ。
ヴィルが正気に戻ったことは喜ばしいが、思ってもみない状況に混乱する。とはいえ、今はそんなこと言っている余裕はあまりなかった。
「正気とはどういうことだ? というかシオン、オレに……」
「それについての詳しい説明はあと! とにかく、今は逃げることに専念して!」
「逃げる? それはどういう……って、なっ! うわぁああああ! 一体、何がどうなってるんだ!?」
大きな揺れと、周りの状況を見て慌て出すヴィル。
そりゃ目の前であらゆるものが崩壊していたら誰だって驚くだろう。
しかもさっきから地下から魔物が出ようとしているせいか、いくつも触手が地上に這い出てきていて、さらに状況が悪化していた。
「簡単に言うと、魔物のせいで都市が壊滅状態」
「な、何だって!? どうしてこんなことになっているんだ。というか、都市の人達は、みんなは無事なのか!?」
この場ですぐにちゃんと国民の心配をするヴィルはさすが王子の鑑と言えるだろう。洗脳されてなかったらもっとよかったが。
「大丈夫! 私を誰だと思っているの。最強の聖女よ? ちゃんとここの住人は全員外に逃してある。あとはグルーが戻ってきたらヴィルは乗って外に出て」
「オレは、って……シオンはどうするんだ」
「私? 私はもちろん、ここに残るわよ」
「はぁ!? 何でだよ!?」
「そりゃだって魔物討伐しなきゃだし」
「討伐!?」
このやりとりの既視感。
さっきグルーと同じやりとりをしたなぁと思いながら、驚きすぎて口が開きっぱなしのヴィルの肩をポンと叩いた。
「大丈夫大丈夫! 私、最強の聖女だから!」
「いや、シオンが強いのはわかっているが、さすがにこれはグルーの比じゃないだろう。というか、魔物討伐って魔物は何体いるんだ!?」
「あ、そっか。ヴィルはまだその辺もよく知らなかったんだっけ。この都市の下にいるわよ、大型なのが一体。都市のエネルギー全部吸い取ってすくすく育って、それが今から外に出ようとしてるとこ。ほら、あれ全部魔物の触手」
「はぁぁぁぁぁ!?? あれ複数魔物じゃないのか!? ちょっと待て、どう考えてもでかいなんてもんじゃないだろ!」
ゴゴゴゴゴゴ……
地面に大きな亀裂が稲妻状に入って地割れを起こす。そしてその隙間がだんだんと大きくなると、そこからにゅるっとヤツが姿を現した。
【アト少シ、アトモウ少シデ完璧ナ姿ニナレタハズガ……! 邪魔ヲシオッテ……!!】
「ぎゃああああああ!! なんじゃこりゃああああ!!」
「ヴィル、煩い! こいつはシュド=メルよ!」
「何だそれ!?」
「シュド=メルはクトーニアンの長。不死身で、地下に巣食っている近づくものを何でも取り込んでしまう魔物よ! 多分そうだとは思っていたけど、さすがにここまで大きいのは私も初めて見たわ」
「不死身!? 何でも取り込む!? こんなのが地上に出たらマダシどころの問題じゃないぞ! 国内全体が危ないじゃないか!」
「わかってるわよ! だから私が討伐するって言ってるでしょ! ヴィルは離れてて! また洗脳されたら厄介だから」
「シオン、戻ってきたぞ!」
「グルーおかえり~! じゃあ、ヴィルいってらっしゃーい!!」
「……は? おい、シオン!?」
私は大きく腕まくりをしてヴィルの首根っこを掴むと、こちらに向かって戻ってきていたグルーの背に向かって全力で放り投げる。
「うわああああああ!!」
絶叫しながら飛ばされるヴィルをグルーがしっかりと背で受け止める。ヴィルも落ちるまいと必死にしがみついていた。
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