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第四十四話 幻覚
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「うぅうううぅうう、ヴィヴリタス家だ! 我々はヴィヴリタス家に仕えている!!」
「ヴィヴリタス家からの依頼で私を殺そうと?」
「そうだ! この土地の調査をする者は全て始末しろと言われている!」
「へぇ。何で?」
「そ、れは……」
「言わないと魔物の餌よ? それに、そこまで言っちゃったのだもの、もう何を吐いたところで処遇は変わらないわよ」
「っっっっっっっ! ヴィヴリタス家が仕える魔物に手出しをさせないためだ!」
「ということは、ヴィヴリタス家は魔物に仕えているということ?」
「あぁ、そうだよ! この都市は魔物に魔力を捧げるために作り上げたものだからな!」
「ふぅん、なるほど。そういうことだったのね。わかったわ、色々と教えてくれてありがとう。では、おやすみ」
パンッと手を叩くと意識を失う男。その身体は焦げつきもなければ、燃やされてすらなく、先程の彼が見た光景や感じたものは全て私が作った幻覚だった。
先に事情聴取した男達にも既に幻覚による尋問を終えており、ほぼほぼ言ってることは同じだったので、彼らがヴィヴリタス家に雇われているというのは間違いないだろう。
「大体証言は一致してるわね。ヴィヴリタス家が絡んでたのはある程度想定してたけど、まさか魔物も絡んでいたとは。しかも、ヴィヴリタス家が魔物に使役されていた側だったなんてね。どうりで数年でここまで都市を発展させて資産家になったわけだわ。でもこれで黒幕はわかったし、もう土を掘らずに済みそうなのはよかったわ」
魔法を使うな、というのも恐らく感知魔法を使われたくない言い訳だろう。そうなると市長もグルと言うことか。いや、ヴィヴリタス家に逆らえなさそうだったから、ただ単に言いなりになってただけかもしれないけど。
とりあえず、これは早々に片をつけないとまずそうだ。
魔物がこの都市にある魔力を吸い上げているというのが事実ならば、現状これほどまでに土壌に呪いが漏れ出してることを考えると結構な力が蓄えられて、蓄えきれずに溢れてるということの証左に違いない。
このままだとじきに都市ごとその魔物に飲み込まれる可能性だってある。
「ちょっとは骨のある仕事になりそうね」
これは大掛かりなことになりそうだと身構える。ギルドでもこれほどまでの大きな案件はなかったため、ちょっとした武者震いを起こした。
「まずはこの都市からどうやって人を追い出すか。それから、なるべく早くヴィルとグルーと合流しないと」
このままあの令嬢のとこにいたらまずいことになりそうだと思いつつも、恐らく彼女のヴィルへの執着ぶりを考えるとすぐに命を奪われるようなことはないと考える。
であれば、まず優先すべきはここの都市の人々だ。彼らをどうにかこの都市から出さないと。
私は過去の経験を振り返りながら、知恵を絞って最善の方法を導き出すのだった。
「ヴィヴリタス家からの依頼で私を殺そうと?」
「そうだ! この土地の調査をする者は全て始末しろと言われている!」
「へぇ。何で?」
「そ、れは……」
「言わないと魔物の餌よ? それに、そこまで言っちゃったのだもの、もう何を吐いたところで処遇は変わらないわよ」
「っっっっっっっ! ヴィヴリタス家が仕える魔物に手出しをさせないためだ!」
「ということは、ヴィヴリタス家は魔物に仕えているということ?」
「あぁ、そうだよ! この都市は魔物に魔力を捧げるために作り上げたものだからな!」
「ふぅん、なるほど。そういうことだったのね。わかったわ、色々と教えてくれてありがとう。では、おやすみ」
パンッと手を叩くと意識を失う男。その身体は焦げつきもなければ、燃やされてすらなく、先程の彼が見た光景や感じたものは全て私が作った幻覚だった。
先に事情聴取した男達にも既に幻覚による尋問を終えており、ほぼほぼ言ってることは同じだったので、彼らがヴィヴリタス家に雇われているというのは間違いないだろう。
「大体証言は一致してるわね。ヴィヴリタス家が絡んでたのはある程度想定してたけど、まさか魔物も絡んでいたとは。しかも、ヴィヴリタス家が魔物に使役されていた側だったなんてね。どうりで数年でここまで都市を発展させて資産家になったわけだわ。でもこれで黒幕はわかったし、もう土を掘らずに済みそうなのはよかったわ」
魔法を使うな、というのも恐らく感知魔法を使われたくない言い訳だろう。そうなると市長もグルと言うことか。いや、ヴィヴリタス家に逆らえなさそうだったから、ただ単に言いなりになってただけかもしれないけど。
とりあえず、これは早々に片をつけないとまずそうだ。
魔物がこの都市にある魔力を吸い上げているというのが事実ならば、現状これほどまでに土壌に呪いが漏れ出してることを考えると結構な力が蓄えられて、蓄えきれずに溢れてるということの証左に違いない。
このままだとじきに都市ごとその魔物に飲み込まれる可能性だってある。
「ちょっとは骨のある仕事になりそうね」
これは大掛かりなことになりそうだと身構える。ギルドでもこれほどまでの大きな案件はなかったため、ちょっとした武者震いを起こした。
「まずはこの都市からどうやって人を追い出すか。それから、なるべく早くヴィルとグルーと合流しないと」
このままあの令嬢のとこにいたらまずいことになりそうだと思いつつも、恐らく彼女のヴィルへの執着ぶりを考えるとすぐに命を奪われるようなことはないと考える。
であれば、まず優先すべきはここの都市の人々だ。彼らをどうにかこの都市から出さないと。
私は過去の経験を振り返りながら、知恵を絞って最善の方法を導き出すのだった。
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