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第四十話 謎
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「でも、それほどの資産家なのに男爵令嬢って珍しいわね。爵位に詳しいほうではないけど、そういうのってもっと高い位になるんじゃないの?」
「あー、それなんだが彼女達の家がここまで急成長したのはここ数年の話なんだ」
「……はぁ? え、ちょっと待ってよ。どういうこと? ここ数年? 数十年の間違いじゃなく?」
理解ができなくて混乱する。それほどの資産家が降って湧くものなのか。いや、一般的に考えてありえないだろう。
しかも運河を扱って財をなしているというならなおさらだ。どう見たってこの運河を使った流通網はそんな数年規模のものではないのは素人目から見てもわかる。
「あぁ。そう思うのも無理はないが、この運河ができたのは確かに数年前。突然のことに当時は誰もが混乱して原因や真実の解明などが騒がれたが、利便さや収益性などからうやむやになってしまったんだ」
「何それ。めちゃくちゃ怪しいやつじゃない!」
突然、男爵家が「我が家がこの運河を作りました!」ってなって、おかしいと思わないものなのか。普通は思うと思うんだけど。え、私の常識がおかしいとかそういうんじゃないよね。
ちょっと自分の常識が信じられなくなってくる。
「元々この都市はそこまで規模は大きくなかったんだが、この運河のおかげで年々人口が増えてここまで発展したということもあって誰も口出ししなかったらしい」
「それは王家の権限でどうにかできなかったの? そんな奇怪なことがあったら普通は調査するでしょ」
「普通はな。だが、そういう声が上がってもすぐにうやむやになることが多くてな。王家でも問題提起されたが、結局現状維持になっていることも考えると、恐らくその辺も含めてシオンに調査してほしいとのことだと思う」
「あー……なるほど。一応この旅って私が結婚しても聖女を続けられるかどうかの証左のための課題だったものね」
「そういうことだ。父さんはそういうとこは策士だから」
なるほど、聖女の結婚は簡単には認めさせないということね。
考えてみたらどれもこれも簡単そうに見えてちょっとクセのある依頼だし、ヴィルが同行してる部分も私がちゃんとフォローできるかどうかの枷になってるものね。
ぐぬぬぬ。国王め……!
「とりあえず、こっちの報告もしておくけど、今やってることはスコップ渡されてグルーと一緒に穴掘り中」
「は?」
「魔法使わないで土壌調査しろって市長に言われてね。一応確かに呪いの類いは感知できるけど、まだ本体が見つからなくて」
「俺がいない間にそんなことになってたのか」
「そうなのよ。てか、信じられる!? 聖女にスコップ片手に穴掘りさせるって! ありえなくない!?」
「……あー、なんか、悪いな」
「もっと労ってよ! もうくったくたにくたびれたんだから! しかも誰かさんは連行されてっちゃうし。ねぇ、グルー!」
「グルーはとっくにそこで寝てるぞ」
「え、ウソ!?」
ヴィルが指差した方向を見ると、ふかふかのベッドの上でスヤスヤと気持ちよさそうに寝てるグルー。どうりで静かだと思った。
「はぁ、しょうがない。グルーにも手伝ってもらったから疲れているんでしょうね。いっそあの令嬢避け代わりにグルーをこのままここに置いていくわ」
「何から何まで悪いな」
「もう今更だし。そうそう今更といえば、ヴィルってヴィデルハルトって言う名だったのね」
「それは本当に今更だな」
思い出したかのように言えば、ヴィルが笑う。どうやらちょっとは気が紛れたようだ。
「あー、それなんだが彼女達の家がここまで急成長したのはここ数年の話なんだ」
「……はぁ? え、ちょっと待ってよ。どういうこと? ここ数年? 数十年の間違いじゃなく?」
理解ができなくて混乱する。それほどの資産家が降って湧くものなのか。いや、一般的に考えてありえないだろう。
しかも運河を扱って財をなしているというならなおさらだ。どう見たってこの運河を使った流通網はそんな数年規模のものではないのは素人目から見てもわかる。
「あぁ。そう思うのも無理はないが、この運河ができたのは確かに数年前。突然のことに当時は誰もが混乱して原因や真実の解明などが騒がれたが、利便さや収益性などからうやむやになってしまったんだ」
「何それ。めちゃくちゃ怪しいやつじゃない!」
突然、男爵家が「我が家がこの運河を作りました!」ってなって、おかしいと思わないものなのか。普通は思うと思うんだけど。え、私の常識がおかしいとかそういうんじゃないよね。
ちょっと自分の常識が信じられなくなってくる。
「元々この都市はそこまで規模は大きくなかったんだが、この運河のおかげで年々人口が増えてここまで発展したということもあって誰も口出ししなかったらしい」
「それは王家の権限でどうにかできなかったの? そんな奇怪なことがあったら普通は調査するでしょ」
「普通はな。だが、そういう声が上がってもすぐにうやむやになることが多くてな。王家でも問題提起されたが、結局現状維持になっていることも考えると、恐らくその辺も含めてシオンに調査してほしいとのことだと思う」
「あー……なるほど。一応この旅って私が結婚しても聖女を続けられるかどうかの証左のための課題だったものね」
「そういうことだ。父さんはそういうとこは策士だから」
なるほど、聖女の結婚は簡単には認めさせないということね。
考えてみたらどれもこれも簡単そうに見えてちょっとクセのある依頼だし、ヴィルが同行してる部分も私がちゃんとフォローできるかどうかの枷になってるものね。
ぐぬぬぬ。国王め……!
「とりあえず、こっちの報告もしておくけど、今やってることはスコップ渡されてグルーと一緒に穴掘り中」
「は?」
「魔法使わないで土壌調査しろって市長に言われてね。一応確かに呪いの類いは感知できるけど、まだ本体が見つからなくて」
「俺がいない間にそんなことになってたのか」
「そうなのよ。てか、信じられる!? 聖女にスコップ片手に穴掘りさせるって! ありえなくない!?」
「……あー、なんか、悪いな」
「もっと労ってよ! もうくったくたにくたびれたんだから! しかも誰かさんは連行されてっちゃうし。ねぇ、グルー!」
「グルーはとっくにそこで寝てるぞ」
「え、ウソ!?」
ヴィルが指差した方向を見ると、ふかふかのベッドの上でスヤスヤと気持ちよさそうに寝てるグルー。どうりで静かだと思った。
「はぁ、しょうがない。グルーにも手伝ってもらったから疲れているんでしょうね。いっそあの令嬢避け代わりにグルーをこのままここに置いていくわ」
「何から何まで悪いな」
「もう今更だし。そうそう今更といえば、ヴィルってヴィデルハルトって言う名だったのね」
「それは本当に今更だな」
思い出したかのように言えば、ヴィルが笑う。どうやらちょっとは気が紛れたようだ。
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