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第三十七話 魔力
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「魔力があることはいいことじゃが、あまりそれを表に出さないほうがいいかもしれないのう」
「何で? やっぱり魔力が溢れてる女ってモテないかな?」
「それはどうか知らんが、魔力を狙った魔物に攫われる可能性や喰われる可能性もあるからの。気をつけるに越したことはないと思っての」
「あーそういうことね。なるほど。まぁ、そんなことされそうになったら返り討ちにするけど」
「威勢がいいのは結構じゃが、みながみな一筋縄でいくような魔物ではないぞ?」
「何よ、グルーったら私の心配してくれるの?」
「別に……そういうわけじゃないが。契約上お主がいなくなったらワシも共倒れになる可能性があるからのう」
「はいはい。そういうことにしといてあげる」
素直じゃないなぁとニマニマ笑っていると「ふんっ」と鼻を鳴らしてそっぽを向くグルー。ツンデレか。
「そうじゃ、魔力が余ってるのならあやつの様子でも確認したらどうじゃ?」
「あやつ?」
「ヴィルじゃよ。結局連れ去られたままじゃろう?」
「あー、すっかり忘れてた。でもどうせ、あのどっかのご令嬢とイチャイチャしてるんじゃない?」
「なんじゃ嫉妬か?」
「だから違うって。私の手伝いもしないでのうのうとしてるのが気に食わないだけ」
やたらと私とヴィルをくっつけようとしてくるグルー。
ただの師弟関係だというのに。それに、百歩譲ってそういう関係になったとしても身分差を考えると現実的じゃない。
そもそもヴィルは見た目は好みだけど、性格がきっと合わないと思う。王子だし。逆にヴィルも私みたいな女など願い下げなはずだ。
「そうは思えないがのう。とりあえず、魔力消費がてら様子を見に行ってやったほうがいいじゃろ? 情報交換もせねばならないし」
「まー、それもそうね。じゃあ、行きましょうか」
別に、ヴィルのことが気になるから行くわけじゃない。これはあくまで情報交換のためだ。
あのご令嬢とイチャイチャしてようがナニしてようが私が知ったことではない。
って行って、ナニ中であったら気まずいけど、さすがにここでコトに及ぼうとはしないだろう。多分。
私はそう自分で自分に言い訳をしつつ、あらかじめヴィルに持たせていた自分の魔力を含ませた魔石を頼りに位置を特定する。
「我が力を辿り、彼の者へと我らを導け。セドオン!」
詠唱すると、雷雲が私達を包み込む。
そして、一瞬にして雷雲の中に飲み込まれると、目の前には大きな部屋のど真ん中にあるベッドの上でひぐひぐと半泣き状態で服を乱しているヴィルがいた。
「……何やってんの」
「し、し、シオン~~~~!!!」
私を見るなり、わっと泣き出して縋りついてくるヴィル。
男性がここまで泣くのを初めて見た私は戸惑いながらも、よしよしと彼を受け入れて訳もわからず慰めるのだった。
「何で? やっぱり魔力が溢れてる女ってモテないかな?」
「それはどうか知らんが、魔力を狙った魔物に攫われる可能性や喰われる可能性もあるからの。気をつけるに越したことはないと思っての」
「あーそういうことね。なるほど。まぁ、そんなことされそうになったら返り討ちにするけど」
「威勢がいいのは結構じゃが、みながみな一筋縄でいくような魔物ではないぞ?」
「何よ、グルーったら私の心配してくれるの?」
「別に……そういうわけじゃないが。契約上お主がいなくなったらワシも共倒れになる可能性があるからのう」
「はいはい。そういうことにしといてあげる」
素直じゃないなぁとニマニマ笑っていると「ふんっ」と鼻を鳴らしてそっぽを向くグルー。ツンデレか。
「そうじゃ、魔力が余ってるのならあやつの様子でも確認したらどうじゃ?」
「あやつ?」
「ヴィルじゃよ。結局連れ去られたままじゃろう?」
「あー、すっかり忘れてた。でもどうせ、あのどっかのご令嬢とイチャイチャしてるんじゃない?」
「なんじゃ嫉妬か?」
「だから違うって。私の手伝いもしないでのうのうとしてるのが気に食わないだけ」
やたらと私とヴィルをくっつけようとしてくるグルー。
ただの師弟関係だというのに。それに、百歩譲ってそういう関係になったとしても身分差を考えると現実的じゃない。
そもそもヴィルは見た目は好みだけど、性格がきっと合わないと思う。王子だし。逆にヴィルも私みたいな女など願い下げなはずだ。
「そうは思えないがのう。とりあえず、魔力消費がてら様子を見に行ってやったほうがいいじゃろ? 情報交換もせねばならないし」
「まー、それもそうね。じゃあ、行きましょうか」
別に、ヴィルのことが気になるから行くわけじゃない。これはあくまで情報交換のためだ。
あのご令嬢とイチャイチャしてようがナニしてようが私が知ったことではない。
って行って、ナニ中であったら気まずいけど、さすがにここでコトに及ぼうとはしないだろう。多分。
私はそう自分で自分に言い訳をしつつ、あらかじめヴィルに持たせていた自分の魔力を含ませた魔石を頼りに位置を特定する。
「我が力を辿り、彼の者へと我らを導け。セドオン!」
詠唱すると、雷雲が私達を包み込む。
そして、一瞬にして雷雲の中に飲み込まれると、目の前には大きな部屋のど真ん中にあるベッドの上でひぐひぐと半泣き状態で服を乱しているヴィルがいた。
「……何やってんの」
「し、し、シオン~~~~!!!」
私を見るなり、わっと泣き出して縋りついてくるヴィル。
男性がここまで泣くのを初めて見た私は戸惑いながらも、よしよしと彼を受け入れて訳もわからず慰めるのだった。
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