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第二十九話 失恋
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「では、私達はこれで」
「もう行ってしまわれるのですか?」
「えぇ、まだ私達の救いを求めている方はたくさんいらっしゃいますので」
それらしいことを言って引き留めを上手く躱す。また二人の疑いの眼差しを感じるがそこはスルーする。
「そうですか、残念です。ぜひ二人の結婚式までいていただきたかったのですが」
「私も聖女様に結婚式を見ていただきたかったです」
「ピュア。聖女様はお忙しいのだから、ワガママを言ってはダメだよ」
出会ったときの陰鬱な感じはどこへやら。幸せいっぱいの表情を浮かべるジュン。
そしてその傍らにいるピュアはとても愛らしく、誰もが可愛いと思える容姿をしていて、そりゃこんな可愛い子のためなら自分が犠牲になるよねと納得した。
「魔物避けの魔法壁のことですが、一応この辺一帯と上空からの攻撃や侵入からも防げるように強化しておきました。それでももし何かあったときはこの魔石を利用してください。私の魔力を入れておりまして、あのグリフォン程度なら一瞬で滅却できるほどの魔法が複数回撃てるようになってます。もちろん非常時のみに使用できるようロックもかけておりますので、悪用しようとした場合は魔法で電流が流れるようになってます。あぁ、あとそれから、こちらは何かあった場合の連絡手段としての通信装置です。これがあれば近隣ギルドなどにすぐ連絡ができますので、いざというときにご活用を」
「な、なんと! 討伐だけでなくこれほどまでに今後のことを考えてくださるとは。重ね重ね、どうもありがとうございます」
「いえいえ。私はできることしかしておりませんから。それに、政府だけでは手が回らないこともありますし、ギルドで解決することもありますので、選択肢は多いに越したことはないかと。では、プハマの村にご多幸があることをお祈りして、私達はこれで。お二人とも、ご結婚おめでとうございます」
祈り魔法でこの村に幸福が継続的に起こるようにしておく。継続効果はそこまで長くないが、ちょっとした結婚祝いの置き土産だ。
「シオンってなんだかんだ言いつつも人がいいよな」
「何よ、急に」
村を出たところでヴィルが声をかけてくる。
しかも突然褒められて、思わず身構えてしまう。
「いや、失恋したのにあんなに色々尽くすって凄いよなって思って」
「失恋したとか言わないで。別に、ちょっといいなーって思っただけだし! それにピュアさん可愛かったからどうやっても勝ち目ないわよ」
「ほら、そういうとこ。人を貶すとかあんましないよな。女の敵は女と聞いていたが、シオンは案外そういうのないんだな」
「もう行ってしまわれるのですか?」
「えぇ、まだ私達の救いを求めている方はたくさんいらっしゃいますので」
それらしいことを言って引き留めを上手く躱す。また二人の疑いの眼差しを感じるがそこはスルーする。
「そうですか、残念です。ぜひ二人の結婚式までいていただきたかったのですが」
「私も聖女様に結婚式を見ていただきたかったです」
「ピュア。聖女様はお忙しいのだから、ワガママを言ってはダメだよ」
出会ったときの陰鬱な感じはどこへやら。幸せいっぱいの表情を浮かべるジュン。
そしてその傍らにいるピュアはとても愛らしく、誰もが可愛いと思える容姿をしていて、そりゃこんな可愛い子のためなら自分が犠牲になるよねと納得した。
「魔物避けの魔法壁のことですが、一応この辺一帯と上空からの攻撃や侵入からも防げるように強化しておきました。それでももし何かあったときはこの魔石を利用してください。私の魔力を入れておりまして、あのグリフォン程度なら一瞬で滅却できるほどの魔法が複数回撃てるようになってます。もちろん非常時のみに使用できるようロックもかけておりますので、悪用しようとした場合は魔法で電流が流れるようになってます。あぁ、あとそれから、こちらは何かあった場合の連絡手段としての通信装置です。これがあれば近隣ギルドなどにすぐ連絡ができますので、いざというときにご活用を」
「な、なんと! 討伐だけでなくこれほどまでに今後のことを考えてくださるとは。重ね重ね、どうもありがとうございます」
「いえいえ。私はできることしかしておりませんから。それに、政府だけでは手が回らないこともありますし、ギルドで解決することもありますので、選択肢は多いに越したことはないかと。では、プハマの村にご多幸があることをお祈りして、私達はこれで。お二人とも、ご結婚おめでとうございます」
祈り魔法でこの村に幸福が継続的に起こるようにしておく。継続効果はそこまで長くないが、ちょっとした結婚祝いの置き土産だ。
「シオンってなんだかんだ言いつつも人がいいよな」
「何よ、急に」
村を出たところでヴィルが声をかけてくる。
しかも突然褒められて、思わず身構えてしまう。
「いや、失恋したのにあんなに色々尽くすって凄いよなって思って」
「失恋したとか言わないで。別に、ちょっといいなーって思っただけだし! それにピュアさん可愛かったからどうやっても勝ち目ないわよ」
「ほら、そういうとこ。人を貶すとかあんましないよな。女の敵は女と聞いていたが、シオンは案外そういうのないんだな」
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