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第二十五話 異空間

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「どうなってるんだ、シオン!?」
「限定的に異空間を作ったの。さすがに山の中で好き勝手できないでしょ」
「そ、そうかもしれないが、なぜ俺も一緒に閉じ込めた!」
「え? だって、一緒に戦うんでしょ?」
「た、戦うけど、こんなに狭いとこでどうやって戦えと……」

 範囲は一キロ。確かに巨体のグリフォンがいると狭く感じるかもしれないが、動けない距離ではない。

「どうにかなるわよ。とにかく、気後れしない。こういう戦闘は気力の問題よ。強気でいかないと!」
「強気!? この状況で強気に戦えと!?」
「そうそう。自分は勝てる、てね! 大きさは関係ないわ」
「無茶苦茶すぎるだろ!」
「さっきからごちゃごちゃと! いくら範囲魔法を使えようと、ワシの敵ではないわー!」

 範囲魔法のせいで上空が使えないため、突進してくるグリフォン。見た目よりも素早いらしく、あっという間に目の前にやってきたところで私はパチンと指を弾く。すると、グリフォンが一瞬で地面に押し潰されるように這いつくばった。

「うがぁっ、何を……っ」
「重力操作」

 相手の体重が重ければ重いほど威力は増す魔法。そのため、パチン、パチンと指を鳴らすたびに、グリフォンは「おぉおおおぉぉお」と己の体重を支えきれずに立ち上がれない状態になっていた。
 それを呆気に取られながら眺めているヴィルに、「ほら、ぼんやりしてない」と声をかけるとハッと我にかえって剣を持ち直す。

「えっと、オレはどうすれば……?」
「だから討伐」
「これを? オレが?」
「そうそう。あぁ、大丈夫、ちゃんと固定してるから」

 グリフォンはもがくも、私が重力操作の魔法で固定してるため動けない状態だった。今なら確実に始末できるとヴィルに促すも、ヴィルはどんどん青褪めていく。

「いや、いくら固定されてもこれはオレには手が余るというか……」
「何でよ。刺すなり斬るなりすればいいでしょ」
「これを!? この剣で!??」
「え、そうだけど?」

 何を言っているんだ? と眉を顰めた瞬間、「シオン! 背後!!」とヴィルの切羽詰まった声。振り返るとそこには、最期の力を振り絞って私に牙を剥こうとしているグリフォンがいた。

「死ねぇぇぇぇ!!!」
「やだ」

 ひらりと躱して、華麗な右ストレートを決める。拳は見事にグリフォンの顔面を直撃し、めり込んだ。

「うぐぉぉおおお!!!」

 そのままグリフォンは吹っ飛び、異空間の壁にぶつかるとそのまま倒れた。

「……は? え? シオン?」
「あー、もう。思わず素手で殴っちゃったじゃない。私の手に傷がついたらどうしてくれんのよっ」

 あの巨体を拳一つで沈めた私に呆気に取られている様子のヴィル。
 私はつかつかと意識が朦朧としているグリフォンのところに行くと、グリフォンの身の丈に合わせた手斧を顕現させて、悠々と構えた。

「全く、嫁入り前の女を傷物にしようとするなんて度胸があるわね。……今すぐ三枚におろされたい?」

 私がにっこりと微笑んでグリフォンなど一刀両断できるほど巨大な大斧を見せつけると、グリフォンはぶわっと涙を溢れさせる。
 ヴィルは状況が飲み込めない様子でただ呆然と突っ立っていた。
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