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第二十四話 グリフォン
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ハッと顔を上げると、そこには自分達を覆い尽くすほどの大きな体躯をしたグリフォンが一体。
グリフォンの名に恥じぬ知性も備えているようで、人語を話しながら優雅に空中を旋回していた。
「で、でか! でかいぞ、あいつ!」
「そりゃ大きいわよ、グリフォンだもの。てか、語彙力」
これは、動揺しすぎて知能指数が落ちてるな。
ヴィルが今までにないくらい狼狽えているのがわかる。脚がガクガクと震えているのも、恐らく疲労によるものではないだろう。
「グリフォン、だと……!? あ、あれがか!?」
「えぇ、叡智の象徴と言われるグリフォンよ。ただ、同時に非常に獰猛でもある生き物だけど」
「叡智の象徴が獰猛だと!?」
ヴィルが目を白黒させている。
確かに、そんな反応も無理はない。ここまで大きいのは私も初めて見たし、素人で初見のヴィルはなおのこと怖いだろう。
というか、ヴィルってもしかして、巨大魔物遭遇するの初めて? この反応的に、どう考えても初めてよね。推奨レベルはザッと見て六十オーバーだし、こうなる前にもうちょっと場数踏ませておけばよかった。
今更なことを考えながら、いつこちらに襲いかかってきてもいいように準備をする。
持続回復と物理防御と魔障壁。あとは攻撃力アップと魔力アップとそれから……
「どういうことだよ! 叡智の象徴が獰猛って矛盾してるだろ! うわ!!」
「喧しい人間共だ。さっさと喰ろうてやろうか!!」
グリフォンが鋭い爪をこちらに向け、引き裂くように襲いかかってくる。だけど私も大人しく傍観するつもりはなかった。
「爆ぜろ!」
グリフォンを飲み込むように爆発させる。けれどグリフォンは間一髪で避けたのか、再び空へと旋回し、こちらから距離を取る。
「当たってないじゃないか!」
「わかってる!」
「強いんじゃないのか!?」
「さっきから煩いわね、ちょっとは黙ってて!」
「ほう、仲間割れか? わしとしてもそのほうが好都合だがのう」
ニタニタと口元を歪めるグリフォン。悪意に満ちたその顔はとても醜かった。
「その顔、ブサイクね!」
「なんじゃ、と……?」
「シオン、急に何を言い出すんだ!?」
「あーら、よく聞こえなかった? その顔が醜いって言ってるの! 自分のほうが強いとか思っちゃってるその慢心した顔! すっごいブサイク!!」
「人間風情が、このわしに舐めた口を……!」
グリフォンが怒りに満ちた顔で襲いかかってくる。そりゃそうだ。人間風情と見下している劣等種から自分がバカにされたら誰だって怒るだろう。
「っふ、かかった。……天から舞い降りる四つの柱よ」
「なっ、何だ!?」
「貴様、一体……!!」
頭上から降ってくる四つの柱。
それは私達を囲むように地面に突き刺さり、「ぎゃあ」と情けない声を上げてヴィルは頭を抱えてしゃがみこむ。まさか柱が降ってくるとは思わなかったのか、グリフォンは私に触れる前に身を翻した。
「束ね、固定し、新たな空間へと誘え。ディメンション! ……逃がさないわよ」
「っく! 何をした小娘!!」
柱と柱が光の魔障壁を構築し、簡易的な異空間を作り出す。この異空間を作り出すには範囲が限られているため、自分との距離を縮める必要があるのだが、上手く挑発に乗ってくれたおかげで無事に成功した。
ここなら足元や周りを気にせずに好きに戦える。魔法もいくらでもぶっ飛ばし放題だ。
グリフォンの名に恥じぬ知性も備えているようで、人語を話しながら優雅に空中を旋回していた。
「で、でか! でかいぞ、あいつ!」
「そりゃ大きいわよ、グリフォンだもの。てか、語彙力」
これは、動揺しすぎて知能指数が落ちてるな。
ヴィルが今までにないくらい狼狽えているのがわかる。脚がガクガクと震えているのも、恐らく疲労によるものではないだろう。
「グリフォン、だと……!? あ、あれがか!?」
「えぇ、叡智の象徴と言われるグリフォンよ。ただ、同時に非常に獰猛でもある生き物だけど」
「叡智の象徴が獰猛だと!?」
ヴィルが目を白黒させている。
確かに、そんな反応も無理はない。ここまで大きいのは私も初めて見たし、素人で初見のヴィルはなおのこと怖いだろう。
というか、ヴィルってもしかして、巨大魔物遭遇するの初めて? この反応的に、どう考えても初めてよね。推奨レベルはザッと見て六十オーバーだし、こうなる前にもうちょっと場数踏ませておけばよかった。
今更なことを考えながら、いつこちらに襲いかかってきてもいいように準備をする。
持続回復と物理防御と魔障壁。あとは攻撃力アップと魔力アップとそれから……
「どういうことだよ! 叡智の象徴が獰猛って矛盾してるだろ! うわ!!」
「喧しい人間共だ。さっさと喰ろうてやろうか!!」
グリフォンが鋭い爪をこちらに向け、引き裂くように襲いかかってくる。だけど私も大人しく傍観するつもりはなかった。
「爆ぜろ!」
グリフォンを飲み込むように爆発させる。けれどグリフォンは間一髪で避けたのか、再び空へと旋回し、こちらから距離を取る。
「当たってないじゃないか!」
「わかってる!」
「強いんじゃないのか!?」
「さっきから煩いわね、ちょっとは黙ってて!」
「ほう、仲間割れか? わしとしてもそのほうが好都合だがのう」
ニタニタと口元を歪めるグリフォン。悪意に満ちたその顔はとても醜かった。
「その顔、ブサイクね!」
「なんじゃ、と……?」
「シオン、急に何を言い出すんだ!?」
「あーら、よく聞こえなかった? その顔が醜いって言ってるの! 自分のほうが強いとか思っちゃってるその慢心した顔! すっごいブサイク!!」
「人間風情が、このわしに舐めた口を……!」
グリフォンが怒りに満ちた顔で襲いかかってくる。そりゃそうだ。人間風情と見下している劣等種から自分がバカにされたら誰だって怒るだろう。
「っふ、かかった。……天から舞い降りる四つの柱よ」
「なっ、何だ!?」
「貴様、一体……!!」
頭上から降ってくる四つの柱。
それは私達を囲むように地面に突き刺さり、「ぎゃあ」と情けない声を上げてヴィルは頭を抱えてしゃがみこむ。まさか柱が降ってくるとは思わなかったのか、グリフォンは私に触れる前に身を翻した。
「束ね、固定し、新たな空間へと誘え。ディメンション! ……逃がさないわよ」
「っく! 何をした小娘!!」
柱と柱が光の魔障壁を構築し、簡易的な異空間を作り出す。この異空間を作り出すには範囲が限られているため、自分との距離を縮める必要があるのだが、上手く挑発に乗ってくれたおかげで無事に成功した。
ここなら足元や周りを気にせずに好きに戦える。魔法もいくらでもぶっ飛ばし放題だ。
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