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第二十話 魔物避けの結界

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「何するんだよっ」
「そっちが悪いんでしょ」
「オレは王子なんだぞ」
「知ってる」

 小声での応酬に、「ぐぬぬぬ」となってるヴィルを尻目に、「それで魔物の脅威があるとのことですが、現在どのような状況か教えていただけますか?」と村長に話を尋ねる。

「実は、我が村の結界が解けかかっておりまして。以前、魔物避けの結界をかけてから二十年ほど経っておりまして、そのせいで先日より綻びから魔物が入ってきたのです」
「に、二十年ですか!?」
「はい。私が村長を引き継いだ年と同じですので、間違いなく二十年ほどは経っているかと」

 よくそこまでもってたわね……。
 長期間放っておいていたのに今まで無事だったのは凄いけど。

 魔物避けの結界は本来、定期的に強化魔法をかけねばならないのだが、それもなしに二十年もったというのは素直に感心する。先代の聖女には会ったことがないが、八十まで聖女を続けていただけあって相当な力の持ち主だったようだ。

「それで? この村に何が起きたかご説明いただけますでしょうか。私が見る限り、魔物が入ってきたというわりにはまだそこまで被害が出ていないように思えますが」
「実は、魔物が侵入した際に『贄を出せ。贄を出さぬならこの村を滅ぼす』と言われまして。我々は滅ぼされたくない一心で毎月動物などの生け贄を捧げておりました。ですが、先日とうとう『動物は飽きた。今度は村人を生け贄として捧げよ』と言われまして……」
「生け贄、ですか」
「はい。初の人間の生け贄として名乗り出てくれたのが、そこにいるジュンなのですが……」

 ここまで案内してくれた物憂げな男性はジュンというらしい。ぺこりと私に頭を下げるその姿に、やっぱり素敵と目を細める。

 なるほど、それで儚げだったのか。そりゃ、あとちょっとで魔物に食べられる運命ならそうなっても仕方ないわよね。

 世を儚んでいたというのはあながち間違ってなかったということか、と合点がいく。そして、この素敵な男性ジュンをこのまま魔物の餌にするわけにはいかないと、私の中でやる気がぐんぐん湧いてくる。

「このままではジュンは魔物に喰われてしまいます。しかもその次の月には新たな犠牲者も……! ですから、それを止めるためにも魔物避けの結界をより強固なものにしていただきたいのです!! どうか、どうか、お願い致します!!」
「もちろんですわ! こんな儚げで素敵な男性を生け贄にするなどと、断じてあってはならないことです! ですが、魔物避けの結界の強化だけでは心許ありません。脅威そのものを取り払わないと」
「と、おっしゃいますと……?」
「つまりですね」

 私がにっこりと微笑むと、ヴィルと村長とジュンは不思議そうな顔で私のことを見つめるのだった。
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