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第三話 訪問者
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「はぁ。どこかにいい恋落ちてないかなー」
とは言っても、昨日の今日で相手が見つかるわけもなく。
綺麗に片付けた部屋のリビングで紅茶片手に出会いがありそうなクエストを探す。早く結婚したい私にとって、できるだけ恋人がいない期間があるのはなるべく避けたかった。
「聖獣の爪と鱗採取……こっちは上位モンスター二頭捕獲……。うーん、報酬は申し分ないけど、高ランクギルドに所属してる男の人って大体既婚者なのよね。かと言って低ランクの男の人だと今回の二の舞になっちゃうし。どうしよう」
さすがに不倫をするつもりはない。そして、歴代彼氏のようにあまり実力が伴っていないいわゆるヒモも避けたい。
「ふむふむ。こっちは王国騎士団のメンバー募集……なるほど、いっそ騎士とかもアリかもね。王国の騎士さまだったらある程度倫理観がしっかりしてそうだし、まだ若手なら未婚者もいるかも? せっかく首都にいるんだから、選択肢に入れても問題なさそう……」
__ヴォ……ン……!
ブツブツ独り言を呟いてると、不意に探知魔法が発動する。
「赤、か……」
防犯対策で家の周囲数百メートルに魔法壁を張り巡らしているのだが、どうやら誰かが家の敷地内に入ってきたらしい。
探知魔法で侵入者を色分けで区別させてるのだが、今回は顔見知りではない、何かしら武装した人物が来たということを知らせる赤い光を放っているため緊張が走る。
「まさか強盗?」
玄関に向かいながら、すぐに引き抜けるように愛用の片手剣を携える。いきなり攻撃されることはないだろうが念のためだ。
「とにもかくにもまずは相手を確認しないとね」
パチンと指を鳴らすと、魔法壁内の映像が映る。そこには二人組の騎士がいて、特にコソコソするでもなく堂々と我が家の玄関までやってきていた。
噂をすればなんとやらっていうけど、そう言うんじゃないわよね。あの騎士服は確か……国王直属の騎士のものだったはず。ますます見当がつかない。
心当たりと言えば邪竜の件と昨日の彼との別れ話の一件くらいだ。
邪竜の件は恐らく優秀なギルドメンバーのことだから、なんだかんだ文句言いつつも対処してくれているだろう。
となればやらかし案件と言えるのは昨日の件のみ。
けれど、すぐには帰って来れないくらい遠方に転送したから、さすがの昨日今日で帰ってこれないはず。
だったら他になんだろう……と再び思考を巡らせていると、コンコンコンコンとちょっと強めにドアをノックをされた。
「やだなぁ、出たくないなぁ。でも公務執行妨害で捕まるのはそれはそれで嫌だし。ま、何かあったらそのときはそのとき謝ればいいか。いくら国王直属騎士とはいえ私もそれなりには強いし、理不尽なことがあれば叛旗を翻しちゃえばいいわよね」
よし、と気合いを入れて嫌々ながらもゆっくりとドアを開ける。そして私はひょっこりとドアの隙間から顔だけ覗かせた。
とは言っても、昨日の今日で相手が見つかるわけもなく。
綺麗に片付けた部屋のリビングで紅茶片手に出会いがありそうなクエストを探す。早く結婚したい私にとって、できるだけ恋人がいない期間があるのはなるべく避けたかった。
「聖獣の爪と鱗採取……こっちは上位モンスター二頭捕獲……。うーん、報酬は申し分ないけど、高ランクギルドに所属してる男の人って大体既婚者なのよね。かと言って低ランクの男の人だと今回の二の舞になっちゃうし。どうしよう」
さすがに不倫をするつもりはない。そして、歴代彼氏のようにあまり実力が伴っていないいわゆるヒモも避けたい。
「ふむふむ。こっちは王国騎士団のメンバー募集……なるほど、いっそ騎士とかもアリかもね。王国の騎士さまだったらある程度倫理観がしっかりしてそうだし、まだ若手なら未婚者もいるかも? せっかく首都にいるんだから、選択肢に入れても問題なさそう……」
__ヴォ……ン……!
ブツブツ独り言を呟いてると、不意に探知魔法が発動する。
「赤、か……」
防犯対策で家の周囲数百メートルに魔法壁を張り巡らしているのだが、どうやら誰かが家の敷地内に入ってきたらしい。
探知魔法で侵入者を色分けで区別させてるのだが、今回は顔見知りではない、何かしら武装した人物が来たということを知らせる赤い光を放っているため緊張が走る。
「まさか強盗?」
玄関に向かいながら、すぐに引き抜けるように愛用の片手剣を携える。いきなり攻撃されることはないだろうが念のためだ。
「とにもかくにもまずは相手を確認しないとね」
パチンと指を鳴らすと、魔法壁内の映像が映る。そこには二人組の騎士がいて、特にコソコソするでもなく堂々と我が家の玄関までやってきていた。
噂をすればなんとやらっていうけど、そう言うんじゃないわよね。あの騎士服は確か……国王直属の騎士のものだったはず。ますます見当がつかない。
心当たりと言えば邪竜の件と昨日の彼との別れ話の一件くらいだ。
邪竜の件は恐らく優秀なギルドメンバーのことだから、なんだかんだ文句言いつつも対処してくれているだろう。
となればやらかし案件と言えるのは昨日の件のみ。
けれど、すぐには帰って来れないくらい遠方に転送したから、さすがの昨日今日で帰ってこれないはず。
だったら他になんだろう……と再び思考を巡らせていると、コンコンコンコンとちょっと強めにドアをノックをされた。
「やだなぁ、出たくないなぁ。でも公務執行妨害で捕まるのはそれはそれで嫌だし。ま、何かあったらそのときはそのとき謝ればいいか。いくら国王直属騎士とはいえ私もそれなりには強いし、理不尽なことがあれば叛旗を翻しちゃえばいいわよね」
よし、と気合いを入れて嫌々ながらもゆっくりとドアを開ける。そして私はひょっこりとドアの隙間から顔だけ覗かせた。
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