2 / 95
第二話 記念日
しおりを挟む
「ふぅ。どうにか間に合った~! 記念日に緊急討伐クエスト入って一時はどうなるかと思ったけど、さすが私。完璧ね!」
私はシオン。
家事万能、女子力抜群、高難易度魔法も使いこなせて最強の超上級ギルドマスターでもあるスーパー美女(自称)だ。
両親は訳あって駆け落ちして私を産んだのだけど、父は邪竜に食べられてしまい、母は病弱で私がまだ年端もいかないときに病死してしまったため天涯孤独。
だから私は早く家族が欲しくてすぐに結婚したいのだけど、彼氏ができるとつい尽くして尽くして尽くしてしまうせいか、歴代彼氏は借金したりニートになったり殴ってきたり私のものを盗んだりとまぁ見事なダメンズになってしまう。
そう、私はいわゆるダメンズメーカーである。
自覚はあるものの、つい気に入られたくて彼氏にはやはり尽くしたくなってしまうわけで。気づけば彼氏の要求に合わせてスキルを磨いていったら二十四歳現在、未婚のまま最強超級ギルドのマスターにまでなってしまった。
だけど、こんな経歴もとうとう終わりを迎える。なぜなら今日は今彼との
交際記念一周年!!
今までの交際期間半年がせいぜいだった私にとってこんなに長く付き合うことは初めて。ということはつまり、そろそろ結婚の夢も叶うかもしれないのだ!!
これでようやく私は報われる。晴れて家族を手に入れるのだ! そう信じていたのに……
「シオン、別れてくれ!」
「…………は?」
彼が家に来て早々、私に突きつけられたのは別れ話。
えーっと、これはきっと夢よね? さすがに交際記念一周年という記念日に別れ話するバカはいないわよね? と自分の頬をつねるが痛い。
「じょ、冗談よね?」
「子供ができたんだ」
「……えっと、誰の?」
「オレと彼女の」
「オレトカノジョノ?」
これはもしかしてもしかしなくても浮気なのでは?
しかも子供ができたってわかったってことは結構前から二股かけられてたのでは?
え、というか私はなんなん? 私が本命じゃないの? まさかの浮気相手?
突然の彼の告白に混乱していると、なぜか「シオンも優しいけど、彼女はシオンと違って頼りがいがあって優しくて甘えさせてくれて、とびきり美人なんだ。きっと産まれてくる子供も可愛いと思う」と聞いてもいないのにペラペラ語り始める彼。
どうやら彼の話を聞くに、私がクエストなどで不在の間に愛を育んでいたらしい。
つか、何気に私ディスられてるんですけど。
今まで頼られ尽くしまくっての繰り返しだったため、今度こそ失敗しまいと超上級ギルドマスターなことや収入が高いことなど隠してか弱い女を演じて彼を立てるようにしてきたというのに、まさかそれが裏目に出るとは。
「……そう。じゃあ、しっかり出産費用や養育費稼がなくちゃね」
「そうなんだ。だから、その、できればシオンからお祝い金もらいたいなーなんて。あ、もちろんそんな高額でなくてもいいけど、ほら、金はないよりあったほうがいいだろ? シオンってなんだかんだ金持ちだし、ちょっと色つけてくれると嬉しいなーって。ははは」
「お祝い金……かぁ。そうよね、先立つものは必要よね」
私はにっこりと微笑みながら魔力を解放する。
__バリバリバリバリ……!
私が魔力を放出させると室内に雷鳴が轟き始める。それは渦を巻き、竜巻のように彼を包み込んだ。
「し、シオン?」
「オッケー、わかった! 新しい門出を祝って、私が報酬稼げそうな地域に送り届けてあげるね」
__バチバチバチバチ……!
渦に稲妻が混じり出す。
事態をなんとなく察したのか、だんだんと青ざめる彼。
「いやいやいやいや、そういうんじゃなくて……っ!」
「遠慮しないで。とっておきのスポットに連れてってあげる」
バリバリバリバリバリバリバリバリ……!
さらに威力が増す渦。あまりの勢いに、だんだんと彼の姿が見えなくなってきた。
「な、なぁ! オレの勘違いじゃなければ、これって転移魔法!? でもまさか、シオンがそんな魔法使えるわけ……」
「そそ! 超上級レア魔法って言われてる転移魔法だよ! 結婚出産祝いで特別に魔力奮発しちゃうね! ……歯ぁ食いしばって味わえや!」
「待て待て待て待て!」
「図々しい浮気クソバカ野郎を遥か彼方の地へとぶっ飛ばせ! セドオン!!」
魔法を唱えると魔力の渦が光に包まれる。そしてパッと光が拡散すると、彼はもうどこにもいなかった。
彼の力量的にここまで帰ってくるまでまぁまぁ時間はかかるだろうが、雑魚モンスターが多い地方辺りに飛ばしたから死ぬことはないはず。多分。
「はぁ、今度こそ結婚できると思ったのに……」
期待してたぶん、落胆は大きい。もうすぐ二十五。早く結婚して子供を産みたい身としてはやはり焦ってしまう。
「でも、結婚する前に浮気するクズ野郎だってわかったからよしとするか。次いこ、次!」
私はすぐさま気持ちを切り替え、魔法によって荒れてしまった部屋の中を片付け始めた。
私はシオン。
家事万能、女子力抜群、高難易度魔法も使いこなせて最強の超上級ギルドマスターでもあるスーパー美女(自称)だ。
両親は訳あって駆け落ちして私を産んだのだけど、父は邪竜に食べられてしまい、母は病弱で私がまだ年端もいかないときに病死してしまったため天涯孤独。
だから私は早く家族が欲しくてすぐに結婚したいのだけど、彼氏ができるとつい尽くして尽くして尽くしてしまうせいか、歴代彼氏は借金したりニートになったり殴ってきたり私のものを盗んだりとまぁ見事なダメンズになってしまう。
そう、私はいわゆるダメンズメーカーである。
自覚はあるものの、つい気に入られたくて彼氏にはやはり尽くしたくなってしまうわけで。気づけば彼氏の要求に合わせてスキルを磨いていったら二十四歳現在、未婚のまま最強超級ギルドのマスターにまでなってしまった。
だけど、こんな経歴もとうとう終わりを迎える。なぜなら今日は今彼との
交際記念一周年!!
今までの交際期間半年がせいぜいだった私にとってこんなに長く付き合うことは初めて。ということはつまり、そろそろ結婚の夢も叶うかもしれないのだ!!
これでようやく私は報われる。晴れて家族を手に入れるのだ! そう信じていたのに……
「シオン、別れてくれ!」
「…………は?」
彼が家に来て早々、私に突きつけられたのは別れ話。
えーっと、これはきっと夢よね? さすがに交際記念一周年という記念日に別れ話するバカはいないわよね? と自分の頬をつねるが痛い。
「じょ、冗談よね?」
「子供ができたんだ」
「……えっと、誰の?」
「オレと彼女の」
「オレトカノジョノ?」
これはもしかしてもしかしなくても浮気なのでは?
しかも子供ができたってわかったってことは結構前から二股かけられてたのでは?
え、というか私はなんなん? 私が本命じゃないの? まさかの浮気相手?
突然の彼の告白に混乱していると、なぜか「シオンも優しいけど、彼女はシオンと違って頼りがいがあって優しくて甘えさせてくれて、とびきり美人なんだ。きっと産まれてくる子供も可愛いと思う」と聞いてもいないのにペラペラ語り始める彼。
どうやら彼の話を聞くに、私がクエストなどで不在の間に愛を育んでいたらしい。
つか、何気に私ディスられてるんですけど。
今まで頼られ尽くしまくっての繰り返しだったため、今度こそ失敗しまいと超上級ギルドマスターなことや収入が高いことなど隠してか弱い女を演じて彼を立てるようにしてきたというのに、まさかそれが裏目に出るとは。
「……そう。じゃあ、しっかり出産費用や養育費稼がなくちゃね」
「そうなんだ。だから、その、できればシオンからお祝い金もらいたいなーなんて。あ、もちろんそんな高額でなくてもいいけど、ほら、金はないよりあったほうがいいだろ? シオンってなんだかんだ金持ちだし、ちょっと色つけてくれると嬉しいなーって。ははは」
「お祝い金……かぁ。そうよね、先立つものは必要よね」
私はにっこりと微笑みながら魔力を解放する。
__バリバリバリバリ……!
私が魔力を放出させると室内に雷鳴が轟き始める。それは渦を巻き、竜巻のように彼を包み込んだ。
「し、シオン?」
「オッケー、わかった! 新しい門出を祝って、私が報酬稼げそうな地域に送り届けてあげるね」
__バチバチバチバチ……!
渦に稲妻が混じり出す。
事態をなんとなく察したのか、だんだんと青ざめる彼。
「いやいやいやいや、そういうんじゃなくて……っ!」
「遠慮しないで。とっておきのスポットに連れてってあげる」
バリバリバリバリバリバリバリバリ……!
さらに威力が増す渦。あまりの勢いに、だんだんと彼の姿が見えなくなってきた。
「な、なぁ! オレの勘違いじゃなければ、これって転移魔法!? でもまさか、シオンがそんな魔法使えるわけ……」
「そそ! 超上級レア魔法って言われてる転移魔法だよ! 結婚出産祝いで特別に魔力奮発しちゃうね! ……歯ぁ食いしばって味わえや!」
「待て待て待て待て!」
「図々しい浮気クソバカ野郎を遥か彼方の地へとぶっ飛ばせ! セドオン!!」
魔法を唱えると魔力の渦が光に包まれる。そしてパッと光が拡散すると、彼はもうどこにもいなかった。
彼の力量的にここまで帰ってくるまでまぁまぁ時間はかかるだろうが、雑魚モンスターが多い地方辺りに飛ばしたから死ぬことはないはず。多分。
「はぁ、今度こそ結婚できると思ったのに……」
期待してたぶん、落胆は大きい。もうすぐ二十五。早く結婚して子供を産みたい身としてはやはり焦ってしまう。
「でも、結婚する前に浮気するクズ野郎だってわかったからよしとするか。次いこ、次!」
私はすぐさま気持ちを切り替え、魔法によって荒れてしまった部屋の中を片付け始めた。
0
お気に入りに追加
90
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

悪役令息、拾いました~捨てられた公爵令嬢の薬屋経営~
山夜みい
恋愛
「僕が病気で苦しんでいる時に君は呑気に魔法薬の研究か。良いご身分だな、ラピス。ここに居るシルルは僕のために毎日聖水を浴びて神に祈りを捧げてくれたというのに、君にはがっかりだ。もう別れよう」
婚約者のために薬を作っていたラピスはようやく完治した婚約者に毒を盛っていた濡れ衣を着せられ、婚約破棄を告げられる。公爵家の力でどうにか断罪を回避したラピスは男に愛想を尽かし、家を出ることにした。
「もううんざり! 私、自由にさせてもらうわ」
ラピスはかねてからの夢だった薬屋を開くが、毒を盛った噂が広まったラピスの薬など誰も買おうとしない。
そんな時、彼女は店の前で倒れていた男を拾う。
それは『毒花の君』と呼ばれる、凶暴で女好きと噂のジャック・バランだった。
バラン家はラピスの生家であるツァーリ家とは犬猿の仲。
治療だけして出て行ってもらおうと思っていたのだが、ジャックはなぜか店の前に居着いてしまって……。
「お前、私の犬になりなさいよ」
「誰がなるかボケェ……おい、風呂入ったのか。服を脱ぎ散らかすな馬鹿!」
「お腹空いた。ご飯作って」
これは、私生活ダメダメだけど気が強い公爵令嬢と、
凶暴で不良の世話焼きなヤンデレ令息が二人で幸せになる話。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる