ダメンズメーカー聖女 〜結婚したくて尽くしまくってたら最強の聖女になっちゃいました〜

鳥柄ささみ

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第二話 記念日

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「ふぅ。どうにか間に合った~! 記念日に緊急討伐クエスト入って一時はどうなるかと思ったけど、さすが私。完璧ね!」

 私はシオン。
 家事万能、女子力抜群、高難易度魔法も使いこなせて最強の超上級ギルドマスターでもあるスーパー美女(自称)だ。
 両親は訳あって駆け落ちして私を産んだのだけど、父は邪竜に食べられてしまい、母は病弱で私がまだ年端もいかないときに病死してしまったため天涯孤独。
 だから私は早く家族が欲しくてすぐに結婚したいのだけど、彼氏ができるとつい尽くして尽くして尽くしてしまうせいか、歴代彼氏は借金したりニートになったり殴ってきたり私のものを盗んだりとまぁ見事なダメンズになってしまう。

 そう、私はいわゆるダメンズメーカーである。

 自覚はあるものの、つい気に入られたくて彼氏にはやはり尽くしたくなってしまうわけで。気づけば彼氏の要求に合わせてスキルを磨いていったら二十四歳現在、未婚のまま最強超級ギルドのマスターにまでなってしまった。

 だけど、こんな経歴もとうとう終わりを迎える。なぜなら今日は今彼との

 交際記念一周年!!

 今までの交際期間半年がせいぜいだった私にとってこんなに長く付き合うことは初めて。ということはつまり、そろそろ結婚の夢も叶うかもしれないのだ!!
 これでようやく私は報われる。晴れて家族を手に入れるのだ! そう信じていたのに……

「シオン、別れてくれ!」
「…………は?」

 彼が家に来て早々、私に突きつけられたのは別れ話。

 えーっと、これはきっと夢よね? さすがに交際記念一周年という記念日に別れ話するバカはいないわよね? と自分の頬をつねるが痛い。

「じょ、冗談よね?」
「子供ができたんだ」
「……えっと、誰の?」
「オレと彼女の」
「オレトカノジョノ?」

 これはもしかしてもしかしなくても浮気なのでは?
 しかも子供ができたってわかったってことは結構前から二股かけられてたのでは?
 え、というか私はなんなん? 私が本命じゃないの? まさかの浮気相手?

 突然の彼の告白に混乱していると、なぜか「シオンも優しいけど、彼女はシオンと違って頼りがいがあって優しくて甘えさせてくれて、とびきり美人なんだ。きっと産まれてくる子供も可愛いと思う」と聞いてもいないのにペラペラ語り始める彼。
 どうやら彼の話を聞くに、私がクエストなどで不在の間に愛を育んでいたらしい。

 つか、何気に私ディスられてるんですけど。

 今まで頼られ尽くしまくっての繰り返しだったため、今度こそ失敗しまいと超上級ギルドマスターなことや収入が高いことなど隠してか弱い女を演じて彼を立てるようにしてきたというのに、まさかそれが裏目に出るとは。

「……そう。じゃあ、しっかり出産費用や養育費稼がなくちゃね」
「そうなんだ。だから、その、できればシオンからお祝い金もらいたいなーなんて。あ、もちろんそんな高額でなくてもいいけど、ほら、金はないよりあったほうがいいだろ? シオンってなんだかんだ金持ちだし、ちょっと色つけてくれると嬉しいなーって。ははは」
「お祝い金……かぁ。そうよね、先立つものは必要よね」

 私はにっこりと微笑みながら魔力を解放する。

 __バリバリバリバリ……!

 私が魔力を放出させると室内に雷鳴が轟き始める。それは渦を巻き、竜巻のように彼を包み込んだ。

「し、シオン?」
「オッケー、わかった! 新しい門出を祝って、私が報酬稼げそうな地域に送り届けてあげるね」

 __バチバチバチバチ……!

 渦に稲妻が混じり出す。
 事態をなんとなく察したのか、だんだんと青ざめる彼。

「いやいやいやいや、そういうんじゃなくて……っ!」
「遠慮しないで。とっておきのスポットに連れてってあげる」

 バリバリバリバリバリバリバリバリ……!

 さらに威力が増す渦。あまりの勢いに、だんだんと彼の姿が見えなくなってきた。

「な、なぁ! オレの勘違いじゃなければ、これって転移魔法!? でもまさか、シオンがそんな魔法使えるわけ……」
「そそ! 超上級レア魔法って言われてる転移魔法だよ! 結婚出産祝いで特別に魔力奮発しちゃうね! ……歯ぁ食いしばって味わえや!」
「待て待て待て待て!」
「図々しい浮気クソバカ野郎を遥か彼方の地へとぶっ飛ばせ! セドオン!!」

 魔法を唱えると魔力の渦が光に包まれる。そしてパッと光が拡散すると、彼はもうどこにもいなかった。
 彼の力量的にここまで帰ってくるまでまぁまぁ時間はかかるだろうが、雑魚モンスターが多い地方辺りに飛ばしたから死ぬことはないはず。多分。

「はぁ、今度こそ結婚できると思ったのに……」

 期待してたぶん、落胆は大きい。もうすぐ二十五。早く結婚して子供を産みたい身としてはやはり焦ってしまう。

「でも、結婚する前に浮気するクズ野郎だってわかったからよしとするか。次いこ、次!」

 私はすぐさま気持ちを切り替え、魔法によって荒れてしまった部屋の中を片付け始めた。
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