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67 満身創痍
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「お疲れ様、希生くん。今日で3日だよ。よくぞ生き残ったね」
「……はぁ、……どうも。ありがとう、……ございます」
まさに満身創痍だった。
正直、身体はどこもかしこも痛くて力が入らない。
目は霞み、息は絶え絶えで、どうにか膝をつきながら身体を起こしてはいるものの、今すぐにでも倒れてしまいそうだった。
「さすが、想像以上だ。この辺りの魑魅魍魎は全て薙ぎ払ったようだね。ここ数年分詰め込んだが、まさかこれほどとは。とはいえ、だいぶお疲れだよね。……ぬりかべ、彼を部屋まで運んでもらえないだろうか」
「……かべぇ……」
どしんどしんと振動を感じながら、視線だけ上げれば大きな壁が俺をひょいと持ち上げる。
そして、再びずしんずしんと振動を感じながら拝殿から出て、以前いた部屋へと連れて来られた。
「ありがとう、ぬりかべ」
「……かべぇ……」
神原さんが礼を言うと、どこかへ行ってしまうぬりかべ。
このお社には妖怪が共存しているのだろうか、とぼんやり考える。
すると、俺の思考を悟ったように神原さんが口を開いた。
「彼らは大嶽丸に迫害されたり、抹殺されそうになったもの達なんだ。ちなみに、先日キミを助けた猫又もそうだよ。だからこそ、大嶽丸を倒すためにキミの力になってくれるんだ」
「みんなが、俺の……」
「あぁ、キミにとってはちょっと重いものかもしれないけど、彼らはキミを最期の希望だと思っているからね。僕もそうだけど。だから、希生くんが生きて頑張ってくれたことを誇りに思うよ。どうもありがとう」
みんなの希望を背負っている。
以前の俺であれば、逃げ出したくなるくらいの恐怖を持ったことだろう。
どうして俺なんだ、どうして俺じゃなきゃダメなんだ、と。
だが、今は違う。
こうして生きながらえているのはみんなが支えてくれたからこそだとわかった。
俺のために、自らを犠牲にしてまでも、生かしてくれたのだとわかった。
だからこそ、俺は報いなければならない。
みんなのために……何よりも俺の一番大事な存在の深青のためにも。
「こちらこそ、……ありがとうございます。俺が今ここにいられるのは、みんなの……おかげだから」
「そうだね。ふふ、希生くんの成長ぶりを見たらきっと、紡はびっくりするだろうなぁ。最後まで反対していたんだよ、危ないからって。まぁ、それをどうにか説得したんだけど」
「そんな……ねーちゃんはそんな、素振り……」
神原さんに言われてちょっと驚く。
修行前に起こしに来たときはそんな素振りなど一切見せなかったというのに。
「あれで紡はブラコンだからね。いつもキミのこと優先でちょっと僕としては嫉妬することもあったくらいだよ」
「そ、そうだったんですか?」
「はは、冗談だよ」
全然冗談に聞こえないんですけど……。
内心で思いながらも、意識がだんだんと遠ざかっていく。
「おやおや、ごめんね。ついお喋りが過ぎたようだ。今日は疲れただろうからゆっくり寝てくれ。治癒が早くなるように呪いをしておこう。さぁ、ゆっくり寝てごらん」
神原さんの声音がとても心地いい。
スッと息を吸い込むと、そのまま気が遠くなっていく。
「さぁ、しっかりと休養をとるんだ。寝ることも仕事だからね、さぁ、おやすみ……希生くん。そして、お疲れ様」
遠くで神原さんの声を聞きながら、俺の意識は遠く遠くへと誘われていった。
「……はぁ、……どうも。ありがとう、……ございます」
まさに満身創痍だった。
正直、身体はどこもかしこも痛くて力が入らない。
目は霞み、息は絶え絶えで、どうにか膝をつきながら身体を起こしてはいるものの、今すぐにでも倒れてしまいそうだった。
「さすが、想像以上だ。この辺りの魑魅魍魎は全て薙ぎ払ったようだね。ここ数年分詰め込んだが、まさかこれほどとは。とはいえ、だいぶお疲れだよね。……ぬりかべ、彼を部屋まで運んでもらえないだろうか」
「……かべぇ……」
どしんどしんと振動を感じながら、視線だけ上げれば大きな壁が俺をひょいと持ち上げる。
そして、再びずしんずしんと振動を感じながら拝殿から出て、以前いた部屋へと連れて来られた。
「ありがとう、ぬりかべ」
「……かべぇ……」
神原さんが礼を言うと、どこかへ行ってしまうぬりかべ。
このお社には妖怪が共存しているのだろうか、とぼんやり考える。
すると、俺の思考を悟ったように神原さんが口を開いた。
「彼らは大嶽丸に迫害されたり、抹殺されそうになったもの達なんだ。ちなみに、先日キミを助けた猫又もそうだよ。だからこそ、大嶽丸を倒すためにキミの力になってくれるんだ」
「みんなが、俺の……」
「あぁ、キミにとってはちょっと重いものかもしれないけど、彼らはキミを最期の希望だと思っているからね。僕もそうだけど。だから、希生くんが生きて頑張ってくれたことを誇りに思うよ。どうもありがとう」
みんなの希望を背負っている。
以前の俺であれば、逃げ出したくなるくらいの恐怖を持ったことだろう。
どうして俺なんだ、どうして俺じゃなきゃダメなんだ、と。
だが、今は違う。
こうして生きながらえているのはみんなが支えてくれたからこそだとわかった。
俺のために、自らを犠牲にしてまでも、生かしてくれたのだとわかった。
だからこそ、俺は報いなければならない。
みんなのために……何よりも俺の一番大事な存在の深青のためにも。
「こちらこそ、……ありがとうございます。俺が今ここにいられるのは、みんなの……おかげだから」
「そうだね。ふふ、希生くんの成長ぶりを見たらきっと、紡はびっくりするだろうなぁ。最後まで反対していたんだよ、危ないからって。まぁ、それをどうにか説得したんだけど」
「そんな……ねーちゃんはそんな、素振り……」
神原さんに言われてちょっと驚く。
修行前に起こしに来たときはそんな素振りなど一切見せなかったというのに。
「あれで紡はブラコンだからね。いつもキミのこと優先でちょっと僕としては嫉妬することもあったくらいだよ」
「そ、そうだったんですか?」
「はは、冗談だよ」
全然冗談に聞こえないんですけど……。
内心で思いながらも、意識がだんだんと遠ざかっていく。
「おやおや、ごめんね。ついお喋りが過ぎたようだ。今日は疲れただろうからゆっくり寝てくれ。治癒が早くなるように呪いをしておこう。さぁ、ゆっくり寝てごらん」
神原さんの声音がとても心地いい。
スッと息を吸い込むと、そのまま気が遠くなっていく。
「さぁ、しっかりと休養をとるんだ。寝ることも仕事だからね、さぁ、おやすみ……希生くん。そして、お疲れ様」
遠くで神原さんの声を聞きながら、俺の意識は遠く遠くへと誘われていった。
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