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64 修行
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「では、修行の説明をしよう」
「お願いします」
食事を終え、連れて行かれたのは小さなお社だった。
よくあるこじんまりとしたもので、地域に点在していてよく見るくらいの大きさだ。
そのまま拝殿へと向かい、扉を開けると中は真っ暗だった。
そして今まで感じたことのない感覚。
背筋をぞわぞわと何かが這い上がるような気味の悪い悪寒がして、本能がここにいてはダメだと俺に知らせてくる。
「この中で三日三晩過ごしてもらうよ」
「は!? え、正気ですか!??」
「もちろん。あぁ、食事のこととかは大丈夫。中は異空間になってて時間の流れが全然違うのと、そういう生理現象などは引き起こさない仕様になっているから」
「へぇ、そうなんですかぁ……って、いや! そういう心配をしているわけじゃ……っ!」
焦っている俺とは裏腹にニコニコとしている神原さん。
神原さん、天然なのか? いや、わざとなのか!? 色々と恐ろしすぎる。
こんな真っ暗な中に三日三晩って……何がいるかもわからないっていうのに。
てか、確実に何かいる。
というか、悪いモノがいる。
まだそこまで霊力がない俺でさえ、目には見えない憎悪、怨念がこの中に渦巻いているのがわかる。
「希生くんの霊力を短期間で上げるにはこれが最適だからね。中にはキミの察している魑魅魍魎などがたくさんいる。もちろん、キミに害をなすモノもいるだろう。それを乗り越えたとき、本来のソハヤノツルギとしての力を取り戻せるよ」
「本来の力……」
本来の力。
自分では今は全く感じないが、俺の身体の中には大嶽丸を倒せるほどの力が眠っているのだろう。
深青を助けるためには必須の能力。
俺はそれをどうしても得なければならない。
「あぁ、ここでちょっとキミがやる気が出る話をしよう。紡も紡で希生くん同様、鍛錬をしているよ」
「ねーちゃんも?」
「そう。彼女もまた、今回のことで本格的に力をつけるように努力している。トラウマ克服も含めてね」
「トラウマ……」
きっとトラウマというのは死にかけたときのことだろう。
思い出すのもつらいはずだというのに、ましてや克服だなんて。
でも、ねーちゃんもそれくらい頑張っているというのなら俺も頑張らないといけない。
記憶をなくしてのうのうと暮らしていた俺にできる唯一の恩返しだ。
「覚悟は決まったようだね」
「はい!」
「死にはしないとは思うが、気をつけてくれ。ヤツらはキミを殺すつもりでくるだろう。もちろん、乱戦だけではなく精神攻撃も仕掛けてくるはずだ。ただ闇雲に戦っても勝てないし、ただ霊力や体力を消費するだけだろう」
淡々と話す神原さんの話の内容は正直とても恐かった。
何度覚悟しても逃げ出したくなるほどの恐怖。
だが、それでも意志の強さでグッと前を見つめる。
「僕からのアドバイスがあるとすれば、感じること。雑念を持たずに、感じたままに行動すれば大丈夫。散々、紡に基礎は鍛えられているのだろう? であれば、何も恐れることはない。キミは十分な素養も能力も身につけているのだから」
「わかりました。いってきます」
「うん、いってらっしゃい。3日後また会おう」
一歩一歩、前に進む。
そして、背後の扉が閉まるともう何も見えない真っ暗な世界がそこにあった。
音も、光も、匂いも一切ない黒一色の空間。
自分が今どこに立っているかさえわからないほどの暗闇に佇み暗黒に飲まれそうにながら、恐怖で足が震えそうになるのを必死で抑えながら時間が経つのを待つのだった。
「お願いします」
食事を終え、連れて行かれたのは小さなお社だった。
よくあるこじんまりとしたもので、地域に点在していてよく見るくらいの大きさだ。
そのまま拝殿へと向かい、扉を開けると中は真っ暗だった。
そして今まで感じたことのない感覚。
背筋をぞわぞわと何かが這い上がるような気味の悪い悪寒がして、本能がここにいてはダメだと俺に知らせてくる。
「この中で三日三晩過ごしてもらうよ」
「は!? え、正気ですか!??」
「もちろん。あぁ、食事のこととかは大丈夫。中は異空間になってて時間の流れが全然違うのと、そういう生理現象などは引き起こさない仕様になっているから」
「へぇ、そうなんですかぁ……って、いや! そういう心配をしているわけじゃ……っ!」
焦っている俺とは裏腹にニコニコとしている神原さん。
神原さん、天然なのか? いや、わざとなのか!? 色々と恐ろしすぎる。
こんな真っ暗な中に三日三晩って……何がいるかもわからないっていうのに。
てか、確実に何かいる。
というか、悪いモノがいる。
まだそこまで霊力がない俺でさえ、目には見えない憎悪、怨念がこの中に渦巻いているのがわかる。
「希生くんの霊力を短期間で上げるにはこれが最適だからね。中にはキミの察している魑魅魍魎などがたくさんいる。もちろん、キミに害をなすモノもいるだろう。それを乗り越えたとき、本来のソハヤノツルギとしての力を取り戻せるよ」
「本来の力……」
本来の力。
自分では今は全く感じないが、俺の身体の中には大嶽丸を倒せるほどの力が眠っているのだろう。
深青を助けるためには必須の能力。
俺はそれをどうしても得なければならない。
「あぁ、ここでちょっとキミがやる気が出る話をしよう。紡も紡で希生くん同様、鍛錬をしているよ」
「ねーちゃんも?」
「そう。彼女もまた、今回のことで本格的に力をつけるように努力している。トラウマ克服も含めてね」
「トラウマ……」
きっとトラウマというのは死にかけたときのことだろう。
思い出すのもつらいはずだというのに、ましてや克服だなんて。
でも、ねーちゃんもそれくらい頑張っているというのなら俺も頑張らないといけない。
記憶をなくしてのうのうと暮らしていた俺にできる唯一の恩返しだ。
「覚悟は決まったようだね」
「はい!」
「死にはしないとは思うが、気をつけてくれ。ヤツらはキミを殺すつもりでくるだろう。もちろん、乱戦だけではなく精神攻撃も仕掛けてくるはずだ。ただ闇雲に戦っても勝てないし、ただ霊力や体力を消費するだけだろう」
淡々と話す神原さんの話の内容は正直とても恐かった。
何度覚悟しても逃げ出したくなるほどの恐怖。
だが、それでも意志の強さでグッと前を見つめる。
「僕からのアドバイスがあるとすれば、感じること。雑念を持たずに、感じたままに行動すれば大丈夫。散々、紡に基礎は鍛えられているのだろう? であれば、何も恐れることはない。キミは十分な素養も能力も身につけているのだから」
「わかりました。いってきます」
「うん、いってらっしゃい。3日後また会おう」
一歩一歩、前に進む。
そして、背後の扉が閉まるともう何も見えない真っ暗な世界がそこにあった。
音も、光も、匂いも一切ない黒一色の空間。
自分が今どこに立っているかさえわからないほどの暗闇に佇み暗黒に飲まれそうにながら、恐怖で足が震えそうになるのを必死で抑えながら時間が経つのを待つのだった。
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