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24 天音の恋
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「あー、あったあった。これこれ、まずは古典から……って、何見てるの?」
「ん? え、と……あー、トロフィーだよ! ラクロス、結構頑張ってるんだな」
視線の先を聞かれて、思わず誤魔化す。
咄嗟に近くにあったトロフィーのことを話題にしたが、違和感はなかっただろうか。
「うん。まぁねー! 先月の大会でも結構頑張って3位になれたんだよ!」
「へぇ、凄いじゃん。天音はレギュラーなんだろ?」
「うん、おかげさまで。……てか、きーくんだって頑張ってるじゃん! 先日の大会で個人戦、準優勝だったんでしょ?」
先程見てた写真の話題をされると思わず、一瞬頭が真っ白になる。
まさか天音が自分から話題にするとは想定外だったので、途端にしどろもどろしてしまう。
「あ? あー、優勝は真島だったけどな! あいつもうめっちゃ強くてさー。隙もなくて、ついていくのが精一杯で。特に女子からの人気があるから、応援はほとんど真島ばっかりでさ!もう、嫌になっちゃ、……うよ……な……」
って、真島のいいところをアピールするつもりが、後半の部分はライバルが多いみたいな意味合いになってしまったことに気づいて、話しながら尻すぼみになって口籠る。
バカバカバカバカ、俺のバカ!
アシストするつもりが、これではキラーパスではないか!!
「真島くんも強いんだねー! 私、全然知らなかったよー! 確かに人気だもんね、真島くん。部内でもカッコいい、って話題になってたもん。……あ、でも、それなら私も応援行きたかったなぁ」
「あー、ならもし予定被ってなかったら大会観に来いよ。観客席もあるから。慣れないうちはちょっと臭うけどな。……それでもよければ」
「行っていいの!? うん、行く行くー! 大会とかの日程、被ってないといいなぁ」
急にウキウキし始める天音に、隠しきれてないぞ、と内心突っ込む。
こんなにはしゃぐ天音なんて、久々じゃないだろうか。
それほどまでに真島のことが好きなんだな。
俺にバレていることも知らずに、真島のことをあまり知らないように装っている天音がなんだか可愛らしく思えてくる。
はっ! これは、いわゆる思春期の子を持つ親の気持ちなのではないだろうか!?
とうとう俺は、交際歴も恋愛歴もないゆえに枯れてしまって、そういう心境に陥っているのではなかろうか。
結婚、いや恋愛すらしてないのに子持ちになったような気分になるというのは、もはや俺に死角なしだな、なんて思いながら微笑ましく天音のことを見つめる。
「何、きーくん。その顔、気持ち悪いんだけど」
「失礼だな! 生まれつきだよ!」
「いや、そういうことじゃなくて。……まぁ、いいや。とにかく古典! 今日早速宿題も出てたでしょう? そこも一緒にやろうよー!」
「やるのはいいけど、俺は教科書とかノートとか持ってないから明日見せろよ」
「それはもっちろん!」
その後は先程の緊張はどこへやら。
2人であーではないこーではないと話しているのを、ソッとドアの隙間から天音のお母さんに覗かれていたのに気づいて、再びてんやわんやするのであった。
「もう! お母さん!!」
「ふふふ、あまりにいい雰囲気でお邪魔しちゃ悪いかな、って思ってね」
「絶対そんなこと思ってなかったでしょ! お茶冷めてるし!!」
「あらあら、私としたことが。おほほほほ」
わざとらしく笑いながら「温め直してくるから、ごゆっくり~」と再び部屋を出て行く。
ふんふん、と今までとは違って顔を赤らめながら怒っている天音も可愛らしい。
確かに、本当の好きな人がいるにも関わらず、何の気もない幼馴染みとの関係を疑われたらそうなるのも無理はない。
「ごめんね、お母さんが」
「あー、いや! っていうか、相変わらずだよな、天音の母さん」
「娘としては困っちゃうけどねー」
天音はそんなことを言っているが、正直に言って天音と天音のお母さんはとても似ていると思う。
明るくて、距離感が近くて、ポジティブで。
まぁ、俺だけでなく、誰が見てもそっくりだと思うのだが、あえて黙っておいた。
「ん? え、と……あー、トロフィーだよ! ラクロス、結構頑張ってるんだな」
視線の先を聞かれて、思わず誤魔化す。
咄嗟に近くにあったトロフィーのことを話題にしたが、違和感はなかっただろうか。
「うん。まぁねー! 先月の大会でも結構頑張って3位になれたんだよ!」
「へぇ、凄いじゃん。天音はレギュラーなんだろ?」
「うん、おかげさまで。……てか、きーくんだって頑張ってるじゃん! 先日の大会で個人戦、準優勝だったんでしょ?」
先程見てた写真の話題をされると思わず、一瞬頭が真っ白になる。
まさか天音が自分から話題にするとは想定外だったので、途端にしどろもどろしてしまう。
「あ? あー、優勝は真島だったけどな! あいつもうめっちゃ強くてさー。隙もなくて、ついていくのが精一杯で。特に女子からの人気があるから、応援はほとんど真島ばっかりでさ!もう、嫌になっちゃ、……うよ……な……」
って、真島のいいところをアピールするつもりが、後半の部分はライバルが多いみたいな意味合いになってしまったことに気づいて、話しながら尻すぼみになって口籠る。
バカバカバカバカ、俺のバカ!
アシストするつもりが、これではキラーパスではないか!!
「真島くんも強いんだねー! 私、全然知らなかったよー! 確かに人気だもんね、真島くん。部内でもカッコいい、って話題になってたもん。……あ、でも、それなら私も応援行きたかったなぁ」
「あー、ならもし予定被ってなかったら大会観に来いよ。観客席もあるから。慣れないうちはちょっと臭うけどな。……それでもよければ」
「行っていいの!? うん、行く行くー! 大会とかの日程、被ってないといいなぁ」
急にウキウキし始める天音に、隠しきれてないぞ、と内心突っ込む。
こんなにはしゃぐ天音なんて、久々じゃないだろうか。
それほどまでに真島のことが好きなんだな。
俺にバレていることも知らずに、真島のことをあまり知らないように装っている天音がなんだか可愛らしく思えてくる。
はっ! これは、いわゆる思春期の子を持つ親の気持ちなのではないだろうか!?
とうとう俺は、交際歴も恋愛歴もないゆえに枯れてしまって、そういう心境に陥っているのではなかろうか。
結婚、いや恋愛すらしてないのに子持ちになったような気分になるというのは、もはや俺に死角なしだな、なんて思いながら微笑ましく天音のことを見つめる。
「何、きーくん。その顔、気持ち悪いんだけど」
「失礼だな! 生まれつきだよ!」
「いや、そういうことじゃなくて。……まぁ、いいや。とにかく古典! 今日早速宿題も出てたでしょう? そこも一緒にやろうよー!」
「やるのはいいけど、俺は教科書とかノートとか持ってないから明日見せろよ」
「それはもっちろん!」
その後は先程の緊張はどこへやら。
2人であーではないこーではないと話しているのを、ソッとドアの隙間から天音のお母さんに覗かれていたのに気づいて、再びてんやわんやするのであった。
「もう! お母さん!!」
「ふふふ、あまりにいい雰囲気でお邪魔しちゃ悪いかな、って思ってね」
「絶対そんなこと思ってなかったでしょ! お茶冷めてるし!!」
「あらあら、私としたことが。おほほほほ」
わざとらしく笑いながら「温め直してくるから、ごゆっくり~」と再び部屋を出て行く。
ふんふん、と今までとは違って顔を赤らめながら怒っている天音も可愛らしい。
確かに、本当の好きな人がいるにも関わらず、何の気もない幼馴染みとの関係を疑われたらそうなるのも無理はない。
「ごめんね、お母さんが」
「あー、いや! っていうか、相変わらずだよな、天音の母さん」
「娘としては困っちゃうけどねー」
天音はそんなことを言っているが、正直に言って天音と天音のお母さんはとても似ていると思う。
明るくて、距離感が近くて、ポジティブで。
まぁ、俺だけでなく、誰が見てもそっくりだと思うのだが、あえて黙っておいた。
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