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8 呪文
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「では、調伏相手への攻撃が一定以上終えたと想定して、次はその相手を使い魔にします」
「おぉ、とうとう次は仲間にするのか!」
ほわんほわんほわん……と脳内で妄想する。
陰陽師なのだから、めちゃくちゃ強い鬼やら霊やらを従えて、「行け!」「今だ!」などと指示をするのだろうか。
それとも仲間の妖怪をたくさん集めて従えてずらずらと歩くのだろうか。
ってそれ、ただの百鬼夜行じゃねぇか! と妄想した自分に自分でツッコム。
自らのシュールな状況を想像したがために頭からその情景が離れず、そこから思考を離すために頭を振った。
「まずは使い魔にするために、術式を用います」
「ふむふむ。……術式」
「以前教えた印ですよ」
「ほうほう。……印」
言いながら、記憶の彼方にやってしまったであろう知識を必死で引っ張り出す。
こういうときに限って無駄な知識やら記憶やらが出てくるが、それはまた別の場所にしまって、必死に必要な知識を引き出そうと脳内で必死に思い出すように思考をフル回転させる。
「……その反応的に、もしや忘れたのでは?」
「いやぁ……そんなことは……ない、なんて……えーっと、その……すみません。忘れました」
どうにも思い出そうと試みたが、結局思い出せず、素直に謝る。
言い訳しようかとも思ったが、経験則として下手なことを言って不興を買うのは得策ではないとの判断ゆえだ。
「まぁ、ここで追及しても仕方ないので術式についてはあとで詳しく復習するとして、印を素早く結んだあとに相手にぶつけます」
「ぶつける。ってことは結構早く結ばなきゃいけないってこと?」
「えぇ、そうです。そのとき、呪文も唱えます」
「じゅ、呪文……!?」
なんかいよいよ本格的な陰陽師っぽくなってきたぞ、とちょっと期待でドキドキしてくる。
正直、自分に陰陽師の力が備わっているとか霊力があるとか言われても、あまりピンときてない部分はあったが、こうして実際に色々聞くとやれる気がしてきるのが不思議だ。
いや、まぁ、単純に俺が厨二病者みたいなのが好きなのは別にして。
男なら、少なからず自分にしかない力っていうのは好きなものである。
なんかこう、簡単に言えばヒーローになれる! というのは男からしたら憧れなのだ。
……正確には陰陽師であって、ヒーローではないけれど。
「呪文ですが、きちんと覚えてくださいね」
「う、うん。頑張って覚えるよ」
覚える、というくらいなら長文なのだろうか。
印を結びながら言うとなると難しいかもしれない。
ここはじっくりしっかりと聞かなければ。
「我が魂、煌めき走れ! ソウルメーイト!! キミとエターナルライフ!!!」
暫しの沈黙。
ちょっと理解が追いつかずにぼんやりとしていたが、ハッと我に返る。
うん? 今、俺寝てた? なんか戦隊モノの変身ポーズさながら式神さんが叫んでた気がするのだが、白昼夢だったのだろうか。
俺もきっと疲れているんだな。
うんうん。まさか式神さんがあんなことするはずないしな。
「ごめん、式神さん。もう一度やってくれる?」
「仕方ないですね。もう一度だけですよ? ……我が魂、煌めき走れ! ソウルメーイト!! キミとエターナルライフ!!!」
……マジか。
思わず頭を抱える。
先程と同じセリフの言い回しを、俺がちゃんと覚えられるようにか、ゆっくりと大振りでやられて、思わず絶句してしまった。
「ちょっと待って。え、ちょ、ちょ、ちょっと待って! ……え? 嘘だよね?」
「何が?」
至極不思議そうに返されて、こっちがおかしいのかと錯覚しそうになる。
「いや! 何が? じゃないでしょ!! それ本気!? からかってるとかではなく!??」
式神さんを疑うわけではないが、明らかにおかしい。
てか、何だよその呪文!
百歩譲って、「我が魂、煌めき走れ」までなら許そう。
だが、ソウルメイトとエターナルライフって何だよ! 思いっきり横文字じゃん!!
普通陰陽師とかだったらなんか御祈祷みたいな祝詞? みたいなよくわからない言葉をつらつらと言うのではないのか!?
「本気ですが」
「そこは嘘だって言ってよ!!」
マジかよ、嘘だろ。
というか、マジで嘘だと言って欲しかった……。
あまりの衝撃にもはや言葉が出ない。
いや、確かに恥ずかしいとは言ってておかしいな、とは思ってたけど、まさかこんな厨二病真っ盛りのセリフを言わされるだなんて。
まだ夜中でよかったとも言えるが、これ日中だったら通報案件な気がするんだが。
「あぁ、ちなみに術式はいくつかございまして……印の結び方は……」
そんな俺のことなどおかないなしに、簡易的に術式等々のおさらいをする式神さん。
本当こういうところは容赦ないというか、手厳しいというか、俺のペース考えてる? っていうくらいゴーイングマイウェイである。
そして、一通りの説明を終えると「ささ、あまり遅くなっても仕方ないですから、ちゃちゃっと行ってきてください」と家を追い出された。
「おぉ、とうとう次は仲間にするのか!」
ほわんほわんほわん……と脳内で妄想する。
陰陽師なのだから、めちゃくちゃ強い鬼やら霊やらを従えて、「行け!」「今だ!」などと指示をするのだろうか。
それとも仲間の妖怪をたくさん集めて従えてずらずらと歩くのだろうか。
ってそれ、ただの百鬼夜行じゃねぇか! と妄想した自分に自分でツッコム。
自らのシュールな状況を想像したがために頭からその情景が離れず、そこから思考を離すために頭を振った。
「まずは使い魔にするために、術式を用います」
「ふむふむ。……術式」
「以前教えた印ですよ」
「ほうほう。……印」
言いながら、記憶の彼方にやってしまったであろう知識を必死で引っ張り出す。
こういうときに限って無駄な知識やら記憶やらが出てくるが、それはまた別の場所にしまって、必死に必要な知識を引き出そうと脳内で必死に思い出すように思考をフル回転させる。
「……その反応的に、もしや忘れたのでは?」
「いやぁ……そんなことは……ない、なんて……えーっと、その……すみません。忘れました」
どうにも思い出そうと試みたが、結局思い出せず、素直に謝る。
言い訳しようかとも思ったが、経験則として下手なことを言って不興を買うのは得策ではないとの判断ゆえだ。
「まぁ、ここで追及しても仕方ないので術式についてはあとで詳しく復習するとして、印を素早く結んだあとに相手にぶつけます」
「ぶつける。ってことは結構早く結ばなきゃいけないってこと?」
「えぇ、そうです。そのとき、呪文も唱えます」
「じゅ、呪文……!?」
なんかいよいよ本格的な陰陽師っぽくなってきたぞ、とちょっと期待でドキドキしてくる。
正直、自分に陰陽師の力が備わっているとか霊力があるとか言われても、あまりピンときてない部分はあったが、こうして実際に色々聞くとやれる気がしてきるのが不思議だ。
いや、まぁ、単純に俺が厨二病者みたいなのが好きなのは別にして。
男なら、少なからず自分にしかない力っていうのは好きなものである。
なんかこう、簡単に言えばヒーローになれる! というのは男からしたら憧れなのだ。
……正確には陰陽師であって、ヒーローではないけれど。
「呪文ですが、きちんと覚えてくださいね」
「う、うん。頑張って覚えるよ」
覚える、というくらいなら長文なのだろうか。
印を結びながら言うとなると難しいかもしれない。
ここはじっくりしっかりと聞かなければ。
「我が魂、煌めき走れ! ソウルメーイト!! キミとエターナルライフ!!!」
暫しの沈黙。
ちょっと理解が追いつかずにぼんやりとしていたが、ハッと我に返る。
うん? 今、俺寝てた? なんか戦隊モノの変身ポーズさながら式神さんが叫んでた気がするのだが、白昼夢だったのだろうか。
俺もきっと疲れているんだな。
うんうん。まさか式神さんがあんなことするはずないしな。
「ごめん、式神さん。もう一度やってくれる?」
「仕方ないですね。もう一度だけですよ? ……我が魂、煌めき走れ! ソウルメーイト!! キミとエターナルライフ!!!」
……マジか。
思わず頭を抱える。
先程と同じセリフの言い回しを、俺がちゃんと覚えられるようにか、ゆっくりと大振りでやられて、思わず絶句してしまった。
「ちょっと待って。え、ちょ、ちょ、ちょっと待って! ……え? 嘘だよね?」
「何が?」
至極不思議そうに返されて、こっちがおかしいのかと錯覚しそうになる。
「いや! 何が? じゃないでしょ!! それ本気!? からかってるとかではなく!??」
式神さんを疑うわけではないが、明らかにおかしい。
てか、何だよその呪文!
百歩譲って、「我が魂、煌めき走れ」までなら許そう。
だが、ソウルメイトとエターナルライフって何だよ! 思いっきり横文字じゃん!!
普通陰陽師とかだったらなんか御祈祷みたいな祝詞? みたいなよくわからない言葉をつらつらと言うのではないのか!?
「本気ですが」
「そこは嘘だって言ってよ!!」
マジかよ、嘘だろ。
というか、マジで嘘だと言って欲しかった……。
あまりの衝撃にもはや言葉が出ない。
いや、確かに恥ずかしいとは言ってておかしいな、とは思ってたけど、まさかこんな厨二病真っ盛りのセリフを言わされるだなんて。
まだ夜中でよかったとも言えるが、これ日中だったら通報案件な気がするんだが。
「あぁ、ちなみに術式はいくつかございまして……印の結び方は……」
そんな俺のことなどおかないなしに、簡易的に術式等々のおさらいをする式神さん。
本当こういうところは容赦ないというか、手厳しいというか、俺のペース考えてる? っていうくらいゴーイングマイウェイである。
そして、一通りの説明を終えると「ささ、あまり遅くなっても仕方ないですから、ちゃちゃっと行ってきてください」と家を追い出された。
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