【完結】身代わりの男装姫

鳥柄ささみ

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幕間 仲考の策略

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 今までにないほどの荒れようだった。

 花琳がいなくなり、峰葵も部屋を出て行くと、仲考は自我を失くした獣のように荒れに荒れまくった。

 目に入った女官を次々と斬りつけ、蹴りつけ、踏みつける。
 そこら中におびただしい量の血や肉片を飛び散らせ、それでもなお一心不乱に刃を振るいまくった。

 まさに阿鼻叫喚の地獄絵図が目の前で繰り広げられているが、上層部は怯えているだけで誰も声を上げることができない。

 そこにいる全員が、このままでは次に殺されるのは自分だと、存在をなくしたように震えながら口を噤んだ。

 誰もがこの男が王になったらこの国はどうなるのかと憂いたが、それを口にする者はいなかった。

 皆、自分の命が惜しいのだ。

「何が同盟だ。ふざけるなっ!」

 仲考が唸るように声を上げる。

「余計なことをしよって! つくづく気に食わぬ小娘だ! あんなものが我が物顔で好き勝手に振る舞うなどと、断じて許せぬ……っ!!」

 眦をくわっと吊り上げ、憤怒に満ちた様子はまるで夜叉のようだ。
 その表情は、あらゆる負の感情がないまぜになっている。

「そっちがそのつもりならまぁ、よい。……李康りこう!」
「は、はひ!」

 仲考が名を呼ぶと、李康と呼ばれた男が声を裏返しながら返事をする。

例の件、、、はどうなっている?」
「ば、万事抜かりなしです!」
「そうか。……奥の手として取っておくつもりであったが仕方あるまい。この国が手に入らぬというならば、いっそ一度潰してみるまでだ」

 ニヤリ、と大きく口元を歪ませる仲考。
 その笑みには禍々しさが滲み出ていた。

「春匂国、冬宵国双方に伝えておけ。この国の情報を全て渡す、とな。こうなったら秋波国など徹底的に潰してもらおう。ふふふふははははははは」

 真っ赤な返り血を浴びながら高笑いする仲考。
 あまりの異様さに上層部の面々はごくりと生唾を飲み込んだ。

 このままここにいては巻き込まれる。

 そう思うも彼らに選択肢はなく、仲考についていくしかなかった。

「仲考殿。恐れながら、先方にはいつ仕掛けるよう伝達を?」
「準備が整い次第とでも伝えておけ。市中に火を放ち、混乱に乗じて我々は身を隠す。あぁ、そうだ。国を占拠したあかつきには、報酬としてワシが統治する土地を確保することをゆめゆめ忘れるでないと念を押しておけ。秋波国と同等の大きさとは言わぬが、せめてこの国の半分はいただく、とな」
「もちろんでございます。そのように話は詰めておりますゆえ」
「今に見てろよ、小娘。ワシを怒らせたらどうなるか、思い知らせてやる……っ」
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