13 / 53
第十一話 確認
しおりを挟む
「昨日は早く寝たか?」
「しつこい。ちゃんと寝てるから毎日聞かないで」
「そう言うのならまず俺を信用させてみろ」
先日のあの膝枕で寝てから、花琳は峰葵に顔を合わせるたびに寝ているかどうかの確認をされていた。
毎回会うたびに聞かれているため花琳はだいぶうんざりしているが、峰葵に抗議してもこの有り様だ。
「そういえば、徴兵の件はある程度形になったから、そのうちお触れを出すぞ」
「え、随分と早くない?」
「急務となっていたからな」
「ありがとう。それで少しはマシになればいいけど」
「そうだな。一応貧民を救えるし戦力増強にはなるから一石二鳥の考えではあるしな。花琳にしてはよい思いつきだと思うぞ」
「私にしてはってどういう意味よ」
以前の孤児達を見て、彼らに居場所を与えようと知恵を出して思いついたのが徴兵することだった。
彼らを兵として国が集めることで居場所を確保し、さらに給金を与えることで自立を促し、さらに戦力も補強できるという策である。
本当は全部自分で最初から最後までやり遂げたいと思っていたのだが、この件は先日大量に仕事を奪われた内の一つだった。
「仕事もきちんと振っているか?」
「えぇ、おかげさまで。誰かさんが見張りがてら私の私室にしょっちゅう顔出しするし」
「そうでもしないとすぐに仕事を溜め込むからな」
「悪かったわね。でも、仲考に直々に仕事割り振ったおかげで峰葵も仕事しやすいんじゃない?」
「あぁ、それに関しては明龍がありがたがっていたぞ。監視がし易くなったと」
「それは重畳ね。あっちも私の見張りをいくつもつけてるんだし、いい気味だわ」
明龍曰く、花琳の牽制が効いているようで今まで暗躍してたことがなりを潜めているらしい。
以前であればほとんど姿を見せなかったはずの城内にいることが多く、見張りもし易いようだ。
「だが、あまり調子づくんじゃないぞ。いつ寝首をかかれるかわからないからな」
「わかってるわよ。この十年、一度だって気を抜いたことはないわ」
「どうだか」
「何よ、喧嘩なら買うけど」
「そういうところだ。お前は短気なのだから、そういうところは直せ」
「はいはい。わかってますよー」
書簡に判をつきながら適当に相槌を打つ。
峰葵は一度説教を始めると長くなるのだ。
見た目は誰もがうっとりするほどの眉目秀麗だというのに、こういうグチグチした性格はよくないと常々思う花琳だった。
「ちゃんと話を聞け」
「うぶっ、何するのよっ」
峰葵が両頬を押さえて押し潰す。
そして、無理矢理彼のほうに向かされた。
「ぶふっ、変な顔だな」
「……誰のせいだと思ってるの! 不敬罪でしょっぴくわよ!!」
「はは、やれるならやってみろ。それで、話の続きだが」
「ちょっと、このまま話す気!?」
顔を固定したまま話し始める峰葵。
いくら幼馴染相手だからといって一応は国王だというのに、遠慮がなさすぎではないか。
「明日は秋の園遊会があることを忘れるなよ」
「わかってます~。一年のうちの一番の行事なのだから、さすがに覚えてます~」
「ならいいんですが。……着替えのためにも早く起きてもらいますから、今日はなるべく早く寝てください」
「委細承知ゆえ、心配は無用だ」
お互い仕事モードに切り替えると峰葵がやっと手を離し、花琳は解放される。
そのまま「では、私はこれで」と先程までの軽口が嘘かのように凛々しく涼やかな表情に戻るとそのまま踵を返して行ってしまった。
花琳はそんな峰葵の後ろ姿を見つめながら小さく「ふぅ」と息をつく。
峰葵と戯れたことでちょっとした息抜きにはなったが、それを知られたらまた調子に乗りそうで悔しいので、彼には黙っておくことにした。
「相変わらず仲良しですねぇ」
「ひぃ!? びっくりしたぁ、良蘭か。良蘭っていっつも峰葵が来ると気配消して、いなくなると戻ってくるわよね」
「だって、お邪魔したら悪いですし」
「別に邪魔も何もないでしょ。幼馴染なんだし、こんなものでしょ? というか、変なところで気を遣わないでよ」
「私は遠くから仲睦まじく過ごされているお二人を眺めるのが趣味なので、お気になさらず」
「何それ」
何やら含みのある言い方だが、下手につついて余計なことを言われても嫌なので、花琳はあえて放っておくことにする。
「それで先程のお話にあった園遊会の件ですが、こちらが顔ぶれの一覧と料理の内容です」
「ありがとう。以前もらった資料とあまり変わらないかしら」
「そうですね。人数の多少増減はありますが、ほぼほぼ変わらないかと。あといくつか料理の内容が変わってますね。ちまきやまんじゅうの差し替えが少々」
書簡に書かれた文字を追っていくと、確かにいくつか以前と変更になっている箇所を見つける。
欠席者の理由や代理人の肩書きなどを眺めたあと、料理の品書きに目を通すと、自分の好物がいくつか増えていることに花琳は口元を緩ませた。
「本当だ。やった、私このちまき好きなのよね~」
「食べ過ぎて、動けないなんてことにはならないでくださいね」
「わかってるわよ。今までだってそんなことしたことないでしょ」
「冗談ですよ。あぁ、あと明日の衣装合わせもしますから、その押印がひと段落したら声かけしてください」
「はーい」
頭の中で押印を終えたら衣装合わせ、と今日やらねばならないことの項目を増やす。
そのあとには鍛錬と会議と視察と座学……と考えながら移動時間や距離などを考慮しつつ、いくつか同時にやらないと終わらなさそうだと小さく溜め息をついた。
「もう一人自分が欲しい……」
そんな術があるのならば会得したいなどと空想しながら、花琳は時間をなるべく短縮するために押印を急ぐのだった。
「しつこい。ちゃんと寝てるから毎日聞かないで」
「そう言うのならまず俺を信用させてみろ」
先日のあの膝枕で寝てから、花琳は峰葵に顔を合わせるたびに寝ているかどうかの確認をされていた。
毎回会うたびに聞かれているため花琳はだいぶうんざりしているが、峰葵に抗議してもこの有り様だ。
「そういえば、徴兵の件はある程度形になったから、そのうちお触れを出すぞ」
「え、随分と早くない?」
「急務となっていたからな」
「ありがとう。それで少しはマシになればいいけど」
「そうだな。一応貧民を救えるし戦力増強にはなるから一石二鳥の考えではあるしな。花琳にしてはよい思いつきだと思うぞ」
「私にしてはってどういう意味よ」
以前の孤児達を見て、彼らに居場所を与えようと知恵を出して思いついたのが徴兵することだった。
彼らを兵として国が集めることで居場所を確保し、さらに給金を与えることで自立を促し、さらに戦力も補強できるという策である。
本当は全部自分で最初から最後までやり遂げたいと思っていたのだが、この件は先日大量に仕事を奪われた内の一つだった。
「仕事もきちんと振っているか?」
「えぇ、おかげさまで。誰かさんが見張りがてら私の私室にしょっちゅう顔出しするし」
「そうでもしないとすぐに仕事を溜め込むからな」
「悪かったわね。でも、仲考に直々に仕事割り振ったおかげで峰葵も仕事しやすいんじゃない?」
「あぁ、それに関しては明龍がありがたがっていたぞ。監視がし易くなったと」
「それは重畳ね。あっちも私の見張りをいくつもつけてるんだし、いい気味だわ」
明龍曰く、花琳の牽制が効いているようで今まで暗躍してたことがなりを潜めているらしい。
以前であればほとんど姿を見せなかったはずの城内にいることが多く、見張りもし易いようだ。
「だが、あまり調子づくんじゃないぞ。いつ寝首をかかれるかわからないからな」
「わかってるわよ。この十年、一度だって気を抜いたことはないわ」
「どうだか」
「何よ、喧嘩なら買うけど」
「そういうところだ。お前は短気なのだから、そういうところは直せ」
「はいはい。わかってますよー」
書簡に判をつきながら適当に相槌を打つ。
峰葵は一度説教を始めると長くなるのだ。
見た目は誰もがうっとりするほどの眉目秀麗だというのに、こういうグチグチした性格はよくないと常々思う花琳だった。
「ちゃんと話を聞け」
「うぶっ、何するのよっ」
峰葵が両頬を押さえて押し潰す。
そして、無理矢理彼のほうに向かされた。
「ぶふっ、変な顔だな」
「……誰のせいだと思ってるの! 不敬罪でしょっぴくわよ!!」
「はは、やれるならやってみろ。それで、話の続きだが」
「ちょっと、このまま話す気!?」
顔を固定したまま話し始める峰葵。
いくら幼馴染相手だからといって一応は国王だというのに、遠慮がなさすぎではないか。
「明日は秋の園遊会があることを忘れるなよ」
「わかってます~。一年のうちの一番の行事なのだから、さすがに覚えてます~」
「ならいいんですが。……着替えのためにも早く起きてもらいますから、今日はなるべく早く寝てください」
「委細承知ゆえ、心配は無用だ」
お互い仕事モードに切り替えると峰葵がやっと手を離し、花琳は解放される。
そのまま「では、私はこれで」と先程までの軽口が嘘かのように凛々しく涼やかな表情に戻るとそのまま踵を返して行ってしまった。
花琳はそんな峰葵の後ろ姿を見つめながら小さく「ふぅ」と息をつく。
峰葵と戯れたことでちょっとした息抜きにはなったが、それを知られたらまた調子に乗りそうで悔しいので、彼には黙っておくことにした。
「相変わらず仲良しですねぇ」
「ひぃ!? びっくりしたぁ、良蘭か。良蘭っていっつも峰葵が来ると気配消して、いなくなると戻ってくるわよね」
「だって、お邪魔したら悪いですし」
「別に邪魔も何もないでしょ。幼馴染なんだし、こんなものでしょ? というか、変なところで気を遣わないでよ」
「私は遠くから仲睦まじく過ごされているお二人を眺めるのが趣味なので、お気になさらず」
「何それ」
何やら含みのある言い方だが、下手につついて余計なことを言われても嫌なので、花琳はあえて放っておくことにする。
「それで先程のお話にあった園遊会の件ですが、こちらが顔ぶれの一覧と料理の内容です」
「ありがとう。以前もらった資料とあまり変わらないかしら」
「そうですね。人数の多少増減はありますが、ほぼほぼ変わらないかと。あといくつか料理の内容が変わってますね。ちまきやまんじゅうの差し替えが少々」
書簡に書かれた文字を追っていくと、確かにいくつか以前と変更になっている箇所を見つける。
欠席者の理由や代理人の肩書きなどを眺めたあと、料理の品書きに目を通すと、自分の好物がいくつか増えていることに花琳は口元を緩ませた。
「本当だ。やった、私このちまき好きなのよね~」
「食べ過ぎて、動けないなんてことにはならないでくださいね」
「わかってるわよ。今までだってそんなことしたことないでしょ」
「冗談ですよ。あぁ、あと明日の衣装合わせもしますから、その押印がひと段落したら声かけしてください」
「はーい」
頭の中で押印を終えたら衣装合わせ、と今日やらねばならないことの項目を増やす。
そのあとには鍛錬と会議と視察と座学……と考えながら移動時間や距離などを考慮しつつ、いくつか同時にやらないと終わらなさそうだと小さく溜め息をついた。
「もう一人自分が欲しい……」
そんな術があるのならば会得したいなどと空想しながら、花琳は時間をなるべく短縮するために押印を急ぐのだった。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
慰み者の姫は新皇帝に溺愛される
苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。
皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。
ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。
早速、二人の初夜が始まった。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
溺愛の始まりは魔眼でした。騎士団事務員の貧乏令嬢、片想いの騎士団長と婚約?!
参
恋愛
男爵令嬢ミナは実家が貧乏で騎士団の事務員と騎士団寮の炊事洗濯を掛け持ちして働いていた。ミナは騎士団長オレンに片想いしている。バレないようにしつつ長年真面目に働きオレンの信頼も得、休憩のお茶まで一緒にするようになった。
ある日、謎の香料を口にしてミナは魔法が宿る眼、魔眼に目覚める。魔眼のスキルは、筋肉のステータスが見え、良い筋肉が目の前にあると相手の服が破けてしまうものだった。ミナは無類の筋肉好きで、筋肉が近くで見られる騎士団は彼女にとっては天職だ。魔眼のせいでクビにされるわけにはいかない。なのにオレンの服をびりびりに破いてしまい魔眼のスキルを話さなければいけない状況になった。
全てを話すと、オレンはミナと協力して魔眼を治そうと提案する。対処法で筋肉を見たり触ったりすることから始まった。ミナが長い間封印していた絵描きの趣味も魔眼対策で復活し、よりオレンとの時間が増えていく。片想いがバレないようにするも何故か魔眼がバレてからオレンが好意的で距離も近くなり甘やかされてばかりでミナは戸惑う。別の日には我慢しすぎて自分の服を魔眼で破り真っ裸になった所をオレンに見られ彼は責任を取るとまで言いだして?!
※結構ふざけたラブコメです。
恋愛が苦手な女性シリーズ、前作と同じ世界線で描かれた2作品目です(続きものではなく単品で読めます)。今回は無自覚系恋愛苦手女性。
ヒロインによる一人称視点。全56話、一話あたり概ね1000~2000字程度で公開。
前々作「訳あり女装夫は契約結婚した副業男装妻の推し」前作「身体強化魔法で拳交える外交令嬢の拗らせ恋愛~隣国の悪役令嬢を妻にと連れてきた王子に本来の婚約者がいないとでも?~」と同じ時代・世界です。
※小説家になろう、ノベルアップ+にも投稿しています。※R15は保険です。
【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件
百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。
そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。
いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。)
それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる!
いいんだけど触りすぎ。
お母様も呆れからの憎しみも・・・
溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。
デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。
アリサはの気持ちは・・・。
スパダリ猟犬騎士は貧乏令嬢にデレ甘です!【R18/完全版】
鶴田きち
恋愛
★初恋のスパダリ年上騎士様に貧乏令嬢が溺愛される、ロマンチック・歳の差ラブストーリー♡
★貧乏令嬢のシャーロットは、幼い頃からオリヴァーという騎士に恋をしている。猟犬騎士と呼ばれる彼は公爵で、イケメンで、さらに次期騎士団長として名高い。
ある日シャーロットは、ひょんなことから彼に逆プロポーズしてしまう。オリヴァーはそれを受け入れ、二人は電撃婚約することになる。婚約者となった彼は、シャーロットに甘々で――?!
★R18シーンは第二章の後半からです。その描写がある回はアスタリスク(*)がつきます
★ムーンライトノベルズ様では第二章まで公開中。(旧タイトル『初恋の猟犬騎士様にずっと片想いしていた貧乏令嬢が、逆プロポーズして電撃婚約し、溺愛される話。』)
★エブリスタ様では【エブリスタ版】を公開しています。
★「面白そう」と思われた女神様は、毎日更新していきますので、ぜひ毎日読んで下さい!
その際は、画面下の【お気に入り☆】ボタンをポチッとしておくと便利です。
いつも読んで下さる貴女が大好きです♡応援ありがとうございます!
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる