58 / 62
アリー
しおりを挟む「アモンが居るってことはもしかして」
「イジン、お前を探したんだぞ‥‥」
「おーい何してんのー」
遠くでマサが叫んでいるのが聞こえた。
「マサか、アリーも居るんだよな?元気だよな?」
「元気だぞ、でも‥‥」
「でもなんだ?」
僕は気持ちがはやった。万が一アリーが怪我でもしていたら耐えられない。
「逢わせるから一緒に来てくれ‥‥あれは誰だ?」
アモンが後ろを指さしていう。振り向くとミミが歩いて来ていた。
「ミミ‥‥」
「心配だから来ちゃった」
ミミが遠慮がちにやって来る。
「おいでミミ‥‥紹介するよ俺の連れのミミだ、魔族の女の子で」
「なに!魔族だと」
「待て、魔族でも敵とかそういう事ではない」
「そうか、何か事情がありそうだな‥‥そのお前のしっぽにも、いつ生えたんだ?」
「はは、これは店で売っていたのを着けただけだ」
「売り物か、まぁ良いその子も一緒においで」
髭もじゃのアモンが言うとミミは頷いた。
「やぁマサ、元気だった?」
「イジン!もう、みんなで探したんだから!」
「ごめん、実は僕も探しに来たんだ」
「‥‥この子は?」
「ミミだ、宜しくな」
「フーン、随分可愛らしいのね」
マサは僕とミミを交互に見て何か疑わしいという顔をする。
「行くぞ」
アモンがそんなやり取りを打ち切って全員を連れ、廃城に向かった。
廃城の奥にはわずかに残った壁の区画を利用してテントが張られ、居住空間が造られている。
テントの幕を開いてアモンが入る。
「アリー、戻ったよ」
「おかえりー、今日のモンスターはどうだったの?後ろの方はだれ?」
そこには別れた時と変わらないアリーが立って居た。少しやつれて生活が苦しいのが伺われる。
「アリー‥‥ごめん、僕」
「え、どなた?」
「‥‥僕だテイジンだよ」
「テイジンさん?初めましてアリアンヌです」
アリーはお辞儀をして挨拶をした。
「はは、そういう冗談はやめてよ」
「そんな、あたし何か失礼な事言ったかしら‥‥」
「は‥‥」
多分僕は顔が青ざめていたと思う。
「お兄ちゃん‥‥」
「すまないテイジン、これには訳があって」
僕が茫然自失しているとミミが心配し、アモンが割って入る。
「訳って‥‥まさか本当に僕の事忘れてるの?」
訊くまでもなかった。アリーが赤の他人を見る顔をして、首を傾げて肩を持ち上げているのだ。
「そんな‥‥マジかよ」
「お前を見たらアリーの記憶が戻ると思ったのだが」
「何があったんだ?教えてくれ」
何かを知っている風なアモンに問いただす。すると、全員にテントの外へ手招きして、外で話すという。
「半年くらい前にここに魔人がやってきておかしな呪いを掛けて行った、特に身体的には異常は無かったのだが‥‥」
アモンが言うには、それは異常な攻撃だったらしい。魔人は圧倒的な魔力で襲い掛かり、全員が身動きを封じられてもうダメだと覚悟したあと、アリーの所に行き何か呪いを掛けて消えたという。
「その後、アリーがお前の事を一切口にしなくなったからおかしいと思って訊いてみたら、お前の記憶だけがすっぽりなくなっていた」
「‥‥何目的でそんな酷い事を‥‥」
「判らん、だがこんな書置きを見つけた」
それはテントに魔法で文字が刻まれているようだった。
”取引がある、リアには話さずに邪神神殿に来い”
それは僕にだけわかるように残された言葉だった。察するにリアと敵対する勢力のいずれかがこれを仕組んだのだ。アリーの記憶を戻す事と何かを取引きしたいという事に違いない。
それが何かはどうでも良かった。アリーさえ元に戻るのなら‥‥。
「そういう事か」
「これが何か判るか?」
「ああ、これは僕の戦いみたいだ」
「どうするというのだ?」
「邪神神殿に乗り込み、そこで決着をつける」
その言葉に皆が息をのんだ。
0
お気に入りに追加
2,372
あなたにおすすめの小説
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました
御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。
でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ!
これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
モブで可哀相? いえ、幸せです!
みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。
“あんたはモブで可哀相”。
お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
呪われた子と、家族に捨てられたけど、実は神様に祝福されてます。
光子
ファンタジー
前世、神様の手違いにより、事故で間違って死んでしまった私は、転生した次の世界で、イージーモードで過ごせるように、特別な力を神様に授けられ、生まれ変わった。
ーーー筈が、この世界で、呪われていると差別されている紅い瞳を宿して産まれてきてしまい、まさかの、呪われた子と、家族に虐められるまさかのハードモード人生に…!
8歳で遂に森に捨てられた私ーーキリアは、そこで、同じく、呪われた紅い瞳の魔法使いと出会う。
同じ境遇の紅い瞳の魔法使い達に出会い、優しく暖かな生活を送れるようになったキリアは、紅い瞳の偏見を少しでも良くしたいと思うようになる。
実は神様の祝福である紅の瞳を持って産まれ、更には、神様から特別な力をさずけられたキリアの物語。
恋愛カテゴリーからファンタジーに変更しました。混乱させてしまい、すみません。
自由にゆるーく書いていますので、暖かい目で読んで下さると嬉しいです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる