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奴隷商
しおりを挟む魔王都
前回はゆっくり見て回る機会がなかったけど、こうやって繁華街を歩いてみると男にとっては魅力的な都会なのだと判る。
夕方にもなると凄く綺麗な女性たちが路上で客引きをして、猥雑な店の看板が並んび音楽が流れている。僕も男だし暇な時に手を引かれたら付いていってしまうかもしれない。だけど今回は遊んでいる暇はない。
客引きの女性たちの淫靡な魔力が掛かった腕から逃れ、夜の街を抜けていく。
だが、その看板の一つが目に留まる。奴隷商の店で、看板には「虐待用、食用、繁殖用」等と書かれていて気分が悪いがそこに「本日人族あり」とも有ったのだ。
「奴隷屋かぁ、アモンが奴隷‥‥」
一瞬だけ3人の奴隷姿が頭に浮かんだが、現実にはなさそうだったので通り過ぎようとしたが、やはり気になってしまい店に入った。
「これはいらっしゃませ」
入店早々ど派手なジャケットを着たオッサンが僕のそばにやってきて案内を始める。
「この店に人族が居ると聞いてきたが」
「ええ、他にも色々と取り揃えてございますどうぞこちらへ」
オッサンについていくと、建物の奥の方に案内されて分厚いカーテンの奥の扉を開き淫靡な雰囲気の大きな部屋に入った。空間魔法なのだろうか、部屋のあちこちが桃色や紫に光り薄暗く装飾している。
「ご自由にお座りください」
オッサンが指さす沢山のソファーの空いているところに座れという事のようだ。客は全体的に3分入りといった感じで、姿からして魔族が多いようだ。
奥のステージのようなところでは音楽に合わせて首輪をつけられた奴隷達がセクシーな女性に寄り添われ、一人づつステージの中央に歩いてきて去っていく。中には裸に近い奴隷もいた。種族的には初めて見る亜人種が多く、次々と現れては去っていく中、正確にカウントしてはいないが8割ほどは亜人のようだ。
爬虫類系、げっ歯類系、等が多い。亜人は獣人とも違っていて、彼ら奴隷達は顔が完全に獣だ。知能が高いかどうかは知らないが服を着ているところを見ると一応は文明もあるのだろう。
「では皆さん本日のラスト1、とっておきの人族でございます」
ステージの隅で大きな声で案内が入り、人族と思われる美少女の奴隷が登場して会場がどよめく。
「おおお、決めたぞ」
客の魔族の一人が興奮して叫ぶ。僕も釣られて見入ったが、知り合いには居ない顔で少し安心した。
「え~それでは最後に全員上がりまして落札会とします、まず開始価格です~」
司会がアナウンスすると、今まで登場した奴隷達が全員、首から大きな値札を下げて登場した。
「1番4000金、2番‥‥12番20万金」
1人ずつ落札開始価格を紹介していく。最後に紹介された人族の美少女は20万金らしい。
次々と落札されていく様子を茫然と眺めて居ると最後の人族の番が回ってきて魔族の貴族風のオッサンが叫ぶ。
「100万金!」
会場からどよめきともため息ともつかない声がして、それで彼女は落札された。
「ありがとうございます、本日はこれで終了となります落札者の方はこちらへ」
僕は帰る客の相手をしている案内のオッサンにもう少し話を聞こうと思い最後まで残っていた。
「お帰りはこちらへどうぞ」
「その前に少し訊きたいのだけど」
「そりゃもう、なんでもどうぞ」
「奴隷屋は魔王都に沢山あるのですか?」
「いいえ、うちだけですよ!潜りでやっているところは知りませんが、認可されているのはうちだけです
!」
オッサンは胸を張って答える。
「そうなんだ、あと、人族というのは定期的に入荷するものなのか?」
「定期的ではありませんね、非常に希少な商品ですので」
「どうやって入荷するんだ?捕まえてくるのか?」
「ほとんどは繁殖ですが、稀にとらえられて来たものもいるようですね」
「へぇ‥‥」
すると、魔人事件により帝都が襲撃された件も無関係とも言い切れないのだろうか?などと考えて居たらステージの方で揉める声が聞こえた。
「おい、これは違うじゃないか!」
さっきの貴族のオッサンが美少女の頭をつかんで怒鳴っていた。
「こいつは魔族の子だろうが!見ろ、ここに角があるだろう!」
「はい‥‥はい、何か手違いがございまして、大変申し訳ございません」
髪の毛に隠れて見えにくかったようだが、どうやらその子は人族ではなく魔族の子だったようだ。
それで揉めているのを見て一瞬安心した。
「では、返金のうえ後で処分いたします」
「ダメだ、我は恥をかいた!今すぐに我の目の前で殺せ!」
貴族のオッサンの凶悪な要求に僕は寒気を覚えた。同族の少女を殺せだとか。
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