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自覚
しおりを挟む潜伏しながら5日進んでいくと、目の前に大量のガルーダが屯している場所に行き当たった。
「どうしよう、どうしてもここを抜けないと先に進めない」
「その地図では、迂回できないの?」
「できなくはないけど、一旦元の避難洞窟に戻るしかないね」
僕たちは既に5日移動していたのでかなりの距離をもどる事になる。
「うん、少しここで様子を見て奴らが居なくなるのを待とうか」
「そうね」
その日の夕方に、目の前に野生のクマが現れ僕は身構えたがクマは僕たちに気が付きもせずに歩き去っていった。その直後、ガルーダが騒ぎ出す。
グゴォオオオオオ!!
「まずい、あの熊に気が付いたみたいだ」
ガルーダの大群が旋回しながら大騒ぎしていた。あの様子だと僕たちの簡易テントが見つかるのは時間の問題に思え、撤収し一旦下がる事にした。
ズーン‥‥
だが、ガルーダがふいに目の前に着地し立ちふさがってしまい僕は慌てて身構える。
「待って‥‥」
アリーが小声で耳元でささやく。それで腰の魔法剣に掛けた手を止める。
「気が付いては居ないみたい」
それは異様な光景だった、目の前にガルーダが居るのに僕らに気が付いていないであちこちをキョロキョロとしている。僕が試しに小石を拾って遠くに投げてみるとガルーダはそれに反応して飛び立つ。
ゴァオオ!バサッ!バサッ!
「よし、いまだ行くぞ」
アリーに合図して小走りし、飛んでいるガルーダの群れの中を突っ切っていく。だが、ガルーダ達は僕らに見向きもせず構っていたクマを放り出し大勢で小石を追いかけて飛び立っていった。
「なんだアレ?」
「イジンさんって”身代わり”を使えるの?」
「は!」
アリーの指摘で気が付く。どう見てもさっきの小石投げは潜伏系の最上位スキルの”身代わり”に該当するスキルだった。
「はは、まさか偶‥‥」
僕は偶然と言いかけてひっこめる。偶然であれだけのガルーダが小石に飛びつくわけがないのだ。それを考えながら暫く走って行くとアリーが苦しがる。
「はぁはぁ‥‥ちょっとまって、このあたりで少し‥‥」
振り向くと彼女が肩で息をしている。ガルーダの群れも大分離れていてもう安全域に入った感じもしたのでその場で簡易テントを張って休憩にした。
「やっぱり、さっきのは身代わりスキルだと思う‥‥」
「そうよね」
僕が焚火に小枝を投げ入れながら言うと彼女も同意してくれた。
「不思議な‥‥」
不思議事もあるものだと言いかけて止める。不思議ではあったが僕が短期間に獲得したスキルだとしか説明が付かない。もし本当に最上位潜伏スキルを獲得したというのなら他のスキルも試してみればいいだけだ。
「隠密」
「え!なに!」
僕がその一つを使うと彼女が狼狽えて周囲を見渡す。僕が見えていないようだ。
「現」
「わぁ!ちょっとびっくりさせないでよ」
「あははごめん、でも判ったわ僕ヤバいかも」
「え?」
「レベル70かもしれない」
「でしょう!?」
彼女は当たり前だと言う様に同意した。
「なぜなのか‥‥」
その晩、僕は寝ずにこれまであった出来事を頭の中で整理していた。
まず、初めに起きた異変は‥‥確かあの洞窟で、その後に気分が変になって大陸を快走した。あの時点で既にレベル70近かったのだと考えたらすべての辻褄があっていく。その後次々とこれまであった奇跡的な事で不思議に思えていた事が腑に落ちていくのだ。
そして、一つの決意をする。どうしても今、アリーに言わなけれならないと感じたのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「おはようアリー、僕はどうやら生まれ変わったみたいだ」
「おはようイジンさん、でも突然なに?」
「アリー、大好きだ」
「へ?」
「僕だよ、テイジンだ!」
「‥‥ばかね、知ってたわよ」
彼女は寝起きの顔をこすり照れながら答えた。
「ええ!?マジ?」
「当り前じゃない、あたしがテイちゃんを間違うわけないでしょ」
「それじゃ、あの時してくれたキスは」
「それは気のせいよ、忘れて」
「はい?」
「調子に乗らないの」
「はい」
僕は朝からテンションの乱高下に動揺していた。
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