上 下
24 / 62

再起動

しおりを挟む

 バジリスクの死骸の上で茫然としていると、少し遠くにアリーが一人立っているのが見えた。

「なにをしているんだ?おーい!あっはっは」

 気分がおかしくなっている僕はそのままアリーに手を振る。するとアリーがこちらに早歩きやってきた。

 ドシュ! 

 が、そのとき死んだはずのギガバジリスクの口から鋭利な舌が伸びてアリーに突き刺さるのが見えた。

「は?!待て待て‥‥武技、皆塵!」

 ドォオオン!

 それでバジリスクの頭ごと消し飛んで今度こそ死んだ。慌ててアリーに近寄ると、白目を剥いて口から血を吐いて瀕死状態だ。僕は急いで超高級万能薬をとりだして毒とマヒ、石化と混乱を食らっているアリーに飲ませる。猛烈に咳き込み、口から薬がこぼれていくのを見るのが辛かった。

「大丈夫だ!大丈夫だから!」
「ごふっ!はぁ‥‥ふぅ‥‥」
「大丈夫だよね‥‥おい!返事をしてくれ!」

 僕はおもわず涙目でアリーの顔を抱きしめていた。

「アリー!死なないでよ!」 
「く、ぐるじい」
「苦しいよね‥‥え?」
「痛いよ」
「わぁごめん‥‥」

 あまりにもギュウギュウと抱きしめていたので痛いという。

「でも、良かった‥‥」
「‥‥一人で行っちゃうなんて良くないよ」
「けど、死ぬなら僕一人で良いと思うし」
「なんでそんなことを言うの?」
「‥‥」

 そう、僕はレベル1の役立たずだからだ。

「皆貴方を頼りにしているのではなくて?」
「そんなことはないよ、僕なんていなくても変わらないと思うし」
「嘘!」
「‥‥嘘なんかじゃないよ、所詮レベル1なんだ‥‥」
「嘘よ」
「今はもうレベル1ですらない」
「そうじゃないでしょ?」
「え?どういう事?」

 アリーと目があうといきなり抱き着かれキスをされてしまう。

「ん‥‥」

 少し長いキスの後にアリーが言う。

「ごめんなさい」
「ええ‥‥」
「でもこうしないと判って貰えないと思ったの」
「そんな‥‥ふぅ‥‥でもありがとう」

 と言って今度は僕からキスをしようとすると。手で遮られた。

「調子に乗らないで」
「は、はい‥‥ごめんなさい」

「おーい!いつまでやってんだぁ!」
「見せつけてくれるぜ‥‥」
「いぇーい、やっちゃえやっちゃえ!」

 後からやってきたアモンたちが少し離れたところで叫んでいた。マサの「やっちゃえ」と言う意味が良くわからなかったが、それで終わった。



「でもよぉ、あんたひとりであの化け物を倒すなんてちょっとおかしくねーかー?」

 帰りの馬車の中でマッシュが言う。

「あいつはSランク限定のクエスト対象だろう?」
「ぐ、偶然だよ偶然」
「ほらまた!そんな事を言う」

 僕が偶然だと主張するとアリーが無理やり訂正させようとする。でも偶然に決まっていたのだ。

「偶然剣技が決まって、偶然予定通りうまく運んで、偶然アリーがやってきてそれで」
「私は偶然じゃないわよ」
「あ、そうかごめん」

 でも、その一つでもうまく行かなかったら勝てなかったのも事実だった。

「最後のは僕の詰めが甘かったせいでアリーが‥‥」
「それはもう良いのよ」

 アリーが優しく言う。

「それで、お二人さんはもういい関係なのかい?」

 アモンが揶揄うように言う。

「良い関係‥‥?」
「どう思うの?」

 僕が言うとアリーに訊かれる。これではあべこべではないか。

 アリーが僕にキスをしたのは好きとかそういう事ではなくて、僕に思い直してほしいという事を体当たりで示しただけなのだ。僕はそう納得した。アリーは優しい子なのだと再認識したのだった。

「違うだろうね」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

悪役令嬢の兄のやり直し〜侯爵家のゴーストと呼ばれた兄ですが、せめて妹だけは幸せにしたいと思います〜

ゆう
ファンタジー
僕ジョシュアは、侯爵家の長男でありながらかなり存在感の薄い人間だった。 生まれつき属性を持たず生まれてきた僕は、持っている魔力量の多さに対し、全く魔法を使うことができなかった。 両親から疎まれ続け自分の部屋へ引きこもっていた僕は、16歳の時、2歳年下の妹アリスティアが犯した罪の連座で一族郎党処刑されることとなる。 死を直前にして妹や義弟と話し、自分は何もしてこなかったと後悔をした。 その後、なぜか時間が戻った世界で目を覚ました僕は、同じ運命を回避するためーーーせめて妹を死刑から救うため奔走することにした。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

呪われた子と、家族に捨てられたけど、実は神様に祝福されてます。

光子
ファンタジー
前世、神様の手違いにより、事故で間違って死んでしまった私は、転生した次の世界で、イージーモードで過ごせるように、特別な力を神様に授けられ、生まれ変わった。 ーーー筈が、この世界で、呪われていると差別されている紅い瞳を宿して産まれてきてしまい、まさかの、呪われた子と、家族に虐められるまさかのハードモード人生に…! 8歳で遂に森に捨てられた私ーーキリアは、そこで、同じく、呪われた紅い瞳の魔法使いと出会う。 同じ境遇の紅い瞳の魔法使い達に出会い、優しく暖かな生活を送れるようになったキリアは、紅い瞳の偏見を少しでも良くしたいと思うようになる。 実は神様の祝福である紅の瞳を持って産まれ、更には、神様から特別な力をさずけられたキリアの物語。 恋愛カテゴリーからファンタジーに変更しました。混乱させてしまい、すみません。 自由にゆるーく書いていますので、暖かい目で読んで下さると嬉しいです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

いつもの電車を降りたら異世界でした 身ぐるみはがされたので【異世界商店】で何とか生きていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
電車をおりたら普通はホームでしょ、だけど僕はいつもの電車を降りたら異世界に来ていました 第一村人は僕に不親切で持っているものを全部奪われちゃった 服も全部奪われて路地で暮らすしかなくなってしまったけど、親切な人もいて何とか生きていけるようです レベルのある世界で優遇されたスキルがあることに気づいた僕は何とか生きていきます

処理中です...